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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第ニ章 新たな世界へ
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ケインと執事さん 2 (結婚問題)


 俺が促すと、ケインが重い口を開いた。

 

「実は……僕には婚約者がいるんですけど、その婚約者の父親が不慮の事故で亡くなってしまったんです」


 ケインに婚約者!?そりゃあ、伯爵家次男だからいてもおかしくないけど……。まごうことなき政略結婚だよな。


「そりゃあ、お悔やみのために帰る方が良いんじゃないか」 

「ああ、婚約者なら気落ちしている彼女を慰めないと……」

 俺とハイドにはいないからよく分からないけど、なんとなく政略結婚とはいえ、結ばれた縁は大切にして欲しい。


 ……ハイドはいないよね!?


 ハイドを見て口パクすると、ハイドも大きく頷いた。

 ……良かった。俺だけ取り残されたんじゃなくて。

 ちょっとホッとする。

 今日はエイダンもそんな話だったからな。


「……慰めるくらいで済むならすぐにでも帰るんですが……」

「えっ?慰めること以外になんかあるの?」

「結婚してほしいって」

 ケインが暗い表情でボソリと言う。

 

「えっ?」

 聞き間違えだろうか?

「今すぐ結婚してほしいって手紙が届いたんです!!」

「「ええ――――――!!」」


「人魚族って、いくつでも結婚できるのか?」

「そこからは私がお話ししましょう」

 今まで無言で控えていた執事さんが言葉を引き継ぐ。


「本来結婚ができるのは、成人してから……つまり18歳になってからです。ですが、例外がありまして、貴族で事情がある場合は仮結婚ができるようになっているんです」

「仮結婚?」

「はい。今回のように当主が早くに亡くなってしまい、次期当主がまだ年若い場合、過去に親族が家を乗っ取り好き勝手して国が荒れた時代があったようなんです」

 それは何となく分かる。前世でも小説で読んだぞ。いわゆるシンデレラの救いが無いバージョンだな。


「そこで国が考えた政策が仮結婚です。当主が亡くなる前に婚約が結ばれていた場合、仮結婚を行い、その結婚相手の親族が成人するまで後見人として、領地を治めるのを手伝う方法です」

 ふむ。将来自分の子どもが治める領地だから、無茶せずに治めるだろうってことだな。


「仮結婚してあげたらいいんじゃないか?婚約者が困ってるんだろう?」

 ハイドが口を挟む。俺もその意見に同感だ。

「結婚って言っても、領地は成人するまでご両親がみてくれるんだろ?だったら今と同じ生活ができるんじゃ……」

「結婚したくないんです!!」

 珍しく、ケインが語気強く俺の言葉を遮った。


「……お、おう」

 どうやら婚約そのものに問題がありそうだな。


「なんで結婚したくないんだ?」

 ハイドがストレートにズバッと聞く。


「……もともと婚約自体、祖父同士が仲が良かった関係で結ばれたんです。ですので、まず自分と相手との身分差がかなりあるんです」

「身分差って……どのくらい?」

「家は伯爵家ですが、相手は侯爵家です。人魚族の中でも王族を除けば一、二位を争う地位の高さになります」

 それは……いわゆる玉の輿というやつでは……。

「……僕は今でこそこんなにのびのび過ごしていますが、人魚族の国では家以外では結構いじめられていたんです。やはり、人族の血筋が出た僕には純血の人魚族の人たちのようにはできないことがたくさんあって……」

 いや。確かに1人で陸で暮らしていることからも、生きづらさはあったんだろうな。


「もし彼女と結婚すると、またあの人魚族の中でやっいかなければなりません。しかも上位の立場で。正直上手くやっていける自信が無いんです」

 

 もう少し成長して、ケイン自身自分に自信が持てるようになったらまた、気持ちは変わるかもしれないけれど、今のケインでは難しいのかもしれない。


「じゃあ、なんで婚約解消しなかったんだ?」

 また、ハイドがぶっ込んでくる。

 

「何度も両親には話をしたんです。……両親は解消に前向きだったんですが、祖父が強固に反対して……。亡くなった戦友との約束だから守らなければならないと、どうにもそこから話が進まなかったんです」

 ラスボスの爺ちゃんが落ちないのか……なかなか難しいな。


「それに……これはデリケートな話なのでここだけにしてください。……実は僕、どうしても彼女が受け入れられないんです」

「……それは、好みの性格やタイプじゃないってことか?」

 政略結婚の婚約者なら、性格や見た目は選べないもんな。

「いえ、彼女自身は大変賢く、しかも思いやりのある素敵な女性です。外見もかなりの美人さんです。でも……僕にはどうしても受け入れられなくて……」

 

「なんでだ?他に好きな子でもいるのか」

 いや、ハイド。本当にぐいぐい聞くね。でも話は進むからありがたい。


「生理的に無理なんです!!」

 ……生理的、それはよっぽどだけどなんで?


 執事さんがケインの言葉を補足する。


「ケイン様は、先祖返りでして人族と、人魚族の中でもカツオの魚人の血筋が強く出ているんです」

「人魚族にも獣人族のように、個別の種族があるんですね」

「はい、ルーツのようなものではっきり出る方と、全く出ない方がいらっしゃいますが。その……婚約者の女性も血筋が強く出られていまして、サメの血筋なんです」

 サメ……。つまりカツオは捕食される関係ということか。


「……だから、生理的に無理なのか」


 ケインはこくりと頷く。

 

 これはまた、難しい問題だな。


  

 


 

 

 

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