真相究明 2
「速い速い――――怖い――――!!」
凄まじい速度で馬車が道を疾走する。
いや、これ馬は大丈夫なのか?
「……大丈夫。終わったら馬に角砂糖やる」
御者席からエイダンが答える。
いや、心を読まないで。
スカイとぺぺとグリンは揺れる馬車内で跳ねながら楽しそうにしている。
姉とフェレナも余裕そう……なぜだ。
「何言ってんのよ、こんな速さ余裕よ、余裕」
「はい、急がないと間に合いませんし」
「そうだけど……うぇ……」
俺は胃の中の物が出そうになるのをなんとか押し留める。キラキラは避けたい。
「……エイダン、まだか?」
エイダンは隣のリーダー格の男に確認する。リーダー格の男は、ぼんやりしているがきちんと指示を出せているようだ。
「早くしろ!後少しで着くが間に合わなかったらただじゃおかないぞ!!」
エイダンを部下と思っているのか偉そうな態度である。ま、バレない方が良いけど。催眠効果抜群だな。
馬車はどうやら、海を目指しているようだ。潮の香りが漂ってくる。
「……出る」
俺の限界が近い。
「中で出したら許さないわよ」
「そうでなくても今日はスバル様がいろいろやらかしているんですから」
2人の圧がかかる。
出る物もひっこ……まない。出る――!!
なんとか馬車の入り口を開けると俺は外に向かってリバースした。
うぇっ。
「キュウ」
スカイが心配して桃とオレンジをくれる。
スカイだけが俺の癒しだ。
桃とオレンジを食べると、胃がスッキリした。ありがたい!!
そうこうしているうちに、馬車が止まった。
外を見ると、小型船が一隻停まっている。
俺は小声でエイダンとぺぺに指示を出す。
「エイダン、ぺぺ、2人は船の制圧を頼む」
2人なら取りこぼし無く、敵を無力化してくれるはず。
エイダンはこちらを振り向きこくりと頷く。ぺぺも手を挙げているのでいけそうだな。
「後のメンバーで、地上にいる敵を頼む」
皆がこくりと頷く。
「スカイは戦いが終わるまで馬車の中で待機で」
「キュウ!」
簡単な打ち合わせを済ませると、男がこちらに近づいて来た。
「ギリギリ間に合ったな、ちょうど今から載せるところだ」
「すまない……なぜか頭が痛くてな、おい、早く降りろ!!」
俺達は素直に馬車から降りた。
周りを見回すと、さびれた港町のようだった。一隻の小型船が停まっており、その前にたくさんの人が縄で繋がれて待機している。
「おい、数が全然足りないぞ!どういうことだ!!」
「いや、おかしいな……確かに載せたはずだが……」
リーダー格の男は頭をひねっている。
「どうするんだ!もう出航するぞ!!数が足りないと、召喚できない!!今からさらいにいく時間はないし……仕方がない本国で集めるか……」
「すまない……不足分は俺が本国でなんとかする」
「そうしろ!じゃあ急いで全員を積み込むぞ。そいつらを縄でくくれ!!」
リーダー格の男に指示されて皆が集まっているところまで歩かされる。ちょうど人質皆が集まってくれていてラッキーである。
「……もう、いいかな。皆やっちゃって!!シールド!!」
俺は捕まった人全員がすっぽりおさまるほどのシールドを張った。魔法が使えるようになってから毎晩鍛えた俺のシールド!俺の安心安全な暮らしのためにその精度を高めてきたから、並大抵の攻撃は効果がないことは実証済みだ。なんたって姉とフェレナの本気の攻撃もはじくようになったからな。
エイダンとぺぺが飛んで船に乗り込む。
姉とフェレナは隠し持っていたアイテム袋から、槍と剣を取り出して構えた。
「敵襲だ!!」
もちろん相手に気づかれて叫ばれるが、遅いな。
姉が槍の柄の部分で一突きし、1人無力化。
「弱い弱い!!次!」
向かってくる敵をどんどん無力化してくいく。
「姉さん、後!!」
「くらえ、ファイヤーボール!!」
「遅いのよ!!」
ファイヤーボールを飛んで避けるとそのまま上から敵を蹴り倒す。そして槍の柄をお腹に入れる。
……うわぁ。あれは痛いやつだ。
「くそぅ、これでもくらえ!!」
フェレナの前には剣を持った3人が立ちふさがる。そしてフェレナめがけて剣で襲いかかる。
フェレナは3人の前に進み剣を一閃させる。
「……峰打ちです」
その言葉が発せられると同時に3人の敵が倒れた。
グリンは巨大化し、走り周りながら雷魔法でどんどん敵を感電させ倒していく。
圧倒的である。
敵をどんどん蹂躙し、後は立っているのが1人だけになった。
華美な服装からして、他と違うから、おそらく今回の親玉だろう。
「何者だ!なぜここが分かった!!」
いや、すみません。俺が捕まっただけです。
「チームセブンよ!!私の領地でよくも好き勝手してくれたわね」
いや、姉さんとフェレナは今チームセブンお休み中じゃあ……。
「はい!こんなにたくさんの人を誘拐するなんて許せません!!他の誰が気づかなくても、私たちチームセブンは見逃しません!!」
いや、フェレナも……以下略。
「チームセブンか……覚えておくぞ!!ここはいったん預けておく」
いやいや、大した者じゃないので覚えないで――!!
そう言いうと男は何かを地面に叩きつける。と、同時に目もくらむ程の光が辺りを覆う。
「閃光弾ね!!」
姉が目を腕で覆いながら叫ぶ。
うわぁ、眩しい!!!
光が消えて目を開けると、そこにはもう誰もいなかった。
「しまった!!逃げられたわ!!」