鑑定を終えて 2
「この唐揚げ、めちゃジューシー、めちゃ美味!」
俺たちは、ギルドの中にある食事処で今日の日替わりランチを食べていた。
「キュキュウ♡」
スカイもリュックから出し、椅子に座って食べている。何とスカイは、すぐにスプーンもフォークも握られるようになった。家の子賢い!
さすがにギルドの中なら誘拐される心配もないだろう。
「良かったです。このお店はギルド直営でして、鮮度が良い食材を使ってるんです」
確かに、持ち込まれた素材を一番早く使えるもんな。俺も小さい頃は魔物の肉と聞き、食べるのをためらっていた(美味しそうな匂いに負けて、すぐに口の中に入った)が、今では全く気にならずバクバク食べている。正直前世の肉よりも美味しいかもしれない。
「そう言えば、父様とアランさんてどういう関係なんですか?」
2人なんだか仲良さそうだった。家ではあまり聞いたことがなかったけど。
「ギルドマスターからは昔一緒のパーティーを組んでいたと聞いたことがあります。たまにスチュアート様がいらっしゃると、お互い気兼ねがない感じでお話をされているのをお見かけします」
そうか、昔の冒険者仲間なんだな。パーティー組んで冒険か。また、父にも聞いてみよう。
オリビアさんが小声で話かけてきた。
「ここだけの話ですが、ギルドではそのパーティーは伝説のパーティーとして有名です。剣のアラン、槍のスチュアート、魔法使いのソフィア、ヒーラーのメルリシア。邪竜討伐の勇者として、おそらく知らない人はいないでしょう」
邪竜討伐!?
母もメンバーの一員か!!
血染めのスチュアートもそこらへんからきてるのかな。
「私もその中の魔法使いソフィア様に憧れて、冒険者ギルドに入ったんです。実際は魔法の才能に恵まれず、鑑定士として受付嬢になりましたが」
そうだったんだ。アランさんはギルドマスター、スチュアートとメルリシア俺の両親は辺境伯とその妻。
「ソフィアさんは今はどうされているんですか?」
そう、そう、あとはソフィアさんのその後だな。多分俺も会ったことないし。
「ギルドマスターとご結婚されて……とても幸せそうでした。お子様を出産される際に……そのまま儚くお亡くなりになってしまいましたが。もう7年になります」
マジか。
だから両親からあまり話を聞かなかったんだな。
触れてはいけない話題ってやつだ。
「……そうだったんですね。すみません。言いづらいことを聞いてしまって」
「いえ、家のギルドで知らない人はいない内容ですから、大丈夫です。ただギルドマスターにソフィア様のことを聞かれるのは酷だと思いますので、ご配慮お願いします」
オリビアさんの顔をまじまじと見る。
この人本当に仕事ができるな。
最初の伝説のパーティーの話からここまで、ソフィアさんのことを俺がギルドマスターに聞かないように、さりげなく誘導したんだ。それが本当にスマートで、違和感がない。
「オリビアさん、すごいですね」
オリビアさんは何も言わずに、にっこりとほほ笑んだ。
「スバル、待たせたな」
ギルドマスターとの話が終わった父が現れた。
「父様、ここの唐揚げめちゃ美味です!」
「そうか、久しぶりに俺も食べたくなったな。スバル、デザートでも食べて、俺が食べ終わるまで待っててくれるか」
もちろん!デザートは別腹である。俺は甘いものにも目がない。
「キュウー♡」
スカイも大喜びである。
「それでは私は失礼させていただきます」
オリビアさんが席を立つ。
俺とスカイに長々付き合ってくれていたが、、オリビアさんも仕事中だもんな。
「ああ、ありがとう。助かったよ」
「ありがとうございました」
「キュキュウ」
「また、今度は冒険者として、お会いできるのを楽しみにしています」
オリビアさんが右手を差し出す。
俺は慌てて手を拭き、オリビアさんと握手をした。オリビアさんはそのまま受付へ帰っていった。
「スバル、お前のタグも家に帰ってから見せてもらって良いか」
そういや、俺のは見せてなかったな。
俺にも伏せ字があるけど両親なら別に構わない。
「別に構いませんよ、何ならここでも良いですけど」
タグを渡そうとすると、ため息をついた父に受け取りを拒否された。
「タグの内容は俺しか分からないが、やはりその内容の話になるだろう。スキルや才能はデリケートな話題だから基本、大勢がいる場所ではしないのが常識だ。覚えておきなさい」
そうなのか。やはり俺は知らないことが多いな。知らずに危険な目に合うのは嫌だから、やはりしっかり学ばねば。
「分かりました。ありがとうございます。父様」
「いや、言っていなかった俺も悪かったな。さ、早く食べて家に帰ろう」
デザート、デザート!!
「お待たせしました。今日のデザートアップルパイのアイスのせです」
ホカホカのアップルパイにアイスがのり、少し溶けはじめた感じでのっている。めちゃめちゃ美味そう!!一口食べてみる。
「美味い――!!」
「キュウ――――♡」
幸せな1日になった。




