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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第一章 新しい世界で何をする?
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キャンプに行こう 14(新しい門出)



「「「「「乾杯」」」」」「キュウ」「ぺぺ」「キャン」こくり


 皆でジュースの入ったコップを打ち鳴らす。


「ぷはーうまい!!」

「疲れた後のジュースは格別だよな」


 俺達は、ギルドの食堂で早めの夕食を食べていた。時間が早いせいか他には誰もおらず、貸し切りである。


「ジェーンさんも来れたら良かったんですが……」

 

 そう、お世話になったジェーンさんも打ち上げに誘ってみたのだが、生憎帰ってすぐに指名依頼が入りそちらに行かなければならなくなってしまった。残念だが仕方がない。


「ま、また冒険者をしてたら会えるだろう」

「だな」


 俺とハイドとケインで話をしていると、無心で食べていた姉が顔を上げて俺達の方を見た。隣のフェレナも食べる手を止めている。


「姉さん、フェレナどうしたの」


 珍しく2人とも真剣な顔つきである。そして、2人顔を見合わせると、姉が口を開いた。


「実は……みんなに相談があるの」

「相談?」

 何だろう。いつになく真剣な表情である。


「私とフェレナ、しばらく冒険者を休もうと思うの」


 思ってもみない一言だった。

 

 まだ冒険者を始めたばかり。

 

 しかも姉とフェレナは率先して、モンスター退治に行くなど冒険者として楽しんでいるように思っていたのだが、違っていたのだろうか。


「みんなと冒険をするのが嫌とかじゃなくて、依頼を受けたり、モンスター退治をしたりは本当に楽しかったの」

「はい。私も皆さんと冒険できて本当に楽しかったです」

 

「ただ、ジェーンさんと一緒に過ごすうちに、私との差を感じるようになって……もちろんゴールドランクだからいろいろなことを知ってるけど、そうじゃなくて、根本の力の差を実感したの」

「冒険者として実戦経験を積むのはもちろん大切ですが、私達はそれ以前の問題だと気づいたんです」

「つまりね、私の槍の力を伸ばさないと早い内に壁にぶつかって先は無いってことに気づいたの」

「私の剣の力もです」


 

「……だから、私の才能の鑑定が済むまでは、とにかく槍の鍛錬に力を注ごうと思うの」

「私は剣の鍛錬に」

「恐らくもうすぐ父様が帰ってくるから、そうしたら訓練に専念したいの。だからしばらく冒険者をお休みさせてほしくて……勝手を言っているのは分かってるんだけど、許してくれないかしら」

 姉とフェレナが俺達に頭を下げる。


 俺達は皆で顔を見合わせ、頷いた


「顔を上げてください」

「そんなの良いに決まってるじゃないですか」

「そうそう。俺達でも初心者の森のキャンプはなんとかなったしな」

「はい。もともとお二人とは力の差も大きかったんです。ですから、お休みではなく抜けられることを考えても良いですし……」


 そう。そもそも2人と俺達3人の力の差は歴然としている。俺達は初級訓練クラス、2人は上級訓練クラス。これを機会に別の道を歩むのも有りではないだろうか。


「その話も2人でしたんだけど冒険者をするならみんなと同じチームがいいなって思ってるの」

「はい。やっぱりまた冒険者になるなら、皆さんと一緒に冒険がしたいと思います」


 2人の決意は固そうだ。ならば返事は一つである。


「……そっか。じゃあ、また、戻って来たくなったらいつでも戻ってきたらいいよ」

「はい!いつでも大丈夫です」

「そもそもチームセブンと言いながら、ぺぺとグリンがいるからナインになってたしな」

 俺達は笑顔で話をする。


「……ありがとう。フェレナと相談したんだけど私たちがお休みの間にもしチームセブンに入りたい人がいたら、加入についてとやかく言うつもりはないから」

「はい。前衛職が減るので必要であれば募集をかけていただいても構いません」


 前衛職か。ぺぺがいるとはいえ、確かに2人の抜けた穴は大きいだろう。


「とりあえず、今のメンバーで活動してみて、必要を感じたら募集をかけるよ」

「だな、でも2人が抜けるのか――寂しくなるな」

「はい、なんだかんだここ最近は一緒のことが多かったですし……」


「何言ってんのよ、辺境伯家にはいるからいつでも会えるわよ」

「はい」

 俺なんか嫌でも毎日会いそうだしな、


「あと、お金については私とフェレナ今のところ困ってないからチームセブンに寄付するわ。ただ、ご飯会には誘ってね」

「お休みなだけなので、定期的にご飯会はお願いします」


 俺以外は、互いの近況報告もできるし、定期的にやるか。


「了解。また、何かトラブルがあったらお互いに相談するってことで」

「ええ」

「じゃあ、みんなの新しい門出を祝わないとな」

「そうですね」


「店員さん、ここにメニュー表の食事もう一度全部お願いします!」

 姉が声をかける。


 ……全部。


 食べきれるだろうか……。


 いや、きっと無用な心配だよな。

 とにかく今日は食べるぞ!!


 俺達は思う存分食べ尽くした。


 明日からは2人無しのチーム。

 俺も最初は成り行きで始めた冒険者だけど、結構楽しくて性に合ってるかもしれない。


 モンスターはやっぱり怖いけど。


 でも自分の知らない世界を知るってやっぱり面白い。


 安心安全第一だけど、俺は冒険者になるのも良いかもな。

 


 

 


 

 


 

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