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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第ニ章 新たな世界へ
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末姫様のリンゴ 3


「……というわけで、できれば今日ヤドリ侯爵家に行きたいのだが、スバルくんの都合はどうだろう?」

 

 朝食後にケインのお父さんに聞かれる。


 いや、別段急ぐ用事はない。……ただ、観光に行きたかっただけで。観光と末姫様を天秤にかけたらやはり末姫様に傾く。


「……大丈夫です」

 

「すまないな。観光に行く予定にしてたんだろう?こちらの都合で延期させる分、明日からの観光は何を買ってくれても構わないから目一杯楽しんでくれ」

「ありがとうございます」

 人助けも大切なことだしな。切り替えて今日は末姫様だ。


「今日は昨日来たヤドリ侯爵の息子さんは居ないから安心してくれ」

「いや、別にいても大丈夫ですよ?婚約者のことですし、一番気になっていると思うので」

 

 火傷のせいで苦しい思いをしている彼女を助けたいと思うのは、普通のことだしな。しかも、その人柄が素晴らしいとなると余計にそう思うだろうし。


「それが昨日の君への態度に腹を据えかねて、ヤドリ侯爵が謹慎を申し渡したらしい」

 えっ。昨日の俺への態度って……。そんなに不愉快なことは言われていないぞ。何だがことが大きくなってしまったけど大丈夫かな……。


「あの、俺別に失礼なことはされていませんが……」

「……スバルくんはそう言うだろうけど、これはヤドリ侯爵が決めたことだから気にしなくて良い。さて、準備ができたら打ち合わせも兼ねてヤドリ侯爵家に行こう」

 

 何だか言葉を濁されたな。ま、ヤドリ侯爵家に行くから直接伝えても良いな。


「エイダンは護衛としてついてきてくれ。他のみんなは観光に行ってくれて構わない」

 エイダンはこくりと頷く。


「スバル、エイダン悪いな」

「いや、俺も明日から合流するから気にしないでくれ」

「何かお土産買ってきますね」

「楽しみにしてる。スカイ、ぺぺ、グリンもみんなの言うことをちゃんと聞くんだぞ」

「キュウ!」「ぺぺ!」「キャン!」

 3匹も慣れたもので、観光に行くのを待ち切れない様子である。


「では、我々は先に出かけよう」


 ということでやって来ました、ヤドリ侯爵家。


「エイダン様!いらっしゃいませ!!」


 扉を開けるとヨウカさんが待ち構えており、エイダンの前に進む。顔を赤らめてエイダンを眺める姿は恋する乙女そのものである。


 エイダン……モテる男はつらいな。


 エイダンは少し焦ったようにこちらを見るが、もちろん俺はスルーする。こういう経験も必要だし、案外押しの強い女性にエイダンは弱いのかも……。


 いろいろ話かけるヨウカ嬢に、エイダンは何とかボソボソと答えている。 


 そうこうするうちに奥からヤドリ侯爵も現れた。


「シェル伯爵、スバルくん、昨日の今日ですまないな」

「本当だ。本来ならスバルくんは観光に行く予定だったのに」

 うわぁ。そんな大したことのない予定なんて、言わなくて大丈夫です。


「いえ、お気遣いなく。末姫様の件の方が大切ですし」

「そうは言っても君の予定を変えてしまったことには変わりない。明日からの観光は家が持つから好きに買い物をしてほしい」

 いや、朝にシェル伯爵にも言われました。


「スバルくん、甘えたら良いよ。家も出すから気にせず明日から大船に乗ったつもりで観光したら良い」

 ここは断ったら逆に失礼に当たるやつだな。

 

「では、お言葉に甘えます」

 ケインのお父さんとヤドリ侯爵は大きく頷く。


「それから昨日は家の愚息が失礼な発言をして、大変申し訳なかった」

 ヤドリ侯爵が丁寧に頭を下げる。

 

「いえ、末姫様を想ってのことなので失礼とは全く思っていません。むしろその件で、息子さんを謹慎処分にしていると伺ったので、そこまでは全く望んでいないのでといていただけたらと思います」


「いや、それは実は家の問題もあってな。スバルくんのことはきっかけにすぎんのだ。だから気にしないでくれ」

「いや……でも……」

 大切な人のために必死になることは俺にもあるから、よく分かる。(好きな人ではまだないけど……)


「いや、スバルくん。これは家の問題だし、息子の問題だ。だから、本当に気にしないでくれ」

 ここまで言われると、それ以上は言えない。


 とにかく息子さんが納得できる結果になりますように。それが、息子さんにとっても一番だよな。


 俺は無言で頷いた。


「ヨウカ、お前もいつまでもエイダンくんをひき止めないで、学園に行きなさい」

「……もう、今日くらいお休みさせてくれても良いのに……エイダン様、また必ずいらしてくださいね」


 ヨウカ嬢に気圧されて、エイダンも小さくこくりと頷く。

 

 それを見たヨウカ嬢は笑顔を作ると、その場をスキップしながら去って行った。また会う約束が取り付けられて嬉しかったんだろうな。

 

「……全く家の子どもたちときたら……」

 

 ヤドリ侯爵は頭を抱えていた。

 




 

 


 

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