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妖幻ファイターザムシードⅠ 凡人ヒーローと天才美少女の物語  作者: 上田 走真
第8話・紅葉がアイドル(vs枕返し)
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8-1・紅葉は看板娘~塾と友人~割井のスカウト

第8話は、同時投稿をしている本作の簡易版【妖幻ファイター】ではカットされたストーリーです。

-YOUKAIミュージアム-


 相変わらず、喫茶店部門の売り上げは見事。紅葉は、元々料理の腕には自信がある。空き時間に様々な発案し、燕真を実験台にして改良を重ね、店のメニューへと昇華させる。特に、紅葉がレシピを考えた『パワフルビザトースト』『メガトンハンバーグスパゲティー』『モンスターパフェ』は大当たりだった。

 近所に住む粉木の茶飲み友達が希に来る以外は、全てが紅葉目当ての太い客。アイドル好きが、推しアイドルのグッズやCDに金を使うように、身近なアイドルの紅葉に様々な飲食を注文して、喫茶部門に金を落としてくれる。

 ただし、燕真が妖怪事件の調査で店を不在にすると紅葉は不機嫌になる。燕真が喫茶店部門に顔を出すと、紅葉が客そっちのけで燕真に絡むので、客が不機嫌になる(ついでに、燕真が恨まれる)。主たる仕事が喫茶店ではないYOUKAIミュージアムとしては、調整がなかなか難しいのだ。


「紅葉ちゃ~ん!写真撮ろうよっ!」

「はいは~い!」


 客に要求をされた紅葉が隣に並んだ。あまりベッタリとは寄り添わず、それでいて距離を空けすぎない距離で、自撮りに収まる。ツーショットをインスタやSNSに上げるのは自由だが、「どこで撮影したか?」「隣で写っている美少女がどこの誰なのか?」は解らないように、背景には気を付ける。それが、ツーショットを求めるルール。客達は、紅葉の評判が広まって「俺達の紅葉ちゃん」が、今以上に知名度を上げて、手が届かない存在になることを恐れているのだ。


「紅葉ちゃん、またね~!」

「アリガト~ございましたぁ~!」


 本日は夏期講習が休みなので、紅葉は1日中バイトに精を出した。閉店時間の18時になり、最後の客が店を出ると同時に、「客がいる時は1階立入禁止」の燕真が2階から降りてきて、適当な椅子に腰を降ろす。すると紅葉が、向かい合わせの椅子に座った。


「ふぇ~~~・・・忙しかった~~~。」


 燕真が、カウンター内で洗い物をしている粉木に視線を向ける。


「なぁ、ジジイ?」

「なんや?」

「妖怪事件で俺が出払った途端に、紅葉が職場放棄するんじゃ話になんね~。」

「だってぇ~~・・・燕真だけ調査に行くのズルいんだもん。」

「だからさ、ジイさん。

 紅葉が俺と一緒に調査に出てもサテンが維持できるように、

 もう1人くらいバイトを雇ったらどうなんだ?

 例えば、絡新婦の時に巻き込まれた紅葉の友達とかさ。」

「アミのこと?」

「名前までは解らん。」

「アミゎ桜アンパンにソックリな子!

 中学の時は桜餅に似てたけど、今は桜アンパンなの。」

「・・・桜アンパンって言われてもよく解らないけど、ボブカットの子。

 確か、結構可愛かったよな?」

「ぅんぅん、アミ、めっちゃカワイイよ!

 でも、アミゎ、文架大橋の近くのDOCOSファミレス

 バイトしてるからなぁ~。」

「その子じゃなくて、他の子でも良いし・・・。」

「ミキとかユーカ?」

「名前を言われても解らん。」

「ミキゎ自転車の籠みたいな子で、

 ユーカゎ道路に立ってる40キロのひょーしきみたいな子。」

「・・・尚更解らん。」   ※美希と優花は現時点では未登場


 しばらくは黙って聞いていた粉木が口を開く。


「無理やな。」

「なんで?もう1人雇うくらいの売り上げはあんだろう?」

「アホンダラッ!そない問題やない!

