番外①-1・プールの誘い~紅葉の友人たち~水着被り
※番外は読み飛ばしても後に繋がりに影響が無いストーリーです
-YOUKAIミュージアム・20時過ぎ-
閉店後、燕真はフロアのモップ掛けをして、紅葉は‘聞く気の無い燕真’などお構い無しにマシンガントークを続けながら食器洗いをしている。
「それでさ、それでさ、ユーカとトワキの所為でチョット険悪になっちゃって、
ァミが『なら、みんなで行こぅ』って仲裁してくれたの!」
「ユーカ?また、知らない名前が出て来やがった。」
「ぁれぇ?藤林優花だょ!燕真、ユーカと会ったことないっけ?
道路に建っている‘40’って書いてある丸いカンバンみたいな顔の子!」
「無~よ!・・・てか、40キロ制限の標識みたいな顔!?」
燕真は、紅葉が言う友人のことなど解らない・・・が、それ以上に、「法定速度40キロの標識」顔がどんな顔なのか想像できない。顔がまん丸で背が高いのだろうか?
「アミゎ知ってるよね!?」
「絡新婦の子に憑かれた子だっけ?」
「そぅそぅ!桜アンパンみたいな子!」
「その表現をされると解らなくなる。」
「ミキゎ!?太刀花美希!」
「知らん!」
「自転車の籠みたいな子!」
「知らね~よ!・・・てか、自転車の籠?」
燕真には「自転車籠」顔なんて全く想像できない。
「だったら、教えてあげるよ!」
「知らないままで良いよ。」
「だからさ、燕真も行こぅょ!」
「了解・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え!?何処へ!?」
「さっき話したぢゃん!プール!」
「・・・・・・・・・・・・なんで?」
「もぉ~!さっき話したぢゃん!
ァミがの水着のサィズが合わなくなって、新しぃのを買ぅことになって、
ぉ披露目を兼ねて、ァミと、ユーカと、ミキと、
トワキと、イケテルで行くことに決まったから!」
「ま~た、変な名前が出て来やがった。」
「ァレェ?大石行照も知らなぃっけ?
トワキと一緒にいて、カモシカとカエルを足して3で割ったみたいなヤツ!」
「・・・知らん!イケテルどころか、トワキも初耳だ!」
カモシカと蛙を足すのもかなり難しいが、『2』ではなく『3』で割るというのは、どうイメージすれば良いのだろうか??・・・理解に苦しむ。
「・・・てか、オマエ等が友達内で行くのは勝手だが、
なんで俺が挟まらなきゃならないんだよ!?
明らかに場違いだぞ!」
「プールだょ、プール!水着だょ!」
「ガキの水着には興味無い!」
「ァタシもァミと一緒に新しい水着買ぅんだけど、
燕真ゎビキニとワンピと、どっちがィィ!?」
「聞けよ人の話!ガキの水着には興味無いって!」
「ねぇ、どっちがィィ!?」
「・・・ワンピース!ガキが背伸びして無い色気を振りまくなっ!!」
「ぉ色気ぁるもん!Cカップだもん(公式ではB)!!
嘘だと思ぅなら、触ってみなょ!
