スカイの能力1
スカイが生まれてから3日が経った。
未だに何のモンスターかは分からないが、少しずつその生態について分かってきた。
まずは、よく食べる。
俺と同じ食事、朝だったらパンと卵とサラダ、ハムをペロリと完食する。ちなみに果物が好きらしく可愛くおねだりするので、みんなから果物をせしめている。食べきれなかった分はお腹のポケットに入れている。
次によく寝る。
幼体だからか、朝食後はすぐにうつらうつらし始め眠りにつく。ベッドに寝かせると、背中にスイッチがついているのか、すぐに起きて鳴き出すので、卵の時と同様にリュックに入れて背負うのが定位置になっている。
そして能力。
はっきり言って不明。
最初にテイムが完了したと頭に響いて以来、何もアクションはない。
話かけると、返事が返ってくるので、知能は高めであるが「キュキュ」という言葉が返ってくるだけで、その言葉が分かるわけではない。ニュアンスや仕草で何となく言いたいことは分かるが、俺にだけ念話などで伝わるなどは無い。
お腹のポケットには、いろいろものが入れられる。果物はもちろん、試しにいろいろお願いして入れてもらったが、今のところ入らなかったものは無い。ただ、生きているものは怖くて入れてないが……。
ちなみに熱いものは熱いままで、冷たいものは冷たいまま入れられることが分かった。
このことからおそらくポケットが、アイテムボックスになっていることが推測される。
死神ありがとう!!
昼からは起きて一緒に訓練に参加している。
訓練には普通について来れているので、身体能力も高そうである。ただ、肝心の能力が分からない。魔法などのスキル持ちなのか、身体能力が高めなのかどちらかも不明である。いろいろ試してみているが、今のところ不発である。
訓練後の自由時間、俺は姉とフェレナとスカイで、中庭のテラスでのんびりしていた。
といっても、のんびりと言えるのは姉とフェレナとスカイで、訓練でへとへとの俺はぐったりだったが。
「スカイちゃん、あーん」
あーんとスカイが大きく口を開ける。
「キュッキュ♡」
姉からリンゴをもらい、満足そうな笑みを浮かべる。テーブルの上には、ルリアに用意してもらった果物がどっさりのっている。
この世界もほぼ地球と同じような食文化をしている。食べ物の名前もほぼ同じである。(ご都合主義か……)
ただ、肉だけは魔獣の肉で、牛や豚などの家畜はいない。オーク(二足歩行の豚)やバッファロー(牛のデカいやつ)、シシ(イノシシのデカいの)ウルフ(狼)などの肉が主流である。
「スカイちゃんは、何のモンスターなのかしら」
「それが分かれば苦労しないよ……」
顔をテーブルにつけたまま言う。
テーブルが冷たくて気持ちが良い。
「でも、めちゃめちゃ可愛いです」
「それには同感ね」
姉とフェレナもスカイにメロメロである。
時間があれば抱っこし、果物で餌付けしている。
「スカイお前は何ができるんだろうな」
「キュウ」
はー。分からん。
「キュウ?」
俺の元気が無さそうに見えたのかポケットの中からオレンジ(まるまる1個)を出してくる。
「ありがとうスカイ、でも大丈夫。しまっていいよ」
果物を断るとスカイは何となく、しょんぼりしてしまった。
「……きゅう」
「スバル!!何スカイちゃんを悲しませてるのよ!」
「早くもらって上げてください。気持ちを受け取ることが大切です。」
「おおっ、スカイごめん。せっかくだからもらうよ」
慌ててオレンジを受け取る。
スカイがつぶらな瞳で俺を見つめる。
(「早く食べて!!」「早く食べてください」)
姉とフェレナから小声で急かされる。
俺は慌ててオレンジにかじりついた。
うまっ!!
何だこのオレンジ!!
口の中に酸味と甘みが絶妙なバランスで広がる。あまりに美味しすぎてそのまま皮まで全部食べてしまった。
「めちゃめちゃ美味しい!スカイ、ありがとう!」
「キュウ―♪」
スカイがどういたしましてと言うように、手を挙げる。
「……スバル、慌ててたからって皮ごと食べなくても」
「スバル様、皮には栄養があると言われていますが、オレンジの皮は硬くて食べれないのに……」
「いや、このオレンジ、皮も柔らかくて、めちゃうまだったぞ!」
心なしか、力もわいてきた気がする。
「そんなに美味しいの?」
姉がテーブルの上のオレンジを1個とると、皮ごとガブッといった。
「……別に普通のオレンジよ。確かに甘くて美味しいけど。皮も、あまり美味しくないわね。」
「うん?でも、皮も柔らかかったけどな。俺は姉さんと違って普通だから、そんな硬い物は食べられないし」
そう姉は何でも食べる。硬い物でもお手の物である。魔物の肉を骨ごとかじっていたのを見てさすがに少し引いたが……。
「私と違って普通ってどういう意味?」
ヤバっ、スイッチが入ったか。
「いや、姉さんは俺より強いから……そうだ、スカイさっきのオレンジ出してよ」
スカイ、頼む。ご主人様を助けてくれ。
「きゅう?」
なぜ首をかしげる。
「スバル、ちょっと話をしましょうか」
笑顔が怖い。
「いや、これからスカイと秘密の訓練が……」
早期撤収をはかる。ここは逃げるが勝ち!!
「お姉様が、秘密特訓してあげる♡」
「ステファニー様、私もご一緒します!」
イヤだーーー!!!
「キュウ!」
スカイが可愛く手を挙げていた。