初めてのゲット10(初級訓練3)
「10……9……8……7……6……5……4……3……2……1」
「よし、今だ!!」
ハイドとケイン、2人のスキルで自分たちの周りにハリケーンを作る。
そう、2つ目の作戦は敵を近づけるな作戦だ。
ゴォーゴォーゴォー
水を巻き上げ、大きく、そして素早い何重もの渦を作る。渦は上へ上へと伸び、どんどん勢いを増していく。
作戦は今のところ上手くいき、教官の姿はまだ見えない。
「あと1分、もう少し頑張ってくれ!」
「おう!まだ余裕だぜ、ケインが水のスキルで回してくれてるから俺の力は半分くらいしか使ってないしな」
「僕も、水中なのでいつもより楽にスキルが使えてます、あと1分なら大丈夫です!」
よし!いける!あと30秒
……いっけー!!!!
ファン
「何だ、今の音は?」
と思ったら、ハリケーンが無くなり、目の前にロキ教官が立っていた。そして3人の肩を叩かれる。
「……惜しかったな、スキルは俺には効かないって、言ってなかったっけ?」
そうだ!この人、無効化のスキル持ちだった。
「教官、無効化はずるいです」
「何しても無駄じゃん」
「あと30秒だったのに……」
「残念だったな、でも、お前たちが今回のラストだ。よく健闘したほうだぞ」
ラスト!と言うことは、他はみんな見つかって捕まったんだな。
「早いやつ何て、開始1分で見つけたからな。……何で穴掘って隠れただけで、見つからないと思うのか不思議でならない。普通、カモフラージュぐらいするだろう」
三下!?
カモフラージュ無しなら速攻見つかるにきまってるだろう。やっぱり、ヤバい奴らだな。
「それなら30秒見逃してください」
「それは無理、ひいきはしない主義なので」
「あ~、グランド20周!!」
朝も走ったのに……今日は、厄日だな。
「教官、よく水の中って分かりましたね」
「メンバーに人魚族のケインがいたからな。当たりをつけたらビンゴだったわけ」
「でも教官、魔法薬は?」
「いついかなる場所にモンスターが出るか分からないからな。万が一に備えて魔法薬を持ち歩いているのは騎士団の常識だ」
えぇーそんな常識は習っていない。
「ま、しゃあないか」
「俺たちにしては良く出来たほうだしな」
「はい、楽しかったです」
ケインが満面の笑みを浮かべる。
「そうだな」
うん。確かに楽しかった。
「また、俺たちでグループ組もうぜ」
「はい、是非!」
今回、ぶっちゃけ俺は、何もしてない。
「足手まといだけど、俺でも良かったら……」
「何言ってんだよ!スバルが考えた作戦がなかったら速攻で見つかってたぜ」
「僕もそう思います!また是非よろしくお願いします」
……お前たち。
友情って良いな。
「よし!今日から俺たちは一緒のグループだ!!」
「おう!」
「はい!」
3人でハイタッチする。
友情バンザイ!!
「盛り上がってるとこ、悪いけど、早くグランド行かないと、日が暮れるぞ。他の見習いたちはもう走ってるし」
そうだ!20周!
「悪い、今日母ちゃんから早く帰って来いって言われてるんだ」
そう言って、俺たちを置いてハイドが先に駆け出していく。
「ケイン様、そろそろお時間です」
いつの間にか、隣に初老の執事らしき人が立っていた。
うわっ。いつの間に。
「爺、もうそんな時間か」
「はい。ロキ教官、大変申し訳ありませんが、最初にお伝えした通り、本日はこれで失礼させていただきます」
「おう、事情は聞いてる」
「スバルくん、ごめんね。お先に失礼します」
2人は足早に立ち去った。
えっ、えっ。
これってもしかして。
「スバル、本当に急がないと、夜になるぞ」
もしかしなくとも、俺だけ取り残されてる!?
「……友情って、何だろう」
その日俺は1人グラウンドに取り残された。