燕真ゎヘンタィぢゃなぃから、チョットだけなら触ってもィィョ!」
「・・・はぁぁっっ!!?」
燕真は、紅葉の思い掛けない発言を聞いて、鼓動を高鳴らせ、思わず、紅葉の顔と胸を交互に眺めてから赤面してしまう。紅葉が着ているのはバイト用のメイド服。決して、女性らしいボディラインが協調された服装ではないが、女の子らしい胸の膨らみはそれなりに整っている。
「い、嫌だ!」
「なんでなんで!?」
「『なんで?』じゃないだろ!頼むから、もう少し自分が女という自覚を持て!!」
燕真は興味が無いと薄情な態度を取るが、内心では「紅葉の水着」には興味がある。健康的な色気のある紅葉が、どんな水着に身を包むのか見てみたい。発育中の胸と尻、引き締まった腹、ビキニ姿が似合いそうだ。だが、他の男共にもビキニ姿を見られるのは、あまり良い気分ではない。ワンピで魅力的な体を隠すのは勿体ないが、仕方ないと考える。
「まぁ、だからって22歳のオッサンが、
ガキ共に紛れ込んでプールに行く気にはなれないが・・・。」
実は、お言葉に甘えて、一瞬で良いから自称Cカップ触ってみたい。紅葉は過大評価をして下さっているが、燕真だって、一皮剥けばヘンタイに変化をする一般的な男だ。余裕で理性が吹っ飛んで、判断を間違っちゃう可能性が極めて高いので、変な誘惑は止めていただきたい。
「あ~ぁ・・・
大学時代なら、もう少し、こんなノリには、軽く便乗していたんだけどなぁ~~。
どうも、これ(紅葉)が押し掛けるようになってから、調子が狂う。」
「ん!?何か言った、燕真!?」
「・・・いや、独り言!」
燕真は、「大学時代のコンパでは、酒の勢いでスキンシップををはかって親密度を上げていたこともあったな」等と、しみじみと古き良き時代を思い出す。
-3日後・大型プール施設-
「みんな、もう来てるねっ!」
燕真が、タンデムに紅葉を乗せて到着をすると、既に少年少女が入り口の前で待っていた。亜美の周りにいる2人の女の子が「ユーカ’とミキ」だろうか?片方はスリムで紅葉より長身(亜美よりは低い)、もう片方はスタイルの良い体格(亜美ほどではない)で洒落た服装をしている。ただし、どっちが「40キロ制限の標識」で、どっちが「自転車籠」なのかは全く解らない。
一緒に居る男子のうちの片方が、「なんだアイツ?」と言いたげな表情で燕真を睨み付けているのだが、彼が永遠輝なのか行照なのかは不明。
「俺だって、来たくて来たわけじゃね~よ!
場違いってことくらい解ってる。」
紅葉は、タンデムから降りて、笑顔で手を振りながら仲間達の所に駆け寄って行く。溜息をつきながらヘルメットを脱ぐ燕真。亜美と、その他2人の女の子(ユーカ&ミキ)が、紅葉を出迎えて早速話しかける。
「どっかで見たことある人だね。」
「え?なになに?あの人だれ?」
「紅葉ちゃんの彼氏?」
「チガウチガウ!」
「ちょっとカッコイイね。」
「取っちゃダメだよ、ユーカ。」
「やっぱり彼氏なの?」
「チガウチガウ!」
「格好良いかな~?私には、普通にしか見えない。」
「格好良いぢゃん!ミキにゎ、燕真の格好良さが解らないの?」
「格好悪いとは言わないけど、
顔も雰囲気も普通というか、平凡というか、
会社で出世しそうにないタイプというか・・・。
紅葉って、あ~ゆ~‘その他大勢’みたいな人が好きなんだ?」
本人達はコソコソ話しているつもりなんだろうけど、全部聞こえている。女子高生とは残酷な生き物だ。燕真は髪形や服装などで2枚目を気取っているつもりだが、イケテル女子高生の視点ではモブ扱いらしい。地味のショックだ。
(・・・帰りたくなってきた。)
燕真が寄って行くと、亜美とスリムな女の子が笑顔で挨拶をしてくれる。
「こんにちは。クレハの友達の平山亜美です。」
「藤林優花です。紅葉ちゃんと仲が良いんですか?」
「あぁ、どうも。佐波木燕真です。」
スリムで真面目そうな子が「ユーカ」らしい。それなら、口が達者でオシャレな子が「ミキ」ってことか?燕真は美希にも挨拶をするが、美希は興味なさそうに会釈をするだけ。
男子2人のうちの片方は軽く挨拶をしてくれたが、もう片方は会釈すらせずに燕真を睨んでいる。
「なぁ、紅葉?俺・・・アイツの機嫌を損ねるようなこと、なんかした?」
「してないと思うよ。まだ、会ったばっかりぢゃん。」
「・・・だよな?」
堪りかねて、小声で紅葉に質問をするが、紅葉にも心当たりは無いらしい。
「トワキ、普段ゎもっとヘラヘラしてるのに、なんで、今日ゎ機嫌悪いんだろ?」
「へぇ・・・普段は愛想が良いんだ?
