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妖幻ファイターザムシードⅠ 凡人ヒーローと天才美少女の物語  作者: 上田 走真
第19話・黒いザムシード(vs茨城童子・虎熊・金熊)
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19-1・貸し借りアイコ~SYUTEN

-優麗高・屋上-


 ガルダは鬼の幹部達を発見するなり、問答無用で鳥銃・迦楼羅焔を向けて光弾を連射!茨城童子は、掌から闇の障壁を発して光弾を防御!金熊童子は素早く動き回って回避をする!


「ヤツ(狗塚)は私が相手をする!金熊童子は、閻魔の退治屋を止めろ!」

「本気出しても良いのか!?」

「構わん!確実に倒せ!」

「あいよっ!」


 屋上に浮かび上がる多数の生命力が、八卦先天図を通過して3枚の『酒』メダルに吸収されていく!鬼達の目的は、「自分達が死なないこと」ではなく「儀式を守ること」だ!躊躇うこと無く、ザムシードとガルダの妨害に動き出す!

 茨城童子は、ガルダに向けて、闇を灯した掌を翳す!妖気乱舞発動!ガルダの周り空間が茨城童子に掌握され、周囲に漂っていた妖気が衝撃波となって、ガルダに襲いかかる!


「気を付けろよ、狗!俺はその技で・・・」

「技と呼ぶほどのものではない!」


 ガルダは護符を取り出し呪文を唱え、周囲の空間を浄化!妖気が祓われて、ただの送風を浴びる!


「俺がスゲー苦労したってのに、アッサリと攻略しやがった。」

「未熟な君と一緒にするな!

 陰陽を識る者からすれば、大した攻撃ではないってことだ!」

「せっかく褒めてやってんのに、嫌味で返すな!」


 ザムシードは、ちょっとイラッとしながら、向かってくる金熊童子に対して構える。先ほどのような「バイクの伏兵」はもう通用しないだろう。右手に裁笏ヤマ(木製ナイフ)を握り、左手に装備した弓銃カサガケを連射する!


「さっきまでのオイラと同じと思うなよ!」


 金熊童子は光弾を回避しつつ、まだ距離があるにも関わらず、気合いを発して拳の連打を放った!拳が纏った風が空気を圧縮した弾となってザムシードに炸裂!想定外の攻撃を受けたザムシードは数歩後退をする!ただの空気の塊なので、大ダメージにはならないが、牽制には充分な技!体勢を崩したザムシードの懐に、金熊童子が素早く飛び込む!


「ちょっと本気を出せば、オマエなんて相手じゃねーんだよ!」


 先ほどの戦いでは、茨城童子から「騒ぎを大きくしない為に目立つな」と言われていたから本気で戦わなかっただけ。だが、魂胆がバレて、もう息を潜める意味が無いので、此処からは本気で退治屋を潰しに掛かる!


「ぐはぁっっ!」


 金熊の拳の連打が全身に炸裂をして、堪えきれずに弾き飛ばされるザムシード!だが、それだけでは終わらない!金熊は、転倒したザムシードに追い撃ちを掛ける為に一足飛びで近付く!ザムシードは裁笏を振るって金熊を牽制するが、片手で受け止められ、もう片方の拳の連打を叩き込まれた!


「佐波木っ!!」


 ガルダが、金熊に鳥銃を向けて光弾を放つ!金熊は、小さく舌打ちをして、素早く後退!「ザムシードの瞬殺」を防いだガルダは、直ぐさま、銃口を正面の茨城童子に向けて連射をする!無駄の無い動きで、敵に隙を見せない!


「シッカリしろ、佐波木!まだ戦えるか!?」


 ガルダがザムシードの援護をしたのは、ザムシードの脱落を防ぐと同時に、自身の不利を防ぐ為。ザムシードが戦線を離脱して、ガルダvs茨城&金熊の構図になってしまったら、ガルダでも敗北は必至になる。


「クソッ!茨城童子・・・小賢しいヤツめ!」


 慎重なガルダならば、優麗高に飛び込む前に、戦いを有利に進められる結界を準備するか、茨城童子の儀式を妨害する術式を仕掛けていただろう。だが、ガルダが到着をした時点で、一手を打つ余裕は無くなっていた。

 文架高校で発生した事件は揺動。ガルダ達を誘き寄せるだけでなく、消耗させ、且つ、優麗高で事前準備をさせない為の計画だった。


「小賢しいのは、貴様も同じだろう!?」


 茨城童子は、掌から発した闇の障壁で防御しながらガルダに接近をして、鋭い爪を振り下ろした!ガルダは数歩後退して回避!ただの光弾では止められないと判断して、鳥銃に『雷』メダルを装填して、雷属性の光弾を放つ!

