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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第ニ章 新たな世界へ
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囚われの俺 1


 というわけで、気がつくと囚われの身になっていた辺境伯家次男スバル=クリスチャン=バード9歳です。


 えっ、なんで名前言ってるのかって。そりゃあ、現実逃避に決まってるでしょう。


 シールドを張れるかもと魔法を使おうとしたらなぜか発動せず。後で聞くと魔法が使えないように部屋に術式が施されているらしい。


 昼から何も食べていないためお腹はぐーぐー鳴るし。ちなみにリュックは取り上げられているため、アイテム袋も使えず。

 

 狭くて暗い部屋に放り込まれて、子どもたちの泣き声をバックに膝を抱えて座っていると、やはり気持ちも滅入ってくる。無言で座る俺に対し、さっき声をかけてくれた少年、いや青年は泣く子どもたちに声をかけ続けている。


「なんでそんなに面倒見が良いんですか?」

 俺なんか自分のことでいっぱいいっぱいなのに……。

 

「うん?俺か?……小さい子を見てると1人残してきた妹を思い出すんだ。両親が早くに亡くなったから俺が親代わりで、冒険者になって育ててたんだ。順調に依頼を受けてブロンズランクになったんだけど、めったにわがまま言わない妹が新しくランドルフ商会で売り出したリュックが欲しいと言い出してな。報酬の良い依頼があると誘われてついのったら、このざまだ。……だまされたと知ったときには遅すぎた」


 まさかのリュックが原因……。

 俺のせいじゃないけど、なんだか責任を感じる。


「みんな良い話があるとだまされて来たの?」

 その割には年齢層がまちまちだ。


「いや、いろいろだな。俺が捕まった一ヶ月から10日前くらいまでは同じようにだまされた若い冒険者が多かったんだが、ここ最近はなりふり構わずにさらいやすいやつをさらって来ている感じだ。幼い子どもばかりが増えて来た」

 ……幼い子ども。俺そんなに幼くないけど……無防備だったし、さらいやすかったんだろうな。


「一ヶ月もここにいるんですか?」

 いや、それはかなり辛い。

 

「ああ、夜にいろいろ場所を変わりながらな。とにかくヤツラは何のためか分からないが人数を集めているんだ」

 さっき言ってた俺で数が揃ったから移動するって話だな。これだけの人間を本当にどうするつもりだろう。他国に売り飛ばすとかなんだろうか……?


 ガチャ。

 

 ドアについている小窓が開き、大量のパンが部屋の中に放り込まれる。


「今日のメシだ。最後の晩餐になるかもしれないから味わって食べろよ」

 俺を捕まえたヤツはこちらをちらりと覗くと不気味な笑い声をあげながら去っていった。

 

 ……不吉な発言である。

 ただ腹が減っては戦はできぬだしな。俺がパンに手を伸ばそうとすると、青年に止められる。 

 

「ここでは年齢順にパンを取るようにしているんだ」

 その言葉通り、一番幼い子どもからパンを取りに行っている。いや、本当に自分のことしか考えていない俺が恥ずかしくなる。


「そういや名前も言ってなかったな、俺はギラン。ここの最年長で16歳だ」

 16歳でブロンズランクか。かなり優秀だし、カリスマ性があるんだろうな。現にここの皆は彼の指示を素直に聞いている。


「俺はスバル。9歳です」

 念の為、辺境伯家次男であることは隠しておこう。俺の身分のせいで皆が危険な目にあってもいけないし。


「知ってる。光のジェーンさんの秘蔵っ子だろう。冒険者ギルドで何度か見かけたことがある。もしかしたらここから出られる可能性があるんじゃないかとも思ったんだが……」

 そうか。同じ冒険者ならどこかですれ違っていてもおかしくない。しかもジェーンさんの件やワイバーンの件で注目を集めたしな。


「すみません。俺はメンバーの中でも弱い方で正直役立たずで……」

 いや、本当に何で俺?……俺以外は捕まらないか……。

 

「いや、俺だってブロンズランクと言いながら、何もできていない。変なことを言って悪かったな」

 でも、ギランさんは今できる最善を行っている。さすがブロンズランクなだけはある。


 俺も今できる最善を行わないと……。

 今できる最善って何だろう?

 考え込んでいると、ギランさんがパンを持ってきてくれる。


「スバルのパンだ。早く食べろよ。おそらくもう少ししたら移動が始まる」

「ギランさんのぶんは?」

「今日は数が足りないようだから俺は無しでかまわない。気にせず食べれば良い」

 

 これで16歳。本当に人間ができている。

 

 でも食べないと体力がかなり落ちる。ここでギランさんが動けなくなる方がマズイ気がする。それに俺は昼まで普通に食べてたしここはギランさんに……と言っても受け取らなさそうだから、ここは一つ……。


 俺はパンを半分にして、半分をギランさんに渡す。

「何か食べとかないと、もし逃げれる状況になっても逃げられませんよ」

 

 ギランさんは、素直に受け取ってくれた。

「すまない。ありがとう」


 それにしても俺ができることって何だろう?

 魔法も使えないし、武力は無いに等しい。いつもは頼りになる相棒のテイムモンスターもいないし……。


「こんなとき、スカイやぺぺやグリンがいてくれたら……」


「ぺぺ!」


 えっ、空耳?


 いや、今確かにぺぺの声がしたような……。


「そういやスバル聞き忘れたが、背中に引っ付いている、そいつは何なんだ?」


 背中?まさか……。


「ぺぺ!」


 ぺぺ――――!!!

 


 

 


 

 

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