初めてのゲット8(初級訓練1)
昼食後は騎士団の初級訓練に参加する。
姉とフェレナは上級訓練のため、やっと自由を感じることのできる時間だ。兄弟とはいえ、四六時中一緒だとやはり息がつまる。
「おっ、スバル今日も参加か」
「ハイド、そうなんだ。俺は嫌なんだけど逃げられなくて」
そう。俺は本当に騎士団には入りたくない。
できれば不参加にしたいが、こっちをサボると(一度は実行済み)今度は父のお仕置きが待っている。
天昇式で出会った、ハイドも初級訓練に参加している。天昇式の次の日、さっそく遊びに来たハイドを(初めは家のでかさに尻込みして帰ろうとしていた)見つけ、ちょうど初級訓練の開始前だったため、誘ったところ(仲間は多い方が、1人あたりの指導が分散するかも……というちょっぴりよこしまな考えもあったが)俺よりも才能があったのか、獣人の身体能力が高いためか、メキメキ力を伸ばしている。
初級訓練は騎士見習い20人くらいが主に参加しているが希望があれば誰でも参加して良いらしい。
「スバル、今日もサボらずに来たな。えらいえらい。じゃあ、訓練を始めるぞ。今日は、身を守る術を身につける訓練だ」
おっ、今日の訓練は俺にピッタリな訓練だ。真面目に取り組まないと。
「身を守る術は様々あるが、自分の能力を知り、他人の能力を知り、何がその場で最適かを考え、行動する力が必要となる。では、まずは敵に見つからないようにするにはどうしたら良いと思う?」
「隠れる?」
「そうだな。場所にもよるが、今日は森の中でどう隠れるかやってみるか……まずは3人組を作れ」
おおっと、俺、ハイドだろ、あとは……
「……あの、良かったら一緒に参加しても、良いですか」
か細い声がする。見るといつも訓練で俺とドべ争いをしている、騎士見習い君がいた。
「もちろん!俺は、ハイド!よろしくな」
「俺は、スバル。よろしく」
「僕はケイン。……こちらこそ、よろしくお願いします」
3人組が無事にできて良かった。
……強いかどうかは別として。
「……よし、作れたみたいだな。では、作戦タイムをやる。十分それぞれ相談しろ。はじめ!」
「ちなみに俺は弓術が使える。獣人族だから、身体能力は高めだと思う。後は……少しだけ風の魔法が使える」
「俺はテイマーだが、まだモンスターをテイムしていない。また人族で、はっきり言って役立たずだ」
きちんと伝えなければ、迷惑をかける。キリッ。
(伝えなくても迷惑をかけることは一緒だが)
「僕は索敵と水の魔法が使えます。人魚族で、地上では正直あまり強くありません……」
人魚族だったのか。でも、見た目はまるっきり人間と同じだな。
「人魚族って、地上でも生活できるのか」
「純血種の方は難しいですが、僕は人族が交じっているので」
ヤバい。今日先生に言われたばかりなのに。
「聞いてはいけないことだったら悪い」
「いえ、隠していないので大丈夫です。それにお互いを知らないと課題が難しそうですし」
「そうだな……どうやって隠れよう」
「森の中ね……普通に考えたら木の上だけど」
「うーん、普通すぎるよな……せっかくだから見つからないようにしたいし……」
うーん、何か良い手はないものか……
「お前ら、悩んでも一緒だって!そこの獣人以外はてんで話にならないんだから」
何処にでもいるんだよな……ジャイ◯ン的存在。
目の前にいつも絡んで来る3人組がいた。
1人は背が高く、1人は背が低く、1人は普通。
家の団でそこそこ強い騎士の息子たちらしい。
……俺が名前を知らない時点でお察しの強さだと思うが。
「団長の息子って言っても、ステファニー様とは大違いだな」
大違いで結構。
俺は姉にはなりたくない。これは負け惜しみではなく本音。
「そういうお前たちは、もう考えたのか?」
「もちろん!最後まで見つからずに逃げ切ってやるぜ」
はい!フラグが立ちました。
こういう奴に限って一番に見つかるんだよな。
可哀想に……。
俺は憐れむ視線をなげかけた。
「変な目して、こっちを見てんじゃねーよ!どうせさっさとみつかるんだから、教官の手をわずらわせずにさっさと見つかっちまえ!行くぞお前ら」
「はい!」「はい!」
3人組は捨て台詞を吐いて去っていった。
本当に三下みたいな奴らだな。
「先生、今回は見つかったらアウトですか?」
「いや、見つかっても逃げ切れたらセーフだ」
……さっさと見つかるか……いけるかも。
ありがとう三下!!何とかなるかもしれない!
「……ちょっと思いついたんだけど……」
上手くいきますように。




