キャプに行こう 9(3匹目テイムモンスターゲット)
まずは、装備品を拾うと。後は特に所持品は無さそう。そして、右耳を剥ぎ取ると。
俺はためらわずに右耳を剥ぎ取った。
これだけ数が多いと早くしないと日が暮れてしまう。初めはためらっていた俺も、単純作業と割り切りどんどん作業を進めていった。ゴブリンの死体はどうしようかと考えていたら、ぺぺが無言で持ち上げ運んでくれる。
大きさが違いすぎて、ハラハラしたが、全くよろめくこともなくすぐに死体を置いて戻ってきた。どうやら楽勝らしく、ハイドとケインの手伝いもしている。
作業の流れができて、作業スピードも上がっていった。
「スバル、スカイとちょっとこっちに来てくれる?」
姉に呼ばれて、俺とスカイは走って向かった。
人じゃありませんように……。
ゲームの世界ではなく現実の苗床は悲惨すぎる。
呼ばれてついた場所はどうやら檻のようで、コボルトらしきモンスターが数匹捕らえられていた。見た目はガリガリに痩せているが、かろうじて生きているらしい。
また、昨日見た犬に似た子どもも数匹側にいた。色は普通に汚れた白色だが。
「このコボルトたちは捕まっていたようなんですが、見た目も見た目ですし、子どももいるので、一度上層で放してやろうと思います」
ジェーンさんが言う。
多分悲惨な目にあったんだろうから少しは救いがあっても良いよな。
「俺はどうしたら良いですか?」
「スカイさんの桃とオレンジが欲しいのですが良いでしょうか」
俺はスカイを見ると、スカイは既に腕に大量の桃とオレンジを抱えていた。
「キュウ!」
それをジェーンさんに差し出す。
「ここで与えて我々が襲われたら意味がないので、上層に檻を運び、桃とオレンジとともに置いておこうと思います」
こんな重そうな物どうやって運ぶんだ?
「もう一つお願いがあって、スカイさんに檻を運んでもらえないかと」
ジェーンさんがかがんでスカイに頼む。
「キュウ!」
スカイは檻に近づくとポケットに一気に収納した。
おおっ。
一瞬で檻が消える。
……ポケットの入口の大きさと、檻の大きさ全く違うのだが一体どうなっているんだろう……。
俺がまじまじとスカイのポケットを見ていたその時、「キャンキャン」とどこかで聞いたような鳴き声が聞こえてきた。
見るとスカイの前に昨日の緑の犬がいる。
「キャンキャン」
緑の犬はスカイの周りを吠えながらくるくる回る。
「……もしかして、檻の中にいるのがおまえの家族か?」
「キャン」
俺の言葉にそうだという風に緑の犬は鳴いてピタリと止まると俺の目を見つめてきた。やっぱりこの犬賢そうだな。
「スカイ、一度檻を出せるか?」
「キュウ!」
俺が頼むと、スカイはすぐに檻をポケットから出した。
ドーン。
置いた反動で地響きがする。
「キャンキャン」
緑の犬は檻の隙間から器用に入ると、大人のコボルトの側に近寄った。
「ガウ!!」
ところが、大人コボルトは緑の犬を見ると睨んで手で払いのけた。
「キャン」
緑の犬が檻の端まで飛ばされる。
「……親子じゃないのかな……」
見ている俺がつらくなってくる。
「……恐らくこの色からして、ゴブリンとコボルトの間の子かと。見た目か匂いかが違うせいで、コボルトとは認められないのかもしれません」
ジェーンさんが、緑の犬を見つめて言った。
「……そんな」
緑の犬のせいじゃないのに。
緑の犬は何度も側に寄っていくが、その度に手酷く拒絶されている。そしてとうとう動かなくなった。
どうにも見ていられない。
俺は檻に近づくと、傷だらけになった緑の犬を抱き上げた。
「おまえ、うちの子になるか?」
せっかくスカイとぺぺが助けた命だ。このまま死んでいくのはやっぱり見ていられなかった。
「うちの子になったらコボルトとも戦うことになる。それでも良かったらうちの子にならないか」
緑の犬の目を見つめて言った。傷だらけだが、目の輝きは失われていない。
「……キャン」
緑の犬は、覚悟を決めたように小さく鳴いた。
「よし、お前は今日から俺のテイムモンスターグリンだ!!」
俺はグリンを高々持ち上げて宣言する。
名前を告げた瞬間、グリンの体が光る。
グリン(✕✕✕の幼体)をテイムしました。
頭の中に文字が浮かぶ。
でも、種族名かまた伏せ字だぞ。
「お前はグリンだ!今日からよろしくな」
「キャン」
傷だらけながらもグリンは返事をしてくれる。
先に手当てが先だったな。
「スカイ、桃とオレンジ……」
俺は言いかけるが、既にスカイの手には桃とオレンジが握られていた。
「今日からグリンも仲間だ。よろしくな」
「キュウ!」
スカイは大きく返事をすると、俺がおろしたグリンに近寄り桃とオレンジを食べさせている。
「キャン」
元気になったグリンはスカイをペロペロ舐めていた。
仲良くやれそうだな。
3匹目テイムモンスターゲットだぜ!!