21-1・メダル重掛~妖砲イシビヤ
EXザムシード(エグザムシード)が富運寺を目指してマシンOBOROを駆る!
「・・・ん?」
EXザムシードのセンサーが、接近してくる2つの妖気を感知!空から闇霧が降りてきて進行方向を塞ぎ、牛頭鬼と馬頭鬼が出現する!
応戦をしている時間が勿体ない。このまま突っ込めば振り切れるだろう。だが、連中が自分を追って来てくれれば良いが、YOUKAIミュージアムに攻撃を仕掛けられたら、残った紅葉と粉木だけでは対応できない。
「叩くしかないか!」
左腕のYウォッチに収納された属性メダル『炎』を抜き取って、マシンOBOROのハンドル脇スロットに装填!EXザムシードは、アクセルを捻って、タイヤから炎を発したマシンOBOROを加速させ、牛頭鬼&馬頭鬼に突っ込んでいく!
朧ファイヤー発動!しかし、牛頭鬼&馬頭鬼は回避!鬼達は表皮が軽く焼けただけで、致命傷を与えられなかった!EXザムシードは、小さく舌打ちをした後、マシンOBOROを駐める!
「さすがは中級妖怪。簡単には倒せないってか?」
バイクから降りて構え、Yウォッチのメダルホルダーから『蜘』メダルを抜き取って、Yウォッチのスロットに装填!EXザムシードの正面の空間が歪んで召喚された妖刀を握る!
「・・・ん?」
いつもの妖刀と少し違う。刀身が鋭利な輝きを放ち、手にしただけでも、「自分は今までより強くなった」と錯覚しそうになる。刀身は、これまでよりも少し長くて、鎬筋から鎬地に細かいレリーフが施されており、豪華に装飾された束にはメダルを嵌める窪みが2つある。1つが妖怪を封印する為の白メダル装填用なのは解るが、もう1つの窪みは何に使うのだろうか?
「重ね掛けが可能ってことか?」
試してみる価値はある。従来通り重ね掛けが不可能なら、システムが拒否をして、自動でリミッターが掛かるはず。EXザムシードは、マシンOBOROにセットしてある『炎』メダルを抜き取り、メダルホルダーから引き抜いた白メダルと並べて、妖刀オニキリの柄に装填。鎬筋のレリーフが赤く輝いて、妖刀の刀身が炎を帯びる。数秒ほど様子を見るが、特に‘拒否反応’は発生しない。
「行けそうだな。」
EXザムシードが、牛頭鬼&馬頭鬼に向けて突進をする!鬼達も、迎撃態勢で向かってる来た!
「はぁぁっっ!!」
距離を詰めて、妖刀オニキリを振るうEXザムシード!牛頭鬼は左に、馬頭鬼は右に動いて回避をする!しかし、オニキリから伸びた炎の刃が牛頭鬼&馬頭鬼に着弾!左右に弾き飛ばされた牛頭鬼と馬頭鬼を見たEXザムシードは、オニキリを刺突の姿勢で構えて、牛頭鬼目掛けて突進!一突きで腹を貫いた!
「ブモォォォッッッッ!!」
牛頭鬼は悲鳴を上げて爆発四散!闇の霧が散り、オニキリの柄に填められた白メダルに吸収される!
「次は馬面だっ!」
相棒を失った馬頭鬼が逃走をする!EXザムシードは、マシンOBOROを呼び寄せて飛び乗り、馬頭鬼を追う!
「刀がパワーアップしたってことは・・・銃も?」
バイクを操縦しながら、Yウォッチから『鵺』メダルを抜き取って空きスロットに装填!弓銃カサガケ、改め、弓銃ヤブサメ召喚!メダルスロットは2つ有るが、あえて、白メダルはセットせず、『炎』メダルのみをセットして、銃身の弓身を展開して強弩モードに切り替える!
「朧!タイミングを合わせるぞ!!」
弓銃ヤブサメの銃口を、逃げる馬頭鬼の背中に向けて発砲!火炎弾が発射され、馬頭鬼を粉砕して闇の霧が散った!
