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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第ニ章 新たな世界へ
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話し合い 2


「あの、少々よろしいでしょうか?良かったら俺たちが考えた案を聞いていただけませんか?」


 皆の視線が一気に俺に集中する。

 緊張するが、やるしかない。

 上手くまとまりますように……。


「実はここに来るまでにこういう物を手に入れまして」

 俺は懐に入れていた2枚のプレートを取り出した。


「……これは、ヤドリ侯爵家とコンフ侯爵家のプレート。これをどこで?」

 ケインのお祖父さんが手に取り呟く。

 

「実は1枚は陸上で後に控えている護衛のエイダンが襲われている馬車を助けまして、ヤドリ侯爵家の方からいただいたんです。もう1枚はここより前に立ち寄った町でクラーケンからの避難を手伝ったらコンフ侯爵家の方にいただきました」

「なんと……。なかなか目にすることのないプレートを2枚もか……。これは本家の直属が1人1枚しか持たない貴重なものだぞ。わしも他家の物は初めて見た。それでこれをどうする気だ?」

「あの、この2枚で二つの侯爵家にセリン嬢が当主代行を務め、その後見人をお祖父様が務めることに賛同してもらったらどうでしょうか?あと1枚のシャクヤ侯爵家はもちろん賛同なので全ての侯爵家からの願いであれば王家も無視できないのでは?」

 どうだろう?

 皆の反応を固唾をのんで見守る。


 しばらくの間、じっとお祖父さんは考え込んでいたがついに重い口を開いた。


「ケインはどうなんだ?」

「僕は……」

「セリン嬢はお前のために、爵位を失っても良いとまで言ってくれておる。確かに2枚のプレートを使えば何とかなるかもしれん。だが結局結論を後回しにすることにしかならん。お前はセリン嬢をどう思っているんじゃ」

 

「お祖父様!!」

 セリン嬢は慌てて口を挟む。

 

「私の爵位のことと、ケイン様の気持ちは関係ないではありませんが。せっかくスバル様が良い提案をしてくださってるんです。お言葉に甘えてはどうでしょうか?」

「何を言う。仮結婚をすればプレートを使わんでもすむ。そもそもケインが手に入れたわけでもないのに、それを使うように強要するのは間違っておるわ」

 

 皆ケインのお祖父さんの発言に言葉を失う。

 まごうことなき正論である。

 でも、1枚はケインも関わっているし、もう1枚も正直使い道に困っている物だから重く捉えずに使って欲しいのだが、どう言えば良いだろう。


 俺が口を開く前に、ケインが重い口を開いた。


「僕は……ずっと自信がありませんでした。人間の血が強く出てしまったため、他の人魚族の人よりもできないことや劣ることが多かったからです。そんな俺を嫌がらずに婚約者として尊重してくれたセリン嬢には感謝の気持ちしかありません。ただ……僕は今はセリン嬢とは結婚できません。それを強要されるなら、僕も平民になっても構いません」

「それがお前の答えか?」

「……いえ。最初は婚約解消しかないと思っていました。でも、スバルくんやハイドくんエイダンくんとチームを組み、冒険者として活動する中で自分にできることが増え、少しずつですが自信も持てるようになってきました。ですから、今は結論が出せませんがデビュタント1年前まで待っていただくことはできませんか?それまでにセリン嬢の横に並べる強さと自信を身に付けたいと思います」

 ケインなりの誠意のある真っ直ぐな言葉だ。


 ……セリン嬢は。


 顔を赤らめて涙目である。……これは大丈夫そうだな。


「セリン、そなたはケインの話をどう思う?」

「……待ちます。ケイン様が私の隣に立って良いと思われるまで待ちます」


 ケインよ……爆ぜろ!!

 ……正直少し羨ましい。

 俺には全然そんな話がないからな。

 ま、でも良いか。話がまとまりそうだし。

 

 お祖父さんは一つため息を吐くと、俺に向き直った。


「……それではスバルくん、申し訳ないがそなたの提案を受け入れても良いだろうか?そなたたちが得たものを譲っていただくことになるが……」

「もちろん大丈夫です。な、エイダン」

 エイダンも大きく頷く。


「……ありがとう。ケインよ、得難い友を得たな」

 ケインのお祖父さんは俺に深々頭を下げて言う。同じようにセリン嬢も頭を下げる。

 

「はい!」

 ケインも満面の笑顔である。


 良かった。とりあえず第一関門突破だ。


「では、私はスバルくんたちと両侯爵家をつなぐ役目を引き受けよう」

 ずっと黙って見守っていたケインのお父さんが提案してくれる。


「ふん。嫌なところは全部わしに言わせおって。それくらい引き受けるのは当たり前じゃ」

 ケインのお父さんはお祖父さんの言葉に苦笑している。


「あら、そういえば当家自慢の料理の提供が止まっておりますわね。次のお料理を持って来てちょうだい。スバル様、大したお礼にはなりませんが心ゆくまで当家自慢の料理をご堪能ください」

 

 一つ心のつかえがとれたからか、まだまだ食べられそうである。お言葉に甘えていただこう。

 あと、そうだ!!


「あの、護衛のエイダンも一緒に食べても大丈夫でしょうか?」

「もちろんです。気が利かなくて申し訳ありません。直ぐにご用意しますね」

 

 これで一番の功労者のエイダンも美味しい料理が食べられる。よし、心おきなく食べるぞ!!



  

 

 

 

 

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