 2発ほど掌で受け止めて、軽い痛みを感じた茨城童子は、ガルダから距離を空けて回避をする。その表情には、焦りが全く見られない。


「銃の攻撃力を上げた弊害・・・私が気付かぬとでも思ったか?」

「なにっ?」


 ガルダに向けて掌を翳す茨城童子!妖気乱舞発動!ガルダの周り空間が茨城童子に掌握され、妖気が衝撃波となってガルダに襲いかかる!

 通常時の鳥銃から発射される光弾は邪気を浄化する。だから、茨城童子は妖気の障壁で相殺をした。ガルダが発砲に雷属性を持たせたことで、光弾の攻撃力が上がる代わりに浄化力は犠牲になる。茨城童子は、たった2発の光弾を掌で受けただけで、それを見抜いたのだ。


「しまったっ!」


 浄化能力の落ちた攻撃では、茨城童子の妖気乱舞を相殺することが出来ず、ガルダは妖気の衝撃波で弾き飛ばされてしまう!


「賢しさは、私の方が優れているようだな。

 尤も・・・人間如きより優れていることなど、何の自慢にも成らぬが。」


 茨城童子は全身を闇霧に変えて移動して、立ち上がろうとするガルダの眼前に出現!ガルダを蹴り飛ばし、仰向けに倒れたガルダの胸を踏み付ける!


「貴様の持つ御館様を封印せしメダルもいただく。

 所在は、退治屋の小僧と同じ、左腕の小物入れ(Yウォッチ)か?」

「・・・くっ!」


 仰向けにされたまま、ガルダは右手に持った鳥銃の茨城童子に向けようとした!だが、銃口の向きが整う前に、しゃがんだ茨城童子に手首を押さえ付けられてしまう!


「騒ぐな、小倅。温和しく提供する気が無いのならば、左腕ごといただくだけだ。」


 茨城童子は、冷たい笑みを浮かべ、空いている方の手から鋭い爪を伸ばし、ガルダの左腕目掛けて振り下ろした!


「狗塚っ!!」


 金熊童子と交戦中のザムシードが、弓銃を発砲して茨城童子を牽制!爪がガルダに届く寸前で、茨城童子は後退をして回避!抑圧から解放されたガルダは立ち上がって体勢を立て直し、鳥銃を連射して茨城童子を更に遠ざける!


「これでさっきの借りはチャラだぞ!

 ・・・いや、今の方が危機一髪感は強かったから、貸しができたかな!?」

「・・・フン!」


 ザムシードの注意力がガルダ側に向いた隙を突いて、金熊童子が突進をしてくるが、ガルダが発砲で牽制する!


「貸し1つで構わんが、たった今返した!これでチャラだ!」


 互いにフォローをして立て直しを図るザムシードとガルダ。だが、戦いの軸となるガルダが既に消耗をしており、且つ、サシの勝負では相手が格上。1対1が2組の状況では、徐々に持ち堪えられなくなる。しかも、儀式を妨害できる隙が全く無い。


「俺達が逃げたら、紅葉の友達はどうなる?」


 負けは許されない。後日に仕切り直しなど有り得ない。逃げたら取り返しが付かないことになる。

 鬼達が圧倒的に有利な条件下で、ザムシードには迷っている余裕など無かった。


  『鬼の幹部を退けるには、ヤツ等を越える力を使うしかない。

   今は、迷っている時ではないはずよ。』


 紅葉の母親の言葉が思い起こされる。油断無く構えながら、Yウォッチに手を添えるザムシード。マシンOBOROの名を叫んで、金熊童子に嗾けて牽制をする。


  『強力すぎるメダルだから、通常の妖幻ファイターでは使い熟せないけど、

   閻魔大王の力を持つ妖幻ファイターなら制御できるはずよ。』


 「彼女は紅葉の母だから」とか「伝説の妖幻ファイターが言うことは正しいに決まっている」と、今まで満足に接したこともない相手を信頼しているワケではない。だけど、詰むのが見えている状況下で、事態の変化を他人任せにして、何もせずに後悔をしたくない。


  『稼動限界は3~5分程度。気を付けて使いなさい。』


 使ったらどうなるのか解らないが、かなりの負担が掛かることくらいは想像ができる。普段ならば、使用前に、粉木のアドバイスを求めるが、今は、そんな余裕は無い。


「やるしかない!