〈オ~~~~ボォ~~~~~ロォ~~~~~~~~!!〉
マシンOBOROの干渉により、前方に漂う馬頭鬼の残骸に時空の歪みが出現!そのままOBOROを走らせ、時空の歪みに飛び込むEXザムシード!黄泉平坂フィールドに突入して、マシンOBOROは搭乗者の周りをバリアで包み、超音速モードに移行する!
-富運寺・仏殿の屋根-
闇の塊に闇が集まり、大きな闇に変貌していく。酒呑童子が復活する様子を満足そうに眺めていた茨城童子は、控えているはずの場所に金熊童子しかいないことに気付いた。
「ぬぅ?虎熊童子はどうした?」
「虎さんなら、狗塚にトドメを刺しに行ったよ。
狗塚のことがだいぶムカ付いていたから、
放置しろってイバさんの指示が不満だったみたいだね。」
「御館様復活のめでたい席に立ち会わぬとは・・・無礼なヤツだ。」
「どうする?呼び戻してこようか?」
「放っておけ。ヤツ(虎熊童子)にもプライドがある。
今更、狗塚の小倅が迷い込んできたところで大勢は変わらぬが、
ヤツ自身の手で仕留めたいのであろう。」
茨城童子は軽く溜息をつき、虎熊童子の勝手な行動を黙認する。
「外部の退治屋は間に合わぬ。もはや、御館様の復活を邪魔する者は、何も無い。」
屋根の上から、上空に集まる巨大な闇を見上げる茨城童子。数ヶ月前は狗塚雅仁の奇襲に敗走をしたが、失敗から学び、此度は裏をかき、ついに主君の復活が成就する。
「オォォォォォォォッッッッッ!!」
殿間から、酒呑童子の唸り声が上がる。闇の塊は、徐々に主君の姿を形作っている。茨城童子は「勝った」「鬼の帝国が復活する」と確信をしていた。
-富運寺・総門-
虎熊童子が 「ここから先は通さない」と言わんばかりに石階段下のガルダを睨み付け、虎熊童子の背後には、数体の中級~下級鬼族が並んで総門を塞いでいる。
「アニキはオマエの処理より御館様の復活を優先させたけどさ・・・
拙者は、オマエがムカ付いて仕方無いんだよな。
今までは、アニキの指示に従ってきたけど、
もう、御館様の復活は決まったんだから、
あとはアニキに任せて、拙者は拙者の自由で動く事にした。」
「単独では俺に勝てないと判断して、数の暴力か?」
「拙者を舐めるなよ。コイツ等(中級~下級鬼族)はオマエを逃がさない為の壁。
オマエを潰すのは、拙者1人だ。」
「・・・厄介だな。」
ガルダの目的は、鬼の殲滅や虎熊童子の討伐ではなく、鬼のトップを叩くこと。虎熊童子が数で攻めてくれば、個と個の間隙を突破して、鬼の本陣に突入する術があるだろう。だが、虎熊とのサシの勝負で、部下達は壁に専念するならば、隙を生じさせるのは難しい。虎熊童子を倒さなければ、この先には進めない。
「いや・・・あえて‘無い間隙’を突くか。」
鳥銃・迦楼羅焔を構えるガルダと、刀を抜く虎熊童子!ガルダの射撃を合図にして戦闘開始!虎熊童子は、雷を帯びた刀身で、楽々と光弾を弾いた!
「迅雷!」
全身が放電して光速に変化をした虎熊童子が、ガルダに突進をする!ガルダは、跳躍をして回避!しかし、虎熊童子は、光速移動と高い跳躍力で、楽々と空中のガルダに追い付く!
「掛かったな、鬼!」
ガルダは翼を展開させて更に飛翔!鳥銃を構え、跳躍の最高点に達した虎熊童子を狙い撃った!
