クラーケン襲来 後始末
クラーケンそのものは騎士団が片付けてくれるらしい。俺たちは時間にあまり余裕かないから良かった。討伐の報奨金も出るらしいけど、今のところお金には困っていないからグリンと皆に許可をとり、町の復興のために寄付することにした。結構クラーケンに家を破壊された人も多そうだから少しは足しになればと思う。
「本当にありがとうございました」
避難指示が解除されたので、療養所の子どもたちも家に帰れることになった。幸い療養所は襲撃を受けなかったのでそのまま帰れる。それに、町の有志の人達が抱っこして送ってくれることになった。
「いえ、余計なことしたかもですが皆無事で良かったです」
被害にあってないからそのままそこにいても良かったかもしれない。
「いえ、クラーケンがどこに来るか分からないので、あのままあそこにいたらみんなダメだったかもしれません。ですから本当に助かりました」
大人の女性に頭を下げられるとなんだか照れくさい。でも、皆助かって本当に良かった。あとは……そうだオレンジ!!
「スカイ、オレンジまだ作れるか?」
俺はこっそりスカイに確認する。スカイは「キュウ!」と頷くと手に大量のオレンジを抱えていた。
「……あの、正直効くかどうかは分かりませんが、このオレンジが悪魔病に効くかもしれないんです。良かったら1日1個召し上がってください」
スカイの出してくれた量を見ると1週間は持ちそうである。
「もし、効果があって必要ならまた隣国テベルの辺境伯家でオレンジを作っているので、良かったら取り寄せてもらえたらと思います。ただ、ここまで甘いオレンジではなく普通のオレンジになるかもしれません」
そもそもオレンジであればスカイのでなくても良いはず。味は落ちるかもしれないけれど、家の農家が栽培しているオレンジで代用できるだろう。
「……何から何まで本当にありがとうございます。貴方にこうして会えたのも主神の思し召しかもしれません。……そうだ。お礼になるかは分かりませんがこちらをお待ちください」
女性は金のプレートを取り出し俺に差し出した。
「私はこう見えてこの国のコンフ侯爵家の一員なんです。姪の世話のためにここに来ているのですが、王都ではそこそこ顔が利きます。このプレートを見せれば困った時の助けになるはずです」
このプレートどこかで見た記憶が……。そうだ、エイダンのもらったやつ!!
「エイダン、プレート出してくれる?」
女性に聞けばこのプレートについても分かるかも。
「あの、実は陸上で馬車を助けたんですが、その時にこれをいただきまして。どこの家のか分かりますか?」
「……これは、ヤドリ侯爵家のものですね。陸上でも人助けをしていらっしゃったんですね。この2枚があれば王都で叶わないことはないかと。ぜひ有効活用してください」
女性がにっこり微笑んでくる。
なんだか良い物をもらったらしい。これが仮結婚の解消に使えたら良いんだが。
夕食は騎士団が炊き出しをしてくれ、具沢山の海鮮スープをいただいた。あったまるし、めちゃめちゃ美味しい!俺もスカイに頼んで桃を振る舞った。軽度の怪我なら治るしな。それもみんなが感謝してくれ、そのまま旅館に戻り布団に直行した。
流石に疲れた……。
ぐ――
速攻で夢の世界に旅立ちました。
◇ ◇ ◇ ◇
「ケイン。スバルくんは何者だ?」
深夜、別室でケインは父に呼ばれ話をしていた。
「俺のチームのリーダーです」
「いや、そうじゃなくて……なんだ、あのデタラメなテイムモンスターは」
そう。まだグリンの力しか見ていないが、おそらく他の2匹もかなり強そうだ。
「可愛らしい外見ですが、どの子もかなり強いです」
「いや、それも分かっているんだが……スバルくん自体かなりのキレ者だな」
「はい。どんなピンチもあっと驚く方法で切り抜けてきました。それもスバルくんのヒラメキのおかげです」
「そうか……だから今回一緒に来てもらうことを切望したんだな」
「はい……正直僕だけでは難しいことも、スバルくんやハイドくん、エイダンくん、そしてテイムモンスターの皆がいれば何とかなってきたので」
「得難い友に恵まれたんだな」
「はい!」
ケインは笑顔で頷く。
「悪魔病の件でもスバルくんには頭が上がらん。何か家でできることがあれば良いんだが……」
「普通の対応が一番です。スバルくんは特別扱いを嫌う節があるので、僕の友達として接してください。……それにスバルくんの能力を故意に使うと何となく悪いことが起こる気がします。だから必要以上に頼るのも止めてください」
「お前の言いたいことは何となく分かる。……本当に主神の思し召しかもしれんな。よし。ケインの友人として普通に接しよう」
「はい!」
「あとはお前の仮結婚の件だけだな。こちらも何とかなる気がしてきた……深夜に呼んですまなかったな。明日も早い。もう寝なさい」
「いえ、お休みなさい父上」
「お休み」




