表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第ニ章 新たな世界へ
133/173

人魚族の街シェル 2(悪魔病)


  婚約者さんとケインのお祖父様はともにここから1日ほど離れた、婚約者さんの領地にいるらしい。またも快速海中タクシーのお世話になるとのことだった。


 俺たちと、ケインのお父さんで行くことになり、お父さんの支度が整うまで部屋でのんびりしていると先程までの朗らかな様子とは表情を一変させたケインのお母さんが部屋に飛び込んできた。


「あなた!!」

 部屋を見回して、ケインのお父さんを探している。

「母上どうされたんですか?」

「末っ子のミーヤの様子がおかしいの!!歯茎から血を流して、内出血もいくつかできていて……あの悪魔病の症状に似ているの!!」

「悪魔病!!」

 名前からしてかなり怖い病気のようだ。

 

「あの、もしかしたら何かお役に立てるかもしれないので、一緒に行っても良いですか?」

 いざとなればスカイに頼んでゴールデンオレンジをもらおう。でも、とりあえず様子をみてみないとな。

 

「母上、スバルの領地では身体に良い果物が採れるんです。一緒に行ってもらって損はないと思います」

「そうなのね!スバルちゃん、一緒に来てもらえる?」

「はい!スカイも来れるか?」

「キュウ!」

 スカイは準備万端のようである。既にケインのお母さんの元に行っている。

「お医者様の手配もしたからもうすぐ来られると思うわ。ケインちゃん悪いけれどダミアンを探してこのことを伝えてくれる?」

「分かりました」

「では、スバルちゃん。こちらに一緒に来てちょうだい!!」

 俺とスカイはケインのお母さんについて足早に部屋を出て、末っ子のミーヤちゃんの元に走った。


 悪魔病……どんな病気だろう。


 ケインのお母さんが案内してくれた部屋には、まだ1歳から2歳くらいの女の子がベッドに横たわっていた。顔色は悪く、少し痩せているようだ。確かに歯茎から血が出ている。大泣きしたのか、ぐすぐす言いながら涙を流している。


「いちゃい……」

「大丈夫よ。今お医者様が来られますからね」

 ケインのお母さんは女の子の目尻の涙を拭っている。

「マイヤ、ミーヤは大丈夫か!?」

 ケインのお父さんも部屋へ飛び込んできた。そしてミーヤちゃんの小さな手を握る。


 緊迫した空気が流れ、ぐすぐす泣くミーヤちゃんの声だけが響いている。

 

「お医者様を連れてまいりました」

 慌てた様子でメイドさんが部屋にお医者様を連れて入ってきた。


「ふむ。少し診てみましょう。サーチ」

 こちらの世界のお医者様は魔法で身体を調べて、身体の異常を見つけている。そこから、既存の病気の知識と照らし合わせて、診察しているらしい。怪我はポーションで治るためか、病気に関しては前世の方が進んでおり、あまり治療薬が見つかってない病気が多いと聞いた。


「ふむ。確かに、歯茎、右足、左腕に内出血があるようですね。……これは……恐らく悪魔病でしょう……」

「そんな!!」

「先生、何かの間違いでは……」

「念のためお聞きしますが、この子の年齢は?」

「1歳です」

「授乳は?」

「2ヶ月ほど前から止めて、今は茹でた魚を食べさせております」

「その他の食事は?」

「この子が好き嫌いが激しくて、基本的に魚しか受け付けないんです」

「やはり……人魚族の乳児に多いケースですね……。恐らく悪魔病で間違いないかと。授乳を止めてから数ヶ月後、魚食しか受け付けない乳児がかかる病気です。……残念ながら治療薬は、まだ見つかっておりません」


 魚しか食べてない?

 それって、前世の漫画で読んだ船乗りの病気に似てないか。確か……壊血病。ビタミンCの不足から内出血を起こす病気で最後は死にいたるとか……。違うかもしれないけれど、可能性はあるかも……。


「先生!!なんとかならないんですか!ミーヤはまだ1歳なのに……」

「……すみません。ただ、長年医師をしている中でこの病の原因が魚食にあるのではないかとは思っているのですが……」

 先生も恐らく俺と同意見。ただ、何が効くか知らないだけだな。俺はさらに詳しいことを先生に聞いてみる。


「先生、他にこの病気にかかる人の特徴はありますか?」

「授乳を止めた乳児に多いこと、特に魚しか食べない乳児の発症率が高いことが特徴です」

 だったら魚以外を食べたらよくなるんじゃ……。

 

「先生、今から魚以外の食べ物を食べたら治るんじゃないですか?」

「どの子にも共通するのですが、魚以外は受け付けないのです。人魚族の祖先の血の影響かもしれませんが……」

 なるほど。難しいな。

 

「先生飲み物は?」

「やったことがないので分かりません。もしかしたら、食べ物でなければ受けつけるかもしれませんが……何か心当たりのある飲み物があるんですか?」

 

「あの、実は地上で似た症状の病気を本で読んだことがあるんです。その病気の名前は壊血病。船乗りに多い病気で、オレンジなどの柑橘類を食べるとよくなると書いていました」

 

 柑橘類ならスカイが大量に所持しているからな。

 ミーヤちゃんの病気が壊血病でありますように。


 


 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