クラーケン襲来 3
クラーケンはこちらに触手を伸ばしてきた。
だが、甘い!!
俺の安心安全シールドは完璧である。触手はシールドに阻まれてそれ以上伸ばせない。
「エイダン、とりあえず4人を安全な場所に!」
エイダン一人ならクラーケンに捕まらず、避難所に行けるはず。こくりと頷くと姿が見えなくなった。
「スバル、持ちそうか?」
ハイドが尋ねる。
「まだ、しばらくは」
どのくらいで、騎士団と護衛が来てくれるかが分からない。今のところは余裕だが……。
ドン
大きな衝撃がシールドにかかる。
クラーケンが触手ではなく直接攻撃してきたようである。シールドは持つには持つが、視覚的ダメージが大きい。吸盤がシールド全体に張り付いており、正直気持ちわるい。
「「「「うわーん」」」」
子どもたちも泣き叫び続けるし、なかなかカオスである。だが、まだ魔力は持ちそうだ。早く来てくれ!!
「……帰った」
どうやってシールドをくぐり抜けているのかは分からないがエイダンが戻ってくる。とりあえず子どもたちの避難が優先だな。
「また、行ってくれるか?」
エイダンはこくりと頷くと、4人を抱えまた姿が見えなくなった。
クラーケンはシールドに張り付いてはいるが、一時攻撃の動きは止まっている。でも、シールドは緩められないからな……。
シールドごと皆で移動するか?
いや、それだと避難所にクラーケンを連れて行くことになるし……。いろいろ考えてみるがなかなか良い案が浮かばない。時間だけは過ぎていくのに。
「……帰った」
再びエイダンが戻ってくる。子どもたちはあと5人。一度に連れて行ってもらう方法は……。ベビーベッド。でも万が一攻撃を受けたときに目標になりやすいか。やっぱり抱えるほうがよさそうだけど。周りを見渡すが目星いものはない。ふと、大人の方1人がスリングをしているのに気づく。
あれだ!!
「そのスリング、エイダンに貸してもらえますか?」
「スリング?」
そっかこちらだと違う名前なのかも、くくる紐?
「抱っこの紐です!」
「これね!分かったわ。そのまま括りますね」
赤ちゃんごとエイダンに括り付けてくれる。
エイダンはあと2人ずつ両手に抱えると、またすぐに姿を消した。
これで子どもの避難は完了。人数が減ったのでシールドを少し小さくする。魔力はできるだけ節約しないとな。
相変わらず特に何もしてこなかったクラーケンか再び活性化したようで、バシバシと体ごとシールドを潰しにくる。
……これはやばいかも。
少しずつ、魔力がなくなっていくのがわかる。シールドが揺らぎ始める。
「「スバル!!」」
エイダンとハイドもシールドを張ってくれる。
でめ、長くはもたない。
騎士団の姿はまだ見えないし、エイダンもまだ帰って来ない。積んだなと思いながら何かできないかと考える。
海、水、効くもの……。
なんか思いつかないか、俺!!
ぺぺの能力は水の中でどこまでできるかは未知数だし。スカイは戦闘タイプじゃないし、グリンは……。グリン!!いけるかも!!
「グリン、ここからできるだけ遠く離れたところまでクラーケンを引きつけて最大威力の電撃で攻撃できるか?」
「キャン!!」
やる気満々である。
「グリン頼む!危なくなったら戻ってこい!」
「キャン」
人吠えすると、グリンも巨大化しシールドの外に出る。
「キャン、キャン」
グリンが叫びクラーケンを引きつけると猛ダッシュで旅館のある方へ走り出した。案の定クラーケンもそれについて行く。
……上手くいきますように。
その間にシールドを解除し、俺たちも避難所に走る。
「今のうちに!!」
目の前に見えていただけあって、すぐに到着した。エイダンも姿を見せる。大人3人に中に入ってもらい、念の為入口で待機する。
遠くで何かが光った。
おそらくグリンだ。グリンが無事でありますように……。
しばらく待機していると騎士団と思われる人達が帰ってきた。その前を走るのはグリン!?
「グリン!!」
「キャン!」
グリンは俺の腕に飛び込んでくる。
「倒したのか?」
「キャン!」
元気よく吠える。見たところ怪我もなさそうである。
「ケイン!」
声とともにケインのお父さんが現れる。
「父上!!」
「いや、この子はすごいな。騎士団とともにクラーケンの討伐にあたっていたのだが、隙をついて逃げられてしまってな。どこに逃げたか探していたら町の外れが光って行ってみると、黒焦げのクラーケンとこの子がいたんだ。確かスバルくんのテイムモンスターだと気づいて一緒に帰ってきたんだ」
黒焦げ!?水の中だとやはり雷撃の威力が増すのかも。とにかく倒せて良かった。
「グリンお前すごいな!」
「ありがとうグリン」
グリンも皆に褒められて嬉しそうである。
「そういやスバル、何でグリンを遠くに行かしたんだ。その場で倒せば良かったのに」
ハイドが尋ねてくる。
「本で雷は水の中で威力を増すと読んだことがあったんだ。そこに見える範囲は影響を受けると書いてあったから念の為にな」
前世のテレビの知識ですが。
皆が感電死したらシャレにならないからな。
「なるほど、ま、皆無事で良かった」




