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妖幻ファイターザムシードⅠ 凡人ヒーローと天才美少女の物語  作者: 上田 走真
番外①・ァタシをプールに連れてって
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番外①-2・飛び乗れ紅葉~鉄球ビーチボール

-数分後-


 スタート台から50mプールに飛び込んで、まっしぐらに泳いでいる燕真の姿がある。皆と遊ぶとか、連れを気遣うという素振りは一切無く、ガチで泳いる。

 数人の男女でプールに遊びに来て、協調をせずに1人で黙黙と泳げば、「空気が読めない奴」「一緒に来ても面白くない」と言う評価を受けるだろう。だが、燕真は、ワザと空気を読めない行動をしていた。


(これで、愛想を尽かされて、二度と、このグループには呼ばれなくなるだろう。

 俺のことは放っておいて子供達だけで遊んでろ。)


 燕真の泳ぎを眺めていた少年少女は「自分達は、あっちで遊ぼうぜ」って空気に支配される。それが、あえて空気を読まない燕真の魂胆。ツレを無視して泳ぎながら、少年少女が燕真抜きで遊ぶタイミングを待っていた。


「あはははははっ!雌代~!僕達は、どんな時でも一緒だよ!」 

「うふふふふっ!雄太さぁん!何が有っても離れないわ!」


 同じ50mプールでは、20代前半くらいのカップルが、仲睦まじく寄り添いながら泳いでいる。紅葉は、ガチ泳ぎ中の燕真を眺めつつ、バカップルを見て羨ましく感じていた。


「よぉ~し!ァタシもっ!」


 向こう岸でターンをした燕真が、クロールで水を掻きながら戻って来る。バカップルごっこを希望する紅葉は、燕真がゴールをする予定のスタート台に立って、燕真に手を振って声を掛けながら到着を待った。


「燕真ぁ~!頑張れぇ~!あと少しでゴールだよぉ~!」

(紅葉が待ってやがる!これは、気付かないフリをするべき!)


 絡まれたくない燕真は、クイックターン(前方宙返り)をして力強く壁を蹴った!これで、紅葉は接触を諦めて、仲間内で遊ぶはず!・・・と思ったのだが、考えが甘かった


「燕真っ!・・・とぉうっっ!!」


 燕真がクイックターンをした直後!紅葉が、スタート台を蹴って、勢い良く足から飛び込んで、燕真の背中に跨がって、しがみついた!


「ぐぇぇぇっっっっっ!!!」

「ァタシを乗せたまま泳いでっっ!」


 決して重くないが、いきなり上から過重を受けた燕真は、泳げなくなって沈み、紅葉にしがみつかれたまま立ち上がった。背中に、紅葉の胸が押し付けられる感覚があり、普段ならばきっと嬉しいんだけど、今はどうでも良い。


「あれぇ?泳がないの?」

「無茶言うな!・・・てか飛び乗るな!背骨が折れたかと思ったぞ!」

「折れてないからダイジョブ!泳いでよ!」

「バカ言うな!

 どこの世界に、女子高生を背中に乗せたまま、プールで泳ぐマヌケがいる!」

「1人くらいいてもイイぢゃん。」

「良くないっ!俺は1人で泳いでいるから、オマエ等は勝手に遊んで・・・」

「ならさっ!みんなでビーチボールやろっ!」

「嫌だよ!何が楽しくて、高校生の集団に混ざらなきゃならないんだよ!」

「ボールを取り損なった人が負けで、みんなにソフトクリーム奢るのぉ!」

「・・・俺の話聞いてる?まだ、参加するって言ってないぞ!」

「燕真に、参加をしなぃって選択肢ゎ無ぃ!」

「・・・おいおい」


 スタート台から飛び込んで、泳いでいる人に体当たりをしてはいけません。言うまでも無く、プールの監視員さんに怒られました。


「なんで俺まで怒られなきゃならん?」

「ドンマイドンマイ!ァタシの保護者なんだから仕方無いぢゃん!

