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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第ニ章 新たな世界へ
155/168

末姫様のリンゴ 1


 次の日いよいよ王都観光へGO!!


 と思っていたら……行けませんでした。


 急遽末姫様との会がセッテイングがされたからだ。

 というのもその日の夜に動きがあった。


 話し合いを終えた夜、皆で恒例になったトランプで大富豪をしていると、トントンとドアがノックする音が部屋に響いた。


「……お楽しみのところ失礼します。ヤドリ侯爵とご子息がどうしてもスバル様に会いたいといらっしゃっているのですが……」


 よし!今、調度大貧民だし、流れを変えるためにも行ってこよう!!


「分かりました。ごめん、みんな。後は頼んだ」

「えー、スバルずりぃな。お前がいなくなったら俺が大貧民だぜ!!」

 ハイドがぼやく。

 

「革命を起こせ!」

 俺は気楽にハイドにアドバイスすると、スカイと共にメイドさんに案内された部屋に入った。


 部屋にはケインのお父さんと、ヤドリ侯爵、あと見慣れないイケメンが座っていた。長い銀髪に整った顔立、ヤドリ侯爵にも似てるからおそらく末姫様の婚約者の息子さんだろう。


「夜分に呼び出してすまない」

 ヤドリ侯爵と息子さんが頭を丁寧に下げる。

 

「いえ、それで俺達に話とは……」

 おそらく末姫様の件だろうけど。


「実はシェル伯爵から連絡をもらって、息子に話をしたらすぐにでも会いたいと言い出してな。非礼は承知で伺わせてもらったんだ」

 いや、そりゃあ婚約者の火傷が治るかもしれないと聞いたら居ても立ってもいられないよな。しかも、そのせいで関係が微妙になってたらなおさら。


「はじめまして。ヤドリ侯爵家嫡男キリアンです」

「スバル=クリスチャン=バードと申します。隣国テベルの辺境伯バード家の次男です」

 

「早速ですが、火傷の跡が消える可能性があるというのは本当ですか?」

 息子さんが直球で聞いてくる。

 

「はい、どれだけ消えるかはやってみないと分からないので確実に消えるとは言えませんが……」

「消えるとは言えないのか……では、末姫様に試すわけにはいかないな。もしだめだった時のショックが大きすぎる」


 確かに一理ある。もしだめだった時は上がった分今以上に気持ちが落ち込むかもしれない。


「でしたら、火傷の薬と言わずに食べてもらったらどうでしょうか?見た目は普通のリンゴと変わりありませんので」

 それなら治っても治らなくてもショックはないだろう。


「食べることによる副作用は?」

「鑑定では特に出ていません。ただ、長期的には確認はできていません」

 これも正直に伝えよう。ぶっちゃけ長期的に見たら分からない。でもなんとなく死神関係の気がするから、いける気はするけど。


「……本当に大丈夫なんだろうな……」

「いや、そう言われると……」

 なんとなく勢いでいけると言ったけど難しそうな気がしてきたな。万が一などと言われたら責任はとれないし……。


「キリアン殿、私は実際に食べましたが二十年来あった火傷の跡が消えました。副作用も特にありません。鑑定もきちんとしているので大丈夫だと思いますが……」

 ケインのお父さんが口添えしてくれる。

 

「火傷の跡が消えたのはシェル伯爵だけですか?」

「はい。数があまりない薬なので……」

 どうしよう。この雰囲気、使わない方が良さそうかな?


「では、私の目の前で一度試してみていただくことは可能ですか?」

「1個くらいならすぐに使えますけど……」

 ただ、臨床実験をするとなると難しい。


「実は、末姫様の護衛を火傷の責任をとって辞任したため我が家で雇っているんです。その者も姫様と変わらぬほど火傷しているので彼に試してみても良いでしょうか?」

「はい。それならその人を呼んでいただけたら」

「外で待機しているので、呼んできます」

 息子さんが部屋の外に出て、呼びに行く。


「スバルくん、すまないな。家の息子がいろいろ聞いて、気に障っていないといいんだが」

「いえ、それだけきちんと考えていらっしゃるということなのでそこは全然気になりません……ただ、実際複数に試すことも、長期的な副作用をみることもできないため、今は末姫様に食べるかどうか選んでもらうのが良いのではと思うようになってきました。正直、食べた後の責任は取れません」

 自己責任で食べてもらうのが一番な気がする。


「連れてきました」

 仮面を被った護衛の方が部屋へ入ってくる。おそらく顔に火傷の跡があるのだろう。

 

「あの、火傷に効く薬なんですが、鑑定結果は特に副作用は書かれていません。長期的にどうなるかは責任が持てませんがそれでも良かったらどうぞ」

 この言い方で大丈夫かな?俺は仮面を被った護衛の方に渡す。


「あの……効果を皆さんに確認していただくために仮面を外してもよろしいですか?」

 皆に確認すると、こくりと頷いたのでオッケーを出す。

 

「護衛さんが良ければ構いません」

「……では」

 

 そういってためらいなく仮面を外す。確かに仮面の下、右半分にかなりひどいケロイドの跡が残る火傷の跡があった。見ているだけでかなり痛々しい。


「では、どうぞ召し上がってください」

 うまく治りますように……。

  


 

 

 


 

 

 

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