人相が悪い少年が永遠輝で、もう片方の普通の少年が行照・・・か。」
とりあえず、2人の少年のうち、どっちが吉良永遠輝で、どっちが大石行照なのかが把握できた。
グループは、入場をして、「着替えたら、ウォータスライダーの前に集合」と決めて、それぞれの更衣室に分かれる。
-男子更衣室-
未就学くらいの男児が裸で、パパに着替えを手伝ってもらっていたり、もう隠す羞恥心も無いようなメタボなオッサンが全裸で着替えたりしている。
燕真が、適当なロッカーを選んで不要な荷物を突っ込む。高校生2人は、離れた場所でキリ番なロッカーを選んでいる。キリ番に拘るあたりは、「まだまだガキ」と少し可愛らしく感じる。
燕真が、カーテンを閉めた個室で、花ガラの入った可も不可も無い黒いサーフトランクスに着替えて出て来たら、既に男子2人は着替え終わっていた。
2人とも、元気な高校生らしい、引き締まった体付きをしているが、筋肉勝負は燕真に軍配が上がった。まぁ、退治屋として日々肉弾戦に身を投じている燕真が、平和に身を置く高校生に体格で負けるわけがないのだが、永遠輝は少し悔しそうに、燕真の腹筋や胸筋や腕筋を睨み付けている。
・・・が、問題は其処ではなかった。
「おっ!?永遠輝と佐波木さん、同じヤツじゃん!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え!?」×2
行照は青いチェックのサーフトランクスで、永遠輝は花ガラの入った赤いサーフトランクス・・・燕真と永遠輝は色違いだがガラが丸被りである。
「へぇ~・・・同じセンスしてるんだな!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2
「もしかして、永遠輝と佐波木さん、気が合うんじゃね!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2
「昨日、気合い入れて3時間かけて悩み抜いて選んだ水着が、
佐波木さんと同じだなんて、面白れぇ~~!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2
ちなみに、燕真は、一昨日に2時間を費やして、悩みながら水着を選んだ。燕真は永遠輝とは違って相手を目の仇にしているわけではないが、「まるっきり被ってしまって恥ずかしい」って気持ちはある。
更衣室を出て、待ち合わせ予定のウォータスライダー前に到着する燕真達。しばらくすると、水着に着替えた美しい花々が合流してきた。
「ぁれぇ?佐波木さんと永遠輝くん、ぉ揃ぃの水着?」
「あ!ホントだぁ~!!色違いで被ってる!」
「2人で一緒に買いに行ったの?」
「燕真とトワキ、ぃつの間に、そんなに仲良くなったのぉ?
もしかして、前から知り合い?」
男共としては、もう少しジックリと、瑞々しい花々を堪能したかったのだが、いきなり‘被り’を気付かれて、恥ずかしい現実に引き戻された。
「知り合いではない!」
「仲良くね~よ!このガラなら赤の方が格好良いだろ!」
「どうでも良いことで争わなくて良いって。
どっちもモブなんだから似た格好していても問題無いでしょ。」
「美希ちゃん、それはヒドいよ。」
「せめて、聞こえないところで言いなよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・俺、主人公なんだけど」
女子高生とは残酷な生き物だ。必死になって存在感をアピールしようとしていたモブ男子(永遠輝)を一撃で黙らせてしまった。
「ねぇねぇ、燕真、見て見て!」
水着丸被り事件には興味を持っていない紅葉が、燕真のところに寄って来て、燕真だけに見えるように、ワンピース水着の襟を広げる。中には、魅せる為の水着を着ているが、隠された状態で見せられると、ちょっと照れてしまう。
「ビキニとワンピのセット買っちゃったぁ!
今日ゎ、みんないて恥ずかしぃからワンピだけど、
燕真が2人きりで海に行った時ゎ、ビキニの方を披露してぁげるねぇ!
ぃつ(海に)行く?来週?早く行かないと、夏が終わっちゃう!」
「い、行かね~~よ!」
紅葉の、燕真だけに対する積極さに、赤面をする燕真。思わず、紅葉をバイクの後ろに乗せて、海に遊びに行く光景を想像して「悪くない」と考えてしまうが、直ぐに否定をする。