 此処でバイトするっちゅ~事は、必然的に退治屋の活動を知ることになる。

 部外者のお嬢が入り浸ってるだけでも特例やちゅうのに、

 別の者まで深入りさせるわけにはいけへんやろう。」

「ああ・・・なるほど。」

「そっかぁ~~・・・ん~~~ザンネン。」

「調査だけやったら燕真が行く。

 妖怪が発生したら、お嬢に留守番してもうて、ワシと燕真で行く。

 妖怪が発生せえへんと経営が成り立てへんさかい、茶店は維持する。

 忙しいかもしれんが、これが今の最善なんや。」

「そりゃそうだな。」


 話は終わり、燕真は店の清掃を始め、粉木は洗い物を再開して、稼ぎ頭の紅葉は座ったままスマホで、客のFacebookやインスタを一通りチェックする。紅葉とツーショットの画像はアップされているが、プライバシーや撮影場所の手掛かりになる情報は無さそうだ。各コメントに【いいね】をした後、スマホをポケットにしまって立ち上がり、後片付けを手伝う。

 燕真的には、手掛かりの有無にかかわらず、紅葉と客のツーショットは不満だが、紅葉が「ただのエーギョー」「お客さんとなんて仲良くならないよ~」と言うので黙認をしている。




―数日後の夕刻・文架駅前商店街の一画―


 『あやかゼミナール』って看板を掲げたビルの正面玄関から、高校生が吐き出されて左右に散って行く。その中に、紅葉と亜美、同じ高校の太刀花美希&藤林優香の姿がある。美希と優花は文架南中の出身の幼馴染み。高校1年生の時に、紅葉と美希、亜美と優花が同じクラスで仲良くなり、2年生になってからも、4人で行動をする機会が多い。


「ふぇ~・・・疲れたぁ~。」

「亜美は、今からバイト?」

「今日はお休みだよ。」

「紅葉は、この時間だと、バイトは無いよね?」

「ぅん、もうお店、終わってる。」

「なら、軽くご飯行かない?」

「ぅんぅん、行こう。お腹すいちゃった。」


 4人が駅前のファーストフードに向かおうとしたら、数人の男達が「あ、あの子だ」と寄ってきた。若作りでチャラいファッションだが、どう見ても30~40代くらい。女子高生視点だと、オッサンの集団だ。


「すいません、源川紅葉さん?」

「そうだけど・・・」

「おおおお~っ」 「イケてますねっ」

「えっと・・・ダレですかぁ?」

「TVトキオの『君達はアイドルの原石』観た事ある?」

「き~たことゎあります。」


 男子の間では話題になっている番組だ。紅葉は見たことが無いが、新人アイドルが集まって、様々なゲームをしたりロケをする。大半は‘新人アイドル’のまま出番を終えるが、中には、スター街道を歩んだり、知名度を得てユーチューバーになって稼ぐ女性もいる。

 紅葉達が困惑をしていたら、リーダーっぽい男から名刺を渡された。チーフプロデューサーって肩書と、割井和留雄わるい わるおって名前が書かれてる。


「俺、プロデューサーの割井わるい、コイツは俺の右腕の木源。

 こっちは製作スタッフなんだけどね~・・・」

「ADの木源登郎です。」


 割井から紹介をされた木源登郎きげん とろうが紅葉に挨拶をする。


「ど・・・ども。」

「キミ、カワイイからさ~、番組のオーディション受けてみない?」

「んぇっ!?ァタシが!?」

「うわっ!スゲー!もしかして本物!?番組に出たら、有名人に会えますか?」


 誘われている紅葉を差し置いて、何故か美希が食い付いてきた。


「オーディションに合格して、番組に参加すればな。

 興味あるの?源川紅葉さんと一緒にオーディションに参加してみる?」

「なんか面白そう!」

「んぇっ?ミキ、参加すんの?」

「なんなら、君達4人で参加しなよ。皆、可愛いから、イイ線行くかもよ。」


 話を聞きながら、露骨に「コイツ等怪しい」と感じていた亜美と優花が、互いの眼を見て頷き、亜美は紅葉の、優花は美希の腕を掴んだ。


「絶対に信用しない方が良いって!」 「そんな甘い話は無いよ!逃げろっ!」 

「アミ?」 「なんで逃げる?」


 それぞれの腕を掴んだまま駆け出す亜美と優花。紅葉は若干の未練を残して振り返りながら亜美に引っ張られ、美希は露骨に未練を残して文句を言いながら優花に引っ張られて渋々走る。


「あっ!待ってくれ!話くらい・・・・・」


 木源が呼び止めるが聞く耳持たず。4人は雑多の中に消えていった。


「あの子(紅葉)、絶対にイケるよ。隙の多さも含めて、典型的な光る原石だな。」


 チーフプロデューサーの割井は、まるで動じていない。自分のスマホを弄って、他人がアップした紅葉の画像を眺めて、不敵な笑みを