コンフ侯爵家 1
次の日、朝食をご馳走になったあと、ヤドリ侯爵家を後にした。エイダンはヨウカ嬢にこのまま残ってほしいと泣いてお願いされていたが、丁重にお断りし一緒にコンフ侯爵家へと向かっている。
いや、確かにこうして見るとエイダンって良い男だよな。顔はイケメンだし、めちゃめちゃ強いし、モテるのもよく分かる。身分がないが、それも家の父にでも頼めば即分家の養子にくらいしてくれそうだし、そこもそんなに問題にはならなさそう。唯一、あまり人に興味がないのが欠点といえば欠点である。
ケインにもセリン嬢がいるし。あとは……ハイド!!
「なぁ、ハイド。ハイドにも婚約者がいるのか?」
「まさか、そんな身分じゃないしいないぞ」
ほっ。仲間がいた!!
なんとなく安心である。
「ただ、隣村に俺と年の近い同じ種族の幼馴染がいるから、互いに大人になって気が合えば結婚すんじゃね」
幼馴染!?
なんというパワーワード!!
俺と仲間と思ったのに!!
なんとなく落ち込んでいると、スカイに肩を叩かれた。
「キュウ!」
ぺぺとグリンもいる。
そうだ!俺にはお前たちがいる!!彼女なんて……ちょっぴりしかいらないぞ!!
ささくれた心を3匹で癒していると、先を歩いていたケインのお父さんの足が止まった。
ヤドリ侯爵家と同じくなかなか大きな趣がある建物で外装もかなり凝っている。入り口には詰所があり数人の兵士が控えていた。
「私の名前はダミアン=シェル。侯爵様と会う約束をしているのだが、いらっしゃるだろうか?」
「シェル侯爵様、お待ちしておりました。主人よりお通しするよう伺っております。こちらへどうぞ」
案内され玄関に入ると、1人の貴族男性が出迎えてくれた。
「ようこそおいでくださいました。私が当主のライン=コンフです」
「ライン殿、ご無沙汰しております」
「久しいな」
「ダミアン殿、テイタン殿もご健勝のようで何よりです。ところで他の方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「シェル家次男、ケインです」
「スバル=クリスチャン=バードと申します。隣国テベルの辺境伯バード家の次男です。ケインくんのチームのリーダーを務めています」
「ハイドです。獣人族の平民でケインのチームメイトです」
「エイダン。スバルの護衛。ケインのチームメイト」
「キュウ!」「ぺぺ!」「キャン!」
「妹から話は伺っています。我が妹と息子を助けていただき本当にありがとうございました。貴方方が助けてくださった子どもの1人は実は私の末の息子になります。悪魔病の療養のため妹と共に療養所で暮らしていたのですが、危険もかえりみず、クラーケンから助けていただいたと伺い、どんな屈強な方たちかと思っておりましたが……いやはやお若いのに素晴らしい力をお持ちだ」
「いえ、たまたまです。クラーケンを倒せたのも、私のテイムモンスターの力でして」
「いや、妹から子どもたちの避難も手伝っていただいたと伺っています。皆様、本当にありがとうございます」
手放しに褒められると何だが照れくさくなってくる。
「それに妹から通信球で息子の様子を聞くのですが、皆様にいただいたオレンジのおかげで日に日に元気になっているそうです。今まで悪魔病は不治の病として知られており、正直我が息子の命もいつまで持つか危ぶんでいたところ、それが治るかもしれないと希望が見えてきました。命の恩人のため、私にできることなら何でもいたしましょう」
俺達は顔を見合わせると、代表して俺がお願いする。
「……ですので、セリン嬢が当主代行を務め、その後見人をテイタン=シェル様、シャクヤ侯爵家前当主様が務めることに賛同してもらえないでしょうか?」
賛同してもらえるとありがたい。
「もちろん構いません。実は昨日ヤドリ侯爵からも通信球で連絡が来ておりまして、だいたいのご事情は聞いていたんです。お二人の後押しを全力で努めさせていただきます」
「ありがとうございます」
良かった。これでひとまず準備は整ったな。
「我が家でも皆様をもてなさせてください。立食形式の夕食をご用意しておりますので、ぜひ」
ケインのお父さんを見ると、頷いているのでまた、甘えよう。
「すみません、マナーなどができていない所もありますがそれでも良かったらご馳走になりたいと思います」
念の為確認は忘れずに。
「もちろん。無礼講で大丈夫です。なんと言っても我が家の命の恩人ですから。どうぞ我が家と思ってくつろいでください」
「「「ありがとうございます!!」」」
遠慮なくご馳走になろう。
「ダミアン殿、テイタン殿はこちらへ、皆様は各お部屋へご案内させていただきます」
今回もお願いして、ケイン、エイダン、ハイドの4人部屋にしてもらった。修学旅行2日目である。部屋はかなり豪華だけど。夕食まで部屋でのんびりしよう!




