金色の価値
「エイダン様、私が強くなったら一緒に冒険してくれますか?」
エイダンは困ったように俺を見る。
ギルド長、エイダンを睨まないで!!
俺はエイダンにこくりと頷いた。
「……考えておく」
エイダン、うまい!!返事が先延ばしにできたぞ。
「分かりました!私頑張ります。それでは失礼しますね。……さっそく体力作りから始めないと」
クレアちゃんは前向きに捉えて張り切っている。
……なんかやっぱりギルド長に似てるかも。
クレアちゃんがいなくなった後のギルド長室は微妙な空気が流れていた。
「クレアを助けてくれたことには礼を言う。だが、クレアはやらんぞ!!クレアが欲しければ俺を倒してからにしろ!」
ギルド長が熱く叫ぶ。
「クレアちゃんは物ではありません。ギルド長の好き勝手はできないかと」
オリビアさんが冷静に突っ込む。
エイダンは自分のことと分かっていないため反応無し。
……なんだ、このカオスは。
とりあえず、良かった……んだよな。
とにかく話を変えなければ……そうだ!桃と、オレンジだ!!
「ギルド長、また鑑定して欲しい物があるんですが」
「おう。分かってる。クレアがもらった金色のオレンジだろう?」
「はい。後、金色の桃もお願いします」
「桃もあるのか!?オリビア、頼む」
「かしこまりました」
オリビアさんに金色の桃とオレンジを渡す。
金色桃 効果 どんな傷でも治す 上手くいけば欠損も治るかも(効果 上級ポーションより上級) 大変美味
価値 言い値
ゴールデンオレンジ 効果 どんな病でも治す 死んでなければ体力も回復するかも 大変美味 価値 言い値
「……なんだこの凄まじい果物は……こんなの市場に出回ってみろ。取り合いで死人が出るぞ。欲しいやつがわんさかいるからな……」
「はい。間違いなくそうなります。しかも出どころを探られて下手をするとスカイちゃんが危険にさらされる恐れもあります」
「……つまり」
「勿体ないが、スバルが持っておけ。お前が本当に渡しても大丈夫だと思うヤツだけに渡すんだ」
……ですよね。
「万が一人に聞かれてもそんな物は無いと言い張れ。クレアにも決して他言しないように念押ししておく」
……ヤバい。ギランさんにあげちゃったぞ。でもま、ギランさんは悪用しないから大丈夫か。
でもなんだか勿体ないな。せっかく癒せる物があるのなら、どうにか活用できたら良いのに……。
「スバル様、どうにか活用できないかと考えていらっしゃいますか?」
オリビアさんに見抜かれる。
「おやめしたほうがよろしいかと。……クレア様と同じ病の子供、別の不治の病の子供、世の中にはおそらく何万人といらっしゃいます。その命に順序がつけられますか?」
確かに。俺は神様にはなれないから、全員を癒やすことも順序をつけることもできない。
「少し意地悪なことを申しましたが、スバル様。この世の中は不平等です。全てを平等になどできませんし、そんな世の中きっと面白くありません。……ですから、不平等でよろしいのではないでしょうか。スバル様が使いたいと考えた時に使うようになされたら」
「俺もそう思うぞ。みんなを癒やそうなんて、おこがましい。お前が治したいヤツがいたら治せばいいんだ」
……そうか。そうだよな。
これから出会う中で俺が使いたいと思った時に使う。シンプルイズザベストだな。
「……ありがとうございます。とりあえず金色の桃とオレンジは封印しておきます。ただ、実はここに来る前にギランさんにあげてしまって」
「ブロンズランクのギランか?……そうか、お前と一緒に捕まっていたんだっけ」
「はい、大変お世話になったのでお礼代わりに渡しました」
「……良いんじゃないか。お前が選んだんだろう。俺から見てもあいつは信用できる。なんなら俺からも一言言っておいてやるよ」
「ありがとうございます」
よし。とりあえず金色の桃とオレンジの件は片付いたな。
「……あと、お前が捕また紅死教の件、なんだかキナ臭いぞ。以前にもあった可能性が出てきたらしい。ま、気をつけろよ」
紅死教か。かかわらなくて良いならそれにこしたことはないけど。
「それからハイド様とケイン様はおそらく夕方には依頼を終えて戻られると思います。それまでごゆっくりお過ごしください」
俺はオリビアさんとともにギルド長室を後にした。
「あ、猫探しの依頼。達成しました。報酬をお願いします」
忘れないうちにもらっておこう。
「……よく達成できましたね。はい、確かに。こちらが報酬になります」
お金をアイテム袋中に入れる。
さ、2人が戻るまでギルドの食堂でのんびりしよう。
とりあえず、生還祝いだな。