 今度から飛び乗らないように気を付けるね。」

「『今度』じゃなくて最初から気を付けろ!」


 燕真には「紅葉の保護者」以外の権利は無いらしい。怒られた張本人は、全く反省をせず、燕真の手を無理矢理に引っ張って、既にビーチボールで遊んでいた仲間達の輪に加わる。


「よしっ!みんな揃ったから、ゲームやろうっ!」

「おっ!いいね!」

「・・・みんなの中に、俺を加えないでくれ。」


 ビーチボール対決が始まる。誰に向かってビーチボールを上げても良いが、ボールを上げる時にパスを出す相手の名前を言うこと。言うまでもなく、ビーチボールを取り損なったら負け。ただし、打ち上げたボールが相手に全く届かない場合、豪快に逸れた場合は、打ち上げた人のペナルティーで、3回ペナルティーが貯まったら負け。


「ガキ相手にビーチボールやって、大人げなく俺が勝って、ガキに奢らせるってか?

 ・・・メッチャ気が重いんだけど。」


 特殊ルールとして、ボールを受けなければならない者が取り損なった場合でも、別の者が代わりにボールを取ってフォローすれば、ゲームは続行される。つまり、負けない為に同盟を組むのはOK。状況次第では、一個人を潰す為に、1対6という戦いにもなる可能性があり、且つ、味方だと思っていた者が、いきなり裏切って不意打ちを入れることもある。個人戦と言いながら、味方を作り、組織力を持った方が有利な、熾烈な争いなのである。


「たかがビーチボールに、なんて大げさな解説なんだよ!?」


 美希が軽く上げたビーチボールを亜美が受け、紅葉に廻って、永遠輝にパスが出て、燕真が受けて軽く上げて、行照が受けて、その後、紅葉→優花→燕真→永遠輝→燕真→美希→紅葉→永遠輝→燕真→亜美→優花→美希→永遠輝→燕真→亜美→永遠輝→燕真→行照→永遠輝→燕真へと和気藹々としたパス回しが続く。


「あのクソガキ~~~~!」


 永遠輝がボールを上げる時は「佐波木さん」の名前しか呼ばない。どうやら、徹底して燕真潰しを狙っているようだ。


「ぁっ!また、佐波木さんのところに行った!」

「ァレェ~~?燕真と永遠輝、ぃっからそんなに仲良くなったのぉ?」


 周りも、永遠輝が燕真にしかボールを出していないことに気付き始めた。ガキが上げたボールを受けることなど容易いが、正直言って、永遠輝から独り狙いをされて、かなりウザイ。


「仲良くなってね~よ!一方的に狙われてんだ!」


 ボールは燕真から亜美へ、亜美から紅葉へ、そして紅葉から美希へ、美希から永遠輝へと廻される!誰もが、「永遠輝は、また、燕真を狙うんだろうな」と考える!・・・が、燕真はこのタイミングを待っていた!素早く美希と永遠輝の間に入って、ボールが落ちてくる前に飛び上がり、永遠輝に向かってアタックを叩き込んだ!


「ちょっと大人げ無いが、大人の強さを見せてやる!・・・吉良君っ!!」


 まさか、「他者のフォローOK」ってルールを、燕真が「永遠輝からボールを奪って永遠輝に叩き込む」という形で逆手に取るとは、誰も考えていなかった!永遠輝は、加速して向かってくるボールに、慌てて対応!辛うじてボールに手を当て、ボールは勢い無くヘロヘロと打ち上がり、風に乗って移動をする!


「これで勝負有りだ!だけど、俺は負けたくないだけ!

 ソフトクリーム代は俺が払ってやるから安心しろ!」

「・・・くそっ!」


 永遠輝は、ボールを打ち上げる時に、誰の名も呼んでいない。指名をされていない場合は、自分で拾うしかない。しかし、体勢を崩している永遠輝では対応できない。・・・が!

