海蛇様 2
「スカイ良くやった!」
戻ってきたスカイの頭を撫でて褒める。
「キュウ!」
「いや、本当に助かった!」
「ありがとな」
「お前勇気があるな!」
集まっていた人たちも、スカイにお礼を言うとその場から離れていった。道も開通し止まっていた海中タクシーも次々と動き出す。
「……いや、本当に助かった。礼を言う」
ケインのお祖父さんもスカイに頭を下げる。スカイは「キュウ」と手を上げて答えていた。誰に対してもブレないところも大物である。とりあえず一件落着かな。皆で海中タクシーに戻る。
「お祖父様、海蛇様は?」
「このテイムモンスターが解決してくれた」
「まあ、スカイさんが!本当にありがとうございます」
「キュウ!」
セリン嬢にも褒められて、スカイも嬉しそうである。
「で、何で海蛇様はいたんだ?」
ハイドが聞いてくる。そういえば理由は聞いてなかったな。
「いや……俺もよく分からない。海蛇様にスカイが桃とオレンジを渡したところしか見てないからな」
「桃とオレンジ?じゃあ海蛇様、体調不良だったのか?」
うーん。とりあえずスカイに聞いてみよう。
「スカイ、海蛇様は体調不良か?」
「キュキュウ」
首を横に振る。
「海蛇様の家族が体調不良か?」
「キュウ」
今度はこくりと頷く。
「ということで、海蛇様の家族が体調不良だったらしい」
「でも何で道のど真ん中にいたんだ?」
「……いや、それも俺には分からないな」
でも、可能性として考えられるのは死神かな……。
「ま、いいや。それにしても、スカイはすごいな。海蛇様も感謝してるだろうしな!何かもらわなかったのか?」
「キュウ!?」
褒められていたスカイの動きが止まり、そうだったという風にポケットに手を入れ、そして中から虹色に輝く大きな鱗を取り出した。
「……これは」
どう見ても海蛇様の鱗。いや、かなり綺麗で高そうな鱗だぞ。
「スカイ様海蛇様に鱗をもらったのですか?」
「キュウ!」
「おそらくそれは海蛇様の寵愛を受けた者が海蛇様に授けられるという鱗だと思います。それを持っていれば海蛇様の神子として、どんな場所でも出入りできますよ。たとえ王宮でも、入ることは可能になります。私も見たのは初めてです」
セリン嬢が興味深そうに鱗を見つめる。
「……いや、もうプレート2枚とその鱗だけでも、王は願いを叶えてくれそうだな」
ぼそりとケインのお父さんが呟く。
その場がシーンとなる。どうやら皆同じことを考えていたらしい。
確かに。かなりレアな物が集まったしな。
「……いや、念には念を入れたほうが良いでしょう」
石橋は叩いて渡るべきである。約束もしているし。
「とりあえず、二侯爵家に行ってみましょう」
そんなこんなハプニングはありつつも、無事に王都に到着した。まずはヤドリ侯爵家に訪問することになっているらしい。
俺は別行動するスカイたちに最終確認を行う。
「スカイ、お金はみんなの分袋に入っているから、ちゃんと自分で払うんだぞ」
「キュウ!」
「ぺぺはあまり先々行かないように。みんなで一緒に行動すること」
「ぺぺ!」
「グリン、何か困ったことがあれば直ぐに俺のところに来るんだぞ」
「キャン!」
「ハイド、よろしくな!」
「おう!」
「護衛さんもよろしくお願いします」
「承りました」
護衛さんもまだ若く、王都出身でかなり王都に詳しいそうだ。1人と3匹は観光にいけるのが嬉しいのか、俺達に手を振ると護衛さんに続いて観光に出かけていった。別行動組良いな。
「それでは、我々はヤドリ侯爵家に行きましょう」
ケインのお父さんに続いて歩くこと10分。なかなか大きな趣がある建物の前に到着した。3階建てで外装もかなり凝っている。入り口には詰所があり数人の兵士が控えていた。
「私の名前はダミアン=シェル。侯爵様と会う約束をしているのだが、いらっしゃるだろうか?」
「シェル侯爵様、お待ちしておりました。主人よりお通しするよう伺っております。こちらへどうぞ」
案内され玄関に入ると、甲高い女性の声が響いた。
「お待ちしておりました!やはりいらしてくださったんですね!エイダン様!!」
顔を赤らめた金髪を頭の上に結い上げた美人の女性が立っていた。年齢は俺たちより少し上に見える。そしてケインのお父さんには目もくれずエイダンの前に進む。
エイダンはどこか困惑気味に俺を見る。
いやいや、俺を見られても。
「颯爽と盗賊をやっつける姿、本当にステキでした。正直万が一のことも覚悟していたので……本当にありがとございました」
とりあえずエイダンは女性の言葉にこくりと頷く。そしてまた、俺を見る。
今回はこのパターンが多いな……。
「ヨウカ、そのように詰め寄って……お客様がびっくりしているではないか。はしたない。まずはきちんと挨拶しなさい」
奥から、ケインのお父さんと同年代の人物が現れた。この人が当主様かな?




