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17-3・校舎突入~ガルダvs栄螺鬼

-学校の外-


 燕真と雅仁は学校内がパニックに陥っていることを把握する。完全な選択ミス。いや、「文架高校の異変に引き寄せられる」という形で、「周到な罠に嵌まる」以外の選択肢が無かったというべきか?


「くそっ!行くぞ、佐波木!」

「それしかないな!まさか、こんなことになるとは!」


 仮に「罠が仕掛けてある」と知っていたとしても、文架高を救う為には罠を発動させるしかなかった。これが、茨城童子の策略だ。もはや、不法侵入だの、不審者扱いを避ける状況ではない。


「幻装っ!」×2


 燕真と雅仁の全身が輝き、妖幻ファイターザムシード&ガルダ登場!2人は、文架高の校庭に飛び込む!

 ザムシードは、校舎内に押し入り、裁笏ヤマで手近な子妖3体を祓ってから、周囲を確認した!


「・・・マズいな。」


 正気を保って逃げ惑っている生徒は2割程度。既に、殆どの学生が子妖に憑かれており、負の闘争心や破壊衝動に駆られて、子妖同士で争っている。ザムシードは片っ端から子妖を斬るがキリが無い。全校生徒数に教員を加えて、700~800人くらいだろうか?そのうちの8割を祓わなければならない。


「どけ、佐波木!」


 ガルダが、鳥銃・迦楼羅焔に、属性メダルの『風』を装填して、生徒達に向けて発砲!霊気を帯びた衝撃波が拡散して飛び、30m圏内にいた生徒達を、正気の有無に関係無く纏めて弾き飛ばした!喰らった生徒達は、折り重なって倒れる!


「おい、乱暴すぎるぞ!」

「1人1人祓ってたら、子妖の拡散に追い付けん!」


 倒された生徒達のうち、正気だった者は立ち上がって逃げ出し、憑かれていた者は穏やかな表情に戻って気を失っている。


「掠り傷や打撲くらいは目を瞑って貰わねばな!

 状況が状況だ!背に腹は代えられん!」


 あくまでも、子妖を祓う過程で、衝撃波によって弾き飛ばしただけ。発砲の直撃によるダメージは無い。


「へぇ・・・便利な銃だな。」

「子をいくら潰しても終息はしない!本体を見付けて祓うんだ!」

「・・・だな!」


 妖気センサーに意識を集中させて、強い妖気反応を探すザムシードとガルダ!1階に4体、2階に2体、3階に2体、4階に5体、計13体の妖怪(本体)が発生しており、2階に居る1体が、一際大きな妖気を発している!


「3階と4階に発生している5体は下級妖怪・・・君(燕真)に任せても良いか?」

「アンタ(狗塚)は、どうすんだ?」

「1階を制圧次第、2階の中級妖怪を叩く!」


 ザムシードでも、中級妖怪の討伐は可能。だが、ザムシードよりもガルダの方が強いのも事実。それならば、強い妖怪は信頼できる仲間に任せて、迅速に倒せる妖怪を成敗するべき。


「了解!一番美味しいところは任せる!」

「本体を見付けたら、腹にある鬼印を狙え!

 鬼印によって無理矢理結びつけられた妖怪ならば、

 鬼印さえ祓えば、依り代との繋がりが薄れて急激に弱体化をする!

 以前の戦いで、君も経験したはずだ!」


 アドバイスを受けたザムシードは、以前の天邪鬼戦で、紅葉から「腹に埋め込まれた呪印を斬れ」と言われたことや、先日の1つ目入道戦で、鬼印を消した途端に木山少年が意識を取り戻したことを思い出す。


「・・・なるほどな。了解!」


 ザムシードは、1階をガルダに任せて、3階を目指して階段を駆け上がる!一方のガルダが、鳥銃を発砲してザムシードの進行を援護しつつ、子妖の群れを掻き分けて、1階に存在している本体=鉄鼠×4体の位置を把握する!


