初めてのゲット9(初級訓練2)
「よし。10分たったな……今から、隠れる時間を10分やる。30分俺から逃げ切れたら、勝ち。捕まったらグランド20周な。あと、森の奥にはモンスターも出るから、奥に行き過ぎるなよ。何かあっても自己責任だからな、じゃあ、始めるぞ……スタート」
俺たちは一斉に森の奥へ走り出した。
ロキ教官が言っていたように奥に進めば、強いモンスターに遭遇する可能性がある。かと言ってあまり、手前すぎると、モンスターに遭わないかわりにすぐに教官に見つかる可能性が高まる。
どのチームもあまり手前に隠れる気はないのかどんどん奥へ進んでいく。俺たちのチームは俺と人魚族のケインが足を引っ張り、やはりどのチームよりも遅れをとっていた。 ※だいたい は無くても通じるかと。又は殆どのチームに変えるか。
「やっぱりビリか。せっかくなら、俺たちの隠れ蓑にでもなれよ」
「そうそう、さっさと見つかっちまえ」
三下チームがなぜか奥から俺たちの方へ戻って来て、あおってくるが、無視する。
「な、無視してんじゃねーよ」
「そうだ、そうだ」
いやいや、おたくら隠れなくて大丈夫?
「ふん!俺たちが何でこんな手前にいるかって?教えてやろう」
聞いてない、聞いてない。
「俺たちは、今からスキルで穴を掘り、そこに隠れるんだ!あまり遠くに行くと、穴を掘る時間が無くなるからな」
なるほど穴か、確かに時間との勝負だな。
それにどれだけ周囲に偽装できるかか……
「と、お前たちに構ってる暇はない。さ、この辺に穴を掘るぞ」
いやいや、それは俺たちのセリフでは……。
ま、検討を祈ろう。
……きっとすぐに見つかると思うけど。
俺たちは三下と別れ、まだ奥へと進む。
「よし、確かここから右にあったはず」
俺にとって、この森は庭も同然。
奥から右へと進路をかえて、どんどん走る。
「……確かに、水の匂いがします」
「もうちょっと進んでいけば……あった!!」
視界が開け、目の前にこじんまりした池があった。
「じゃあ、作戦を開始する」
「ケイン、例のものをくれるか?」
「はい!これです」
ケインの手のひらには、小さな水色の薬が2個乗っている。
「じゃあ、さっそく……」
俺はそのうち1つを口に入れた。
「……変化は分からないな、ま、入ってみれば分かるか?」
「行こう!」
「はい、では行きましょう」
俺たちは、水の中へと足を進めた。
「……すごいな、初めて水の中に入ったけどこんな世界が広がっているのか」
「すげー、魚とかが泳いでる姿が見える!あっ、あれは池ガニだ!食べると美味しいんだぜ」
俺とハイドにとっては初めて見る景色が目の前に広がっていた。
今回ケインにもらったのは、人族が水の中に入れる魔法薬である。原理は分からないが、食べると自分の体の周りに薄い膜が張られ、水の中でも地上と変わらない生活ができる。効果は魔法薬のランクによって異なるらしいが、ケインが持っていたのは一番低いランク、1日効果が持つ薬である。
「水の中に隠れるとは……考えたなスバル!」
「ケインが薬を持っていてくれて助かったよ」
「普段から万が一、誰かを連れて家に行くことがあるんで、常備しているんです。お役に立てて良かったです」
そう!俺の作戦は人を隠すなら水の中作戦である。
多分教官も、まずは奥から探すだろうし、以外と手前が盲点だったりしないかなーと言うことで思いついた作戦だ。
……というか、俺たち3人のスキルで、できることが思いつかなかったという理由もあるが。
「もうすぐ10分が来ます」
「それじゃあできるだけ波紋ができないように、今からは座ってしゃべらずにいるということで」
「おう!」
「ケイン、悪いけど索敵スキルで、強敵が来たら教えてくれ」
「分かりました」
今からは無言タイムである。
ま、水の中の景色を楽しもう。
……25分が経過した。
読み通り、教官の姿はまだない。
このまま、来ませんように……
「スバルさん、強い反応が近づいてきます。おそらくあと2分ほどで、こちらに到着します」
「バレてると思うか?」
「はい、教官は勘が鋭いですから……」
「じゃあ、次は作戦2を実行すると言うことで……」
そう!今回は珍しくもう一つ作戦を考えている。
「おう!タイミングはどうする?」
「ケイン、ここに到着する10秒前まで数えられるか?」
「だいたいになりますが、やってみます!」
上手くいくかは分からないが、こういうのは当たって砕けろだよな!
……砕けたくはないけど。
やるしかない!さ、やるぞー!!
……俺は何もしないけど。




