鑑定を終えて 1
「それじゃあ、これで終わりだな。冒険者としても歓迎するから、いつでも来いよ。また、困ったことがあったら、受付にいるオリビアに相談したら良い。こんな見た目だが冒険者ギルドの副ギルドマスターだからな」
オリビアさんが!?
やっぱりただ者じゃなかったんだな。
「……マスターこんな見た目とは、どういう意味でしょいう?」
オリビアさんは微笑んでいるが目が笑っていない。
これは姉や母と同じやつだ。
「いや、弱っちそう……じゃなくって美人だけどって意味で……そうそう、スチュアート少し相談したいことがあるのだが、少し残ってくれるか。スバルとスカイはオリビアと一緒に下で飯でも食って待っててくれ」
アランさんはあからさまに話題を変えてきた。
「分かりました。……マスター後でゆくっり話をしましょう」
ひゅっ。
オリビアさんから冷たい冷気が一瞬漂った。
くわばらくわばら。
アランさん、ご愁傷様です。
アランさんも一言多いのは俺や父と同じだな。少し親近感がわく。
「……とにかく、頼んだぞ、オリビア」
アランさんは冷や汗をかきながら話を打ち切った。
「父様、ではまた後で」
「キュキュ」
「ああ、下に迎えに行くから待っていてくれ。すまないがオリビアさん、よろしく頼む」
「了解しました。行きましょう。スバル様スカイ様」
俺とスカイはオリビアさんとともに部屋を出た。
♢ ♢ ♢ ♢
「スチュアート、気づいたか」
「ああ、あれで気づかぬのはスバルくらいだ」
「オリビアも気づいてアイコンタクトとってきたからな。あれだけのプレッシャー……神か?」
「おそらく」
部屋に残った2人は冷や汗をかきながら話を進める。
「伏せ字か……俺も、久しぶりに見たぜ。前のやつは聖女だったからな。スキルを伸ばして、世界に蔓延した病の治療薬を開発した」
「スカイも、何か大きな使命が与えられているということか」
「いや、分からん。あのプレッシャーもスカイではなくスバルの鑑定後感じたからもしかしたらスバルか……ただ余計なことはするなという感じがしたな」
「お前の勘は、当たるからな……あまり気にせず本人のしたいことをさせるほうが良いのか……」
「……おそらくな。ま、何にしろお前んところは楽しみが多いな、長男は突然変異の賢者、長女はお前の跡を継げそうな槍術、そして次男は神に愛されしテイマーか。これからどう育つか楽しみだ!!」
アランはにかっと豪快な笑顔を見せ、スチュアートを小突いた。
「ぬかせ……クレアちゃんの体調はどうだ」
スチュアートはさっきまでと違い、声のトーンを落として聞いた。
「……変わらんよ。あと、何年生きられるか」
さっきとまでとは別人のようにアランは淡々と答える。
「……そうか」
「願わくば、神から救いの手がさしのべられることだが……」
「スバルやスカイがそうであったらいいんたが……」
「いや、止めよう。個人的な願いを言い出せはきりがない。きっと神もそれは分かってる気がする。きっと……」
アランはうつむき、何かを耐えるように強く拳を握りしめた。
「……そうか。ままならぬものだな」
「ああ、だからクレアの事情は、スバルとスカイには黙っていてくれ」
「分かった、ただ、スバルから聞かれたら答えるからな。それは、戦友の子のことなら普通のことだぞ」
スチュアートは場を和ますように、飄々と答える。
「戦友か……懐かしいな。俺とお前、俺の妻のソフィアとお前んところのメルリシア。一緒にパーティーを組んでいろいろやったな」
「そうそう。……あの頃は馬鹿ばっかして……楽しかったな……」
「昔話になるくらい俺たちも歳をとったってことだな」
アランが話を終わらせる。
「そうだな、俺もお前も、背負うものが多くなった」
「その分楽しみもな。子どもの成長ほど楽しみなものはない」
「……諦めるなよアラン」
「もちろんだ、俺の諦めの悪さはお前が一番知ってるだろう。スチュアート」
「ああ、また来るよ」
スチュアートは別れを告げ、そのまま部屋の外に出た。
そして締まった扉に向かい、小声で告げる。
「それでも俺は、スバルとスカイが何とかしてくれるんじゃないかと思うぞ。このタイミングで神の啓示。しかもあの2人は何をしでかすか分からないんだ。だから諦めるなよ、アラン」