 3~5分・・・一気に決着を付ける!」


 Yウォッチから『酒』メダルを抜き取った途端に、ザムシードの周りが妖気で包まれ、ベルトの和船型バックルが反応をして自動で開かれる。


「メダルをここに装填しろってことか?」


 和船バックルに装填するのは、変身に使用する『閻』メダルのみ。他のメダルは、Yウォッチのスロットにセットして武器を召喚する。何故、和船バックルが『酒』メダルを要求しているのかは解らないが、ザムシードは一呼吸発して、『酒』メダルをバックルに『酒』メダルをセットした!


《SYUTEN!!》


 電子音声が鳴り響き、和船型バックルから闇が放出されて、ザムシードの全身を包み込む!

 茨城童子、金熊童子、そしてガルダが、ザムシードを取り巻く空気の変化を感じて凝視をする。



-校庭・校舎脇-


 屋上を見上げていた源川有紀が、『酒』メダルの発動を感じる。そのメダルは、過去に自分を守ってくれた。だから、今度は「娘を守る青年の力になってくれる」と期待をする。



-正門前-


 紅葉と、合流をした粉木が、屋上で発生した異常を感知する。粉木は、この妖気を知っている。そして、有紀の後ろ姿を見た時点で、この展開は予想していた。


「・・・燕真。」


 出たとこ勝負の作戦。ザムシードが、『酒』のメダルを使い熟せるというデータは無い。だが、圧倒的劣勢、且つ、優麗高の生徒と先生全員の命が掛かっている現状では、ザムシードシステムの特殊性に賭けるしかない。


「なんだろ~?・・・なんか懐かしいフンイキ。」


 紅葉は、屋上で発動された力の「凄さ」は感じたが、少しも「怖い」と感じない。

それまで、感知力が麻痺状態だった紅葉が明確な感知をできるようになった原因は、『酒』メダルの解放によって茨城童子の支配力が抑え込まれた為なのだが、まだ誰も、その事実には気付いていない。



-屋上-


 闇の中からザムシードが出現する。


「佐波木・・・か?」


 ガルダはザムシードから視線を外せなくなる。形は、今までのザムシードと殆ど変わりが無い。ただし、頭部に2本の角が生え、朱色のプロテクターは漆黒に変化をしている。


「ん?・・・当たり前だろ。」


 黒いザムシードの内側から燕真がいつも通りの反応をしたので、ガルダは一定の安堵をする。

 だが解せない。妖幻ファイターは、基本的に上級クラス以上の妖怪(酒呑童子や鬼の四天王)を封印したメダルを扱うことができない。使おうとしても、システムにリミッターが掛かってしまうはず。それは、陰陽の名家たるガルダでも例外にはならない。だから、上級種を封印したメダルは錬成塗膜はされず、原則として保管されるのだ。


「ぬぅぅ・・・バカな?御館様の力・・・だと?

 御館様が、退治屋如きに屈服をした・・・?」


 解せないのは茨城童子も同じ。鬼達からすれば、錬成塗膜とは「妖怪が人間に屈服して力を利用されること」を意味している。例え、5枚に分けて封印された『酒』メダルのうちの、たった1枚だとしても、主・酒呑童子が、退治屋に使われることなど有り得ないのだ。


「おのれ、退治屋!誇り高き御館様に何をしたっ!?」


 冷静な仕草を崩さなかった茨城童子が激高!両手の指先から鋭い爪を伸ばして、ザムシードに向けて突進をしてきた!

 妖気センサーの索敵力が強くなったから?それとも別の理由がある?理屈は解らないが、ザムシードには、茨城童子の突進が遅く見える。


「タイムリミット付きなんでね・・・

 そっちから仕掛けてきてくれると、時間浪費を防げて助かる。」


 ザムシードは、身を低くして裁笏を振り上げて茨城童子が振り下ろした爪を受け流し、腕を掴んで背負い投げた!投げられた茨城童子は、体を一回転させて体勢を立て直して着地!直ぐさま、ザムシードに向けて掌を翳す!妖気乱舞発動!ザムシードの周り空間が茨城童子に掌握され、妖気が衝撃波となって襲いかかる!


「はぁぁっっ!!」


 しかし、ザムシードが裁笏を横薙ぎに振るうと、茨城童子の空間掌握が掻き消され、妖気の衝撃波は消滅!戸惑いで茨城童子に僅かな隙ができたことをザムシードは見逃さない!一足飛びで接近をして、裁笏を振るう!茨城童子は爪で受け止めた!力は互角だった為、衝撃でザムシードと茨城童子は、共に僅かに仰け反る!だが、破壊力はザムシードの妖刀が上!茨城童子の爪に亀裂が入る!

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