「可能ならば、下級妖怪は全部任せたいところだが、そうも言ってられまい!」


 ガルダの装備は、退治屋の装備とは一線を画しており、鬼の殲滅を目的としている。「一般人を救う」を目的にしていない為、憑いた妖怪のみを倒して、憑かれた依り代を救う戦闘には適していない。子妖程度なら鳥銃の殺傷力を極限まで落とせば祓えるが、その程度の破壊力では本体は微動だにしない。本体を倒せる破壊力で鳥銃を撃てば、依り代にもダメージを負わせてしまう。


「些か手間が掛かるが、仕方がないか!」


 ガルダは、Yウォッチから、飛頭蛮(ろくろ首)の力を封印してた『蛮』メダルを取り出して、Yウォッチの空きスロットに装填!長さ2mの妖槍ハヤカセ(隼風)を装備して鉄鼠に突進をする!


「はぁぁっっっ!!」


 10m程度離れた位置から、鉄鼠に向けて突きを放つガルダ!妖槍の切っ先から妖気の刃が伸びて、数体の子妖を弾き飛ばし、鉄鼠の腹を貫いた!鉄鼠を捕らえた状態で、妖槍の柄にある窪みに白メダルを装填するガルダ!途端に、鉄鼠が爆発四散をして、霧散した闇が妖槍に吸収され、白メダルが『鼠』メダルに変化をする!


「先ずは1体!」


 狭い戦場では、長柄武器は向いていない。乱戦では白メダルをセットしたまま長柄武器を振り回せば、攻撃対象に当たる前に、ザコに当たって白メダルを反応させてしまう。総合的に、ガルダの装備は近接戦闘には向いていないのだが、そこは創意工夫で戦う。




-3階-


 妖刀ホエマルを装備したザムシードが子妖の群れに突っ込む!子妖を祓って蹴散らし、二口女の懐に飛びこんで、腹の鬼印に妖刀の切っ先を叩き込んだ!鬼印が消滅をして、二口女の動きが鈍る!それを見たザムシードは、妖刀に白メダルを装填して、二口女を突いた!闇が散って妖刀に吸収され、依り代にされていた少女が倒れる!


「・・・無事か?」


 確認をすると、依り代少女は意識を失っているものの、息は整っており、表情は穏やかだ。


「3階にはあと1体!」


 教室内では、子妖に憑かれた生徒に囲まれて、数人の正気な生徒達が机や椅子で応戦をしていた!ザムシードは、教室内に踏み込んで子妖達を斬って、正気の生徒達を救出する!


「学校の中はカオス状態だ!外に逃げろ!」

「は、はいっ!」


 ザムシードは、生徒達を庇いながら階段まで誘導!「怖くても駆け降りろ!」と指示を出して見送ったあと、再び、3階でひしめく妖怪と子妖の群れに突っ込む!

 妖刀一本で戦うと、子妖は一撃で祓えるが、本体に対してはダメージを与えたあとで白メダルをセットして改めて斬らなければならない。弓銃カサガケでは本体に対しては有効だが、子妖に向けた場合は攻撃力が高すぎて依り代にもダメージを与えてしまう!


「ならばっ!」


 妖刀を左手に持ち替え、右手には白メダルを装填した裁笏ヤマを装備して、二刀流で妖怪の群れに突進していくザムシード!左手に握った妖刀を振り回して子妖を祓って掻き分け、二口女が絡み付かせてきた長髪を振り払い、接近をして裁笏で突く!2体目の二口女が闇になって散り、裁笏に吸収されて、白メダルが『二』メダルに変化する!


「これで2体!・・・3階はこれで終わりのはず。」


 4階からは、生徒の悲鳴や、妖怪の嘶きが聞こえてくる!ザムシードが階段を駆け上がると、出会い頭に子妖3体を叩き伏せた!直後に、突進をしてきた1つ目入道の体当たりを喰らって弾き飛ばされる!


