真相究明 1
とりあえず一段落し、皆でその場に腰を下ろし休憩する。さすがにもう深夜。いろいろあったせいか体力も気力も限界に近い。スカイたちには子どもたちの側にいるようにお願いした。ただ、ほとんどの子はうつらうつら夢の世界にいざなわれている。そりゃあ疲れたよな。
なぜかエイダンが毛布を大量に持っており、眠った子たちにかけている。いや、リュックのときも思ったけどエイダン意外とオカン気質なのかも。本当に細々よく気がつく。反面自分の感情には無頓着だけど。
そんな中スカイが1人の男の子を連れて来た。俺と同じくらいの歳の子だが確か冒険者だったはず。助かったのになぜか表情が冴えない。
「……なぁ、俺の友だちも助けてほしい」
「どういうことだ?」
正直厄介ごとだろうけど、乗りかかった船である。俺はその子に詳しく話を聞いてみた。
「俺と友だちは初心者の森の少し奥で薬草採取していたんだ。そしたら二人とも変な薬品かがされて部屋に閉じ込められたんだけど、隠れ場所を移動するときに人数が多いからって別の場所に移動させられたんだ」
やはり別の場所で捕まっている子たちもいるんだな。
「……リーダー格に聞いてみるか。正直に言ってくれるかな……」
「難しいと思うぞ。場所を移動したり、これだけの人数を集めたりと結構大がかりな組織だと思うから口を割らないんじゃないか」
ですよね。拷問なんてできないしどうしたら……。
「……黒魔法で催眠かけられる」
エイダンがぽつりと呟く。催眠か……。
「子どもたちを無事に捕まえたと錯覚させて、案内してもらうか?」
おそらく今日一か所に集められる予定のようだから、そこに他の子もいる可能性が高い。
エイダンはこくりと頷く。
できるのか……ただ……。
「……何人いるかだよな」
そう、どれくらいの規模か分からないのに闇雲に動いて子どもたちを危険な目に合わせては元も子もない。
「早く、辺境伯家の援軍が来てくれると良いんだけど……」
あまり遅すぎると移動されてしまう。
「来たわよ!」
「うわぁ」
後ろから急に声をかけられてビビってしまう。
振り返ると見慣れた2人が立っていた。
「姉さん、フェレナ」
待ってました!!
「スバル、捕まるなんて情けないわね。訓練量増やす必要があるんじゃないの?」
いやいや、お姉様。ここは弟の無事を喜ぶ場面では……。
「そうですよ!おまけにこんな深夜になるなんて!夜ふかしは美容の敵ですよ」
いやいや、フェレナ。美容に気を使ってるところ見たことないから。
このまま俺が責められる流れは良くないぞ……。
「えっと。そうだ!姉さん、フェレナ、実はここ以外に子どもが他にも捕まってるらしくて……」
「なんですって、それを早く言いなさい」
「辺境伯の地での狼藉、許せません」
「それで……」
俺は姉とフェレナに簡単に説明する。
「なるほど、エイダンの催眠で案内させるのね。その馬車に私たちが乗っていくと」
「はい、それで他の辺境伯の皆は?」
姉とフェレナ以外の姿が見えない。
「遅いから置いてきたわ、あと二十分後くらいには着くんじゃない?」
「はい、上級騎士なはずですが……やはり、皆訓練量が足りないようです」
いやいやいや。あなたたち二人が規格外なだけです。
この流れ、上級騎士達もきっと帰ってから猛特訓だな……。ご愁傷様です。
「どうしようか……あと二十分待つか……」
「何言ってんの!そうでなくても時間が経ってるんでしょう?」
「はい!一刻も早く助けに行くべきです!」
2人の圧に気圧される。いや、その通りなんだけど……
「姉さんとフェレナだけで大丈夫?人数も分からないし……」
激強の2人と言えども相手も強ければ数がいないとどうにもならない
「何言ってんの。私、フェレナ、エイダン、ぺぺ、グリン、スカイ、それにスバル。これだけいればなんとかなるわよ」
「いや、俺は捕まって疲れてるし……戦闘力はないし、ここで待ってても……」
俺はできたら安心安全な場所で待機が……。
「領民が助けを求めてるのよ?ここで行かなかったらあたしがボコボコにしたげるわ」
姉の目が座っている。
ひ――!!どっちも嫌だけどボコボコの方がもっと嫌だ――!!
「……行きます」
「最初からそう言いなさい」
「……出発できる」
いつの間にか、エイダンがリーダーとともに御者の席に座って馬の手綱を持っている。手綱も切れていたはずなのにいつの間に直したんだ……?
「行くわよ!」
皆で馬車に乗り込む。
「ギランさん、すみませんが後のことを頼みます。もう少ししたら辺境伯の騎士が到着するはずなんで」
俺はギランさんに子どもたちをお願いする。
「分かった!後のことは任せておけ!……他の捕まってる奴らを頼む!!」
「できるだけのことはしてみます」
「全て終わったらまた会おう!」
「はい!」
「……出発」
エイダンの合図とともに馬車が夜道を走り出した。