 行照が永遠輝の背後に回って「永遠輝!」と名指しをしながら、高々ととボールを打ち上げやがった。


「サンキュー、行照!」

「俺達の友情パワーで、トドメを刺せ!」

「おうっ!」


 少年達の美しい友情である。体勢を立て直した永遠輝が「佐波木さん」と名指ししてビーチボールに手を伸ばす!その時、ビーチボールから僅かに妖気が発せられ、紅葉が反応をする!


「んぇっ!?」


 永遠輝が、燕真目掛けて渾身のアタックを打ち込んだ!


「負けんっ!」


 ビーチボールの下に入って構える燕真。ビーチボールの影が、燕真の頭を差す。真顔になって、ボールを見つめる紅葉!永遠輝が打ち込んだビーチボールが闇の妖気を纏っている!


「燕真っ!危なぃっっ!!」

「・・・なっ!?」


 咄嗟に燕真に飛び付いて、燕真をボールの落下地点から退かす紅葉!燕真と紅葉は縺れ合いながら、プールの中に沈む!その直後にビーチボールが‘ドボォンッ’と大きな音と水しぶきを上げて水面に叩き付けられ、、ブールの床に‘ドスン’と落ちた!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へっ?」

「ぁ、危なかったぁ~~~。」


 何故だろうか?プールの中には鉄球が沈んでいる。自分達は今まで、鉄球をビーチボールと勘違いして遊んでいたのだろうか?そんなモンで遊んだら、普通に死ぬぞ。


「んなバカな!?どうなってるんだ!?」


 鉄球は沈んだまま。水面から顔を出した燕真が、驚いて周囲を見廻す!・・・が、少年少女は、ドン引きした表情で燕真と紅葉を見つめていた。


「あ、あの・・・2人の仲が良いのは解りましたけど・・・。」

「・・・はぁ?」

「抱き付くとかそゆ~のは、私達の目の前じゃなくて、

 2人きりの時にやってもらえませんか?」

「目の前でイチャ付かれるのを見る私達の方が辛いです。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「リョーカイ!2人きりになったらギューするねっ!」

「あほっ!そこを肯定すんな!」


 一応、決着が付いたし、バカップルぶりを見せ付けられて続ける気が無くなったので、これでビーチボール勝負は終了。燕真と紅葉を残して、少年少女はプールサイドへと上がる。

 ところで、ボールを返せなかった燕真の負け?それとも、妨害のペナルティーは決めていなかったけど、燕真に体当たりをして妨害した紅葉の反則負け?


「まぁ、どっちでもいいや。

 バカップルのどっちかが、ソフトクリームを奢ってね。」

「おいおい・・・

 少年少女よ、もっと疑問に思わなきゃならないことが有るだろう?」


 沈んだままになっていたビーチ-ボールが、ようやく浮かび上がってきた。燕真が確認すると、どう見てもビニールに空気が詰められただけの物。水に沈むような代物ではない。


「どうなってんだ?」

「妖怪の仕業だよ。ビーチボールに妖気が籠もって、重くなったの。」

「・・・マジで?」

「ぅんっ!さっき一瞬だけ、ビーチボールから妖気を感じたよ。

 もしかしたら、トワキに何かが憑いてるかもっ!

 でも今は感じないの。」

「しばらくは様子見ってことか?」

「そ~なっちゃうね。」


 紅葉の体当たりは反則なんだけど、紅葉が妨害してなければ燕真は鉄球で頭を割られて死んでいたかもしれない。


 紅葉にソフトクリーム代(1個200円)を払わせるわけにはいかないので、全員分を燕真が出費してあげました。

 その後、燕真と紅葉は、永遠輝の動向を注視するが、頻繁に睨まれる以外に異常が発生しない為、やがて、警戒を解きレジャーモードに戻るのだった。


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