エピローグ
父を筆頭にワイバーン退治に行っていた騎士達が帰って来た。なんと68頭も討伐したらしい。
そのうち数頭は俺達のチームが討伐したけど。
多少の怪我人は出たらしいが、誰一人欠けることなく無事に帰還することができたらしい。今日は家族の元に帰ってのんびりし、明日大規模な討伐達成祝いの晩餐会を行う。といっても辺境伯騎士団主催の晩餐会なので気取ったものではなく、騎士団の家族なら誰でも参加できる会だそうだ。
うちは父が帰ってゆっくりする間もなく、明日の準備とワイバーンの後始末で皆大忙しである。
なので肝心の父とはまだ会えていない。
姉とフェレナは母の手伝いに借り出されており、珍しく俺とエイダン、スカイ、ぺぺ、グリンだけで自室でのんびりしている。
いや、何か手伝おうかとも思ったのだが、皆忙しそうで殺気だっており声もかけずらく、大人しく自室にこもることにしたのだ。
「なあ、エイダンは姉さんたちと一緒に上級訓練に行かなくて良いのか?」
いや、俺の護衛として雇ったけど、あまりにも能力が高すぎて俺の護衛で良いのか悩む。姉とフェレナのように騎士団で鍛えてもらえたら、それこそかなりの実力者として騎士団でも活躍しそうである。
「……なぜ?」
「いや、強くなったり、騎士団に入ったりしたくないのかなと思って」
「……興味がない」
即答である。
「俺はとりあえずしばらくは、冒険者をしながらいろいろなところを見て歩きたいと思ってるんだけど、それでも良いのか?」
そう。実は姉たちの話を聞いて今の自分がしたいことを考えたのだ。
俺はいろんなところに行ってみたい!
せっかく異世界に転生したのだから、今できることを存分に楽しみたい。12歳になったら、貴族の子息は貴族学園に入学が義務づけられている。それまでにできたらいろんな世界を見ておきたい。
「…………俺も行く」
「キュウ」「ぺぺ」「キャン」
みんな異論は無さそうである。
「じゃあ、父様に相談だな」
なんとか父を説得せねば。
俺は父の政務室を訪ねた。ドアは開けっ放しになっており、入れ替わり立ち替わり誰かが政務室に入っていく。
……明日にしようか。いや、なんとなくこういうのは早い方が良い気がする。
父の様子を入り口で伺っていると父が俺に気付いてくれ、名前を呼ばれる。
「スバル!!こっちに来い!」
父は無精髭を生やし、いつもより2割増でワイルドな雰囲気である。
「……うん」
なんだか、しばらくぶりに会うので妙に照れくさい。
「どうした?何か用事があるんだろう?」
「実は……」
俺は今の想いを正直に伝えた。
「……そうか、辺境伯はおそらくスコットが継ぐ。騎士団はステファニーが。だから申し訳ないがお前には何も継ぐものは残してやれん。だがな、考えようによっては、お前は何にでもなれるってことだ。もちろん冒険者にだってな。だからお前は好きなことに挑戦したら良い」
「父様……」
本当に理解がある親に恵まれてるよな。
「だが、命だけは大切にすると誓えるか?親としてはそれが一番大切だ」
「はい!」「キュウ!」「ぺぺ!」「キャン!」こくり
「じゃあ、母さんにも伝えておく。……あとはスバル、お前が考えたアイスバックも形になりそうだと聞いたぞ、うまくいけばスライムジェルの有効活用になりそうだと母さんが喜んでいた。そっちも母さん主導になったとはいえ、最後までお前も責任を持つんだぞ」
「はい!」
よし!明日からはいよいよ本格冒険者デビュー!!
安心安全第一に!
頑張るぞ!!
「あとスバル、また今回の件が落ち着いたら、ぜひ会わせたい人物がいるんだ。会ってくれるか?」
「もちろん!」
父がわざわざ俺に会わせたい人物とは誰だろう。……と、そうだ、自分のことばかりで肝心なことを伝えてなかった。
「父様、おかえりなさい」
「ああ、ありがとう!」
父は満面の笑みを浮かべた。
自室に戻りいろいろ考えているうちにどんどん眠たくなってくる。スカイとぺぺとグリンはヘソ天して一緒のベッドで既に夢の国である。また、明日……。明日は何が待っているのか……でもきっと俺達ならなんとかなるよな。……明日からも楽しみだ!!
とりあえず一章完結です。私の拙い文章にここまでお付き合いくださり本当にありがとうございます。やっぱり初めて書いた作品。思い入れもあり、まだまだ書きたいなと思っています。1週間ほどお休みをいただき、15日の月曜日から第二章をスタートさせます。また良かったら続きも読んでいただけるとありがたいです。
この1週間は「悪役令嬢はやっぱり悪役令嬢?」という中編小説を投稿予定です。4話本日投稿するので良かったら読んでみてください。