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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第ニ章 新たな世界へ
153/166

スカイのリンゴ


 ふー。

 

 やっぱり緊張していたせいか、筋肉が固まっている気がする。腕や肩を回して凝りをほぐす。


「それにしても結構時間がかかったな。何かあったのか?」

 特段変わったことはなかった。


「……特には……最後のアレは気になったけど」

「最後のアレ?」 

「うん……あの、王妃様の話が何なのかご存知ですか?」

 俺はケインのお父さんに聞いてみた。やっぱり気になる。


「おそらくだが……末姫様の話だろう」

「末姫様?」

 ケインが聞き直す。ケインも知らないのか。

 

「ああ、ここ1年の話だからケインも知らないのか。1年前、末姫様が孤児院に慰問に行っていた時に放火に巻き込まれてな……どうやら王家に反発する過激派の仕業だったらしいんだが、顔にひどい火傷を負ってしまったんだ」

 うわぁ。どこにでもクズは居るんだな。あの王様かなりキレ者っぽかったし、そんなに悪い政治はしてなさそうだけど。


「王様ひどいやつなのか?」

 ハイド直球!!

 

「いや……今の王の代なってから民の暮らしもかなり裕福になった、治安も良くなったしな……だが、どこにでも自分の不満を人のせいにする輩が居るんだよ」

 王様って大変だな……。って、今は末姫様か。


「でも王族なら護衛がついているだろう?」

「ああ、事件当日も火の手は末姫様のいないところで起きたんだ。……ところが、末姫様もできたお方でな。自身の護衛とともに救助活動に参加したんだ。その際、運悪く顔に柱の破片が当たってしまって、かなりの火傷を負ってしまったらしい」

 それは本当に可哀想だな。


「それで末姫様は今……?」

「元気にお暮らしだ。顔に仮面を被る以外はいつもと変わらぬ生活をしておいでだよ。ただ、やはり気にされてか相思相愛だったはずのヤドリ侯爵のご子息との婚約の解消を願われているが」

「婚約の解消を?ヤドリ侯爵の息子さんクズだな」

 侯爵はまともだったのに……子どもは……。娘さんも何とも言えない感じだったしな……。


「いや、誤解だ。ヤドリ侯爵の息子さんは婚約続行を希望している。解消を望まれているのは末姫様だけだ。いつも2人仲良さそうに寄り添っていたのだが、最近は末姫様が拒絶されてな……。ヤドリ侯爵の息子さんの落ち込みようも見ていて痛々しい」

 なるほど。クズじゃなくて良い男だったんだな。ちょっと安心。


「それで何で俺?」

 そこが疑問である。


「おそらくだが……悪魔病も治す方法を知っていたから、火傷を治す方法も知っているのではと期待されたんじゃないかと思う」

 いや。知らない。正直話を聞いて何とかしてあげたいとは思ったけど、どうにかできる知識はないしな。


「……すみません。知らないです」

 いや、本当に申し訳ない。

 聖人とは名ばかりだからな。

 火傷なんて、冷やすくらいの知識しかない。……後は美容整形だけど、どうやって手術するか知らないしな……。

 

「いや、謝らないでくれ。普通は知らなくて当たり前だ。今回の話も勝手に王妃様が期待しただけだ」

 いや、親ならどうにかしたいと思うのが普通だよな。そういう面でも王様はよく我慢している。だからこそ何とかできないかと思うけど、手段がな……。


「キュウ!」

 話の途中だが、スカイが俺を見てポケットからリンゴを取り出した。


 リンゴ……。


 まさか!?

 スカイは俺をニコニコと見つめる。


「あの、鑑定鏡はお持ちですか?」

「ああ、少し待っていてくれ」

 ケインのお父さんが鑑定鏡を持って来てくれる。


 俺は鑑定鏡でリンゴを鑑定してみた。

 

スカイのリンゴ 効果 美容に良い。肌の状態を整える 美味


 ……微妙。

 どう肌の状態を整えるかが分からない。

 これは、誰かに試してもらうしかないかも……。


「あの、こちらにお勤めの方でどこかに火傷がある方はいらっしゃいますか?」

「それなら、私に火傷の跡があるが……」

 ケインのお父さん!?

 確かに今めくってくれた右腕にかなり大きな火傷の跡が残っている。


「もう数十年も前の若い頃、モンスターにやられた跡だ」

 これなら、実証実験できる……でも、伯爵様で試すのはやはりマズイ気も……。


「他にどなたかいらっしゃいませんか?」

 

「いや、スバルくん。この話の流れからして、試してみるのだろう?私で構わない」

「ですが、よくならない可能性もあります」

「構わないよ。もう数十年も付き合った傷跡だし、服を来たら目立たないしね。治っても治らなくても正直どちらでも良い傷跡だ」

 こう言ってくださっているし、お願いしよう。味は美味とあるし、特に副作用も書いてないしな。

 

「……では、このリンゴを食べてみてください」


「これを食べたらいいんだな」

 ケインのお父さんは豪快にかぶりつく。


「美味い!!」

 味の保証はできるけど、後は火傷の跡だよな。


 皆でじっと火傷の跡を見つめる。ケインのお父さんが食べ終わると同時に、火傷の跡がすっと消えていった。


「成功だ!!」


 皆で喜びを分かちあう。

 といっても、リンゴを食べただけだけど……。

 

 


 


 

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