「しまったっ!」
鬼の幹部は、足に闇の雲を纏わせて、空中浮遊をすることができる。だが、雷化(迅雷)との併用は出来ない。
放電させた刀身で光弾2発を弾く虎熊童子!しかし、空中では踏ん張りが利かずに体勢を崩して、3発被弾して石階段に墜落する!
ガルダは、追い撃ちの連射で、石段に這いつくばる虎熊童子の動きを止め、空を滑空して総門の屋根に着地!壁役として門を塞いでいる中級~下級鬼族を無視して、境内側に飛び降りて駆け出す!ガルダの考えた「無い間隙を突く」とは、「壁があるから突破できない」と思い込む心の隙を突くことだった!
「おい、役立たずどもっ!なんでアイツ(ガルダ)を止めないんだよ!」
立ち上がった虎熊童子が、怒鳴りながら総門までの石階段を駆け上がる!
「虎熊様が『手を出すな』と言ったので・・・。」
「追えっ!ボケッと眺めているだけじゃ、壁役にもならないだろうがっ!」
仏殿に向かうガルダを、虎熊童子と部下達が追う。一方のガルダは、穴だらけの包囲網を突破したものの、このまま突き進めば「待機中の鬼達と、背後から迫る虎熊童子達の挟み撃ちにされる」と把握している。
「マシン流星、来い!」
背後との距離を確認しながら、Yウォッチに向けて愛車に呼び掛けるガルダ!富運寺の手前に止められていたヤマハ・MT-10が起動をして、富運寺に向けて自走をする!ボディから機械的な羽が出現して飛び上がり、空中でガルダの位置を補足して急降下を開始!
「来たか!」
マシン流星が降りてきて、走るガルダと並走をする!Yウォッチから、妖怪・野鉄砲を封印した『砲』メダルを抜いて、空きスロットに装填すると同時に立ち止まるガルダ!マシン流星が変形をして、カウルが開いて砲身が出現!妖砲イシビヤに姿を変える!
ハンドルを握ったガルダが、ハンドル脇のスロットに白メダルをセットして、タイヤを軸にして妖砲を回頭させ、迫ってくる虎熊童子達に砲口を向けた!
「纏めて消し飛べ!」
「げっ!マズいっっ!!」
虎熊童子達は、横っ飛びで回避をするが、妖砲イシビヤ放たれた巨大光弾が、容赦無く飲み込んで吹き飛ばした!
部下の中級~下級鬼族が地面を転がり、全身を闇霧化させて消滅!辛うじて立ち上がった虎熊童子が、憎々しそうにガルダを睨み付ける!
「おいおい、ぶざけんなっ!これは卑怯だろうっ!
拙者はサシの勝負をっ!?」
「それは、俺を倒すという貴様の欲望を満たしたいだけ!
貴様等に正々堂々等という概念はあるまい!」
「ぐぅぅぅ・・・くそっ!マジでムカつくっ!」
力尽き、その場に崩れ落ちる虎熊童子!爆発四散をして闇霧となって散る!
-仏殿の屋根-
茨城童子が、険しい表情で総門側を眺める。閃光が見え、虎熊童子の気配が消滅をした。
「愚か者め。無意味なことに余計な執念を燃やすから、こうなる。
だが・・・貴様の犠牲は無駄にはならぬ!」
先代ガルダの武装に大砲(妖砲イシビヤ)は無かった。現在のガルダの新装備なのだろう。閃光の照射時間と範囲を考慮すると、この場に集まった百鬼夜行を一撃で全滅させる威力は無い。しかし、不完全な酒呑童子が直撃を喰らえば、半分以上を消滅させる攻撃力はある。
意図的ではないが、虎熊童子は自分を犠牲にして、茨城童子の認識していない‘ガルダの切り札の破壊力と限界’を示してくれたのだ。
「金熊童子、今の砲口を退けろ!
数分程度で良い!御館様が安定するまでの時間を稼いでくれ!」
「あいよっ!」
金熊童子は、目に止まった鬼数体を連れて迎撃に出動。采配を済ませた茨城童子は、再び、酒呑童子の復活に注視をする。