「くっ!」


 素早く体勢を立て直して構える。チラ見で確認した教室の札は「3年○組」。4階には5体の妖怪が発生しているはず。各階のうちで3年生のフロアに妖怪の発生率が高いのは、受験目前で思い悩む生徒が多くて憑かれやすいから?それとも、4階に鬼印が多く存在したから?ザムシードは、数秒ほど思考をしたが、「今は余計なことを考えても意味が無い」と振り切って、1つ目入道に飛び掛かる!



-2階-


 妖槍で突かれた二口女が霧散!既に、1階の妖怪は全て倒した!2階に残る妖怪は、あと1体だけ!だが、その‘残る1体’は、他の妖怪達より格上の中級妖怪だ!ガルダは、中級妖怪の気配を探り、「いる」と思われる場所に駆け出す!


「ひぃぃぃっっっっっ!!!」


 生徒が栄螺頭の子妖に追われて、教室から飛び出してきた!別の生徒が、襲われた生徒を救出するために椅子を振り上げながら突進をして、子妖の背中に思い切り叩き付ける!


「このやろうっ!!」

「カイカイッ!」


 だが、子妖は微動だにせず!振り返って、椅子を持った生徒に襲いかかる!


「ん?・・・あの少年は?」


 木山少年だ。妖槍を振るって子妖を祓い、木山達を救出する。彼等が飛び出してきた教室の中には、子妖が5体と本体が1体。ガルダは伸縮自在の妖槍を振るって、子妖5体を瞬く間に祓い、本体の動きに警戒をしながら木山に視線を向けた。


「ここ(2階)は戦場になる!逃げるんだ!」

「で、でも!」

「憑かれた連中は、皆、無事だ!心配をしなくても良い!」

「わ、解りました!」


 ガルダに促され、木山は仲間と共に退避をする。激励会の時と比べて、彼の目には精気が宿っていた。憑いていた妖怪が祓われたから当然なのだが、彼自身が立ち直ったのは、燕真が説教をして導いたおかげなのだろう。

 退治屋の責務は、少年の人生相談ではなく、速やかに妖怪を退治すること。燕真の功績は、退治屋の価値観では何の意味も無い。


「未熟を容認するつもりは無い・・・が、少年が救われた事実は認めても良いか。」


 ガルダは、教室内に残った1体を睨み付ける!

 ザムシードに3階と4階を任せた理由は、未熟なザムシードよりも、戦闘経験豊富なガルダが、中級妖怪と戦った方が被害を食い止められるから・・・。ヒューマニストのザムシードにはそう説明をしたが、本心は違う。


「鬼は・・・皆殺しだ!」


 2階で発生した中級妖怪は栄螺鬼。未熟なザムシードは、「強い妖怪がいる」としか認識しなかったが、ガルダは「憎むべき敵がいる」と把握していた。鬼の壊滅は、狗塚家の悲願。他者に鬼の処理を任せる気は無い。

 ガルダは、栄螺の兜を被った鎧武者に、妖槍の矛先を向ける!


「カィィィィッッッッッッッッッッッ!!!」


 日本刀を装備した栄螺鬼が、雄叫びを上げて突進をしてきた!距離が10m以内に入ったところで、刺突を放つガルダ!切っ先が伸びて栄螺鬼を襲うが、日本刀で受け流された!ガルダは、直ぐに妖槍を通常サイズ(2m)に縮めて再び刺突を放つが、今度は栄螺鬼の頑丈な鎧に阻まれ、接近をされたガルダは日本刀の一撃を叩き込まれてしまう!返す刀を辛うじて回避したガルダが、数歩後退して構える!


「チィッ・・・ザコとは違うか。」


 下級妖怪程度なら、場に適さない武器でも戦えた。だが、狭い戦場では槍を自在に振り廻せないことを中級妖怪には見透かされているのだ。


「鬼め!・・・俺の武器を槍だけだと思うな!」


 ガルダは、武器を鳥銃・迦楼羅焔に持ち替える!


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