作戦会議 3
「では、一度派兵を止めてもらって……定期的に見張りをするローテーションの確認を……」
「お待ちください」
末姫様の鋭い声が場を支配する。
「作戦は当初のまま、本日私が視察に参ります」
「末姫様!!」
「カイト、あなたの仕事は何?」
「もちろん末姫様の安全を守ることです。今回のような危険が伴う場合は苦言を呈することも護衛の役目です」
カイトさんの言葉にためらいはない。
「私の役目は?」
「王家の一員として、民に寄りそうことだと承知しております」
「そう。分かっているではないですか。この度の件、このまま捨て置いては民の暮らしを守れません」
「捨て置くのではなく機を待つだけではありませんか」
「いえ、今も苦しんでいる者がいるのに見捨てては王家の一員として顔向けができません。お願いします。私の護衛として、私とともに作戦に参加してください」
「……しかし……」
カイトさんはかなり悩まれている。
「カイト、この表情をした末姫様の気持ちが変わったことがあったか?覚悟を決められたこの方はてこでも考えを変えんぞ。……それとも臆したか?」
ヤドリ侯爵の護衛として控えていたクルスさんが発破をかける。
「そんなことはあるはずがない!!だが……前回の二の舞いだけは避けたい」
「今回は備えができるだろう?末姫様に傷一つ負わさぬようにしっかり考えて行動したら良い。それに……もし、本当に今回のヤツラが前回の孤児院の火災も起こしていたら、我らの悲願が叶うんだぞ」
クルスさんは末姫様を傷つけてしまった責任をとって辞めることになったし、犯人を誰よりも許せないはず。それはおそらくカイトさんも同じだろう。
「ええ。私も許せません。カイト、護衛としてよろしくお願いします」
末姫様もしっかり頭を下げられる。
「頭をお上げください……分かりました。私が護衛として参加します」
どうやら話はまとまったな。
「では、最初考えていたように末姫様に視察という名目で侵入することでよろしいでしょうか?」
皆を見渡すと皆こくりと頷いた。
「では、後は誰が一緒に行くかですが……グリンのことがあるので俺とエイダンは護衛の一人として参加します。後は職員さんが侍女として、護衛としてカイトさん、良ければクルスさん……このメンバーで良いですか?」
先ほどのこともあるから、クルスさんも参加したいだろうし、ヤドリ侯爵の反応はどうかな。
俺はヤドリ侯爵と目線を合わせる。ヤドリ侯爵はこくりと頷いてくれた。
よし、大丈夫そうだな。
「はい。あまりたくさんいても疑われるかもしれませんし、良いのではないでしょうか?」
「いや、もう少し護衛を増やす方がよろしいのでは……俺とクルスは別として正直この方たちだけでは心もとないと思いますが……」
「いや、大丈夫だろう」「ええ」
ヤドリ侯爵とケインのお父さんが待ったをかける。
「貴公は知らないだろうが、その者たちの強さは筋金入りだぞ。そこのエイダンくんには娘を助けていただいたのだが、我が家の護衛が苦戦する相手を一人で難なく倒しておる」
「スバルくんのテイムモンスターは一匹ずつがとても強いと伺っています。ちなみにそこのグリンくんは一匹でクラーケンを討伐しました」
「ぺぺも戦闘力は激強だぞ」
「スカイは回復に特化しています」
ハイドとケインも口添えをする。
「……そうか……ならばこのメンバーで行こう」
「はい!」「キュウ!」「ぺぺ!」「キャン!」
いつの間にか3匹も起きて話に参加していた。
よし、とにかく俺は安全第一にヤバくなったら末姫様も入れシールドを貼るぞ!!
「では、今日拐われた孤児が見つかった段階でグリンをここに向かわせますので、それを合図に皆さん突入していただいてもよろしいですか?」
「ああ」「大丈夫だ」
ヤドリ侯爵とケインのお父さんはその手はずで動いてくれるようである。
「後は近衛兵の代表者にここにいていただき、同じく合図で突入していただいてもよろしいですか?」
「ええ、その手はずを整えます」
「では、1時間後に準備を整えてここに集合で」
「「「「了解」」」」
その声を合図に皆が各々準備に取り掛かる。
俺とエイダンは末姫様に頼んで護衛用の服を用意してもらった。と言ってもまだ小さいので、見習いの服らしい。
エイダンは着るとやはり様になっている。近衛兵見習いとして誰も疑わないだろう。
俺も孫にも衣装、なんとなくそれっぽく見える。
「ハイドとケインは周辺で逃げるヤツがいないかを見張ってもらっても良いか?」
「おう!」「分かりました」
これで俺達の動きも決まったな……後は……そう言えば敵のミウム伯爵について聞き忘れたな。皆が戻ってきたら視察前に確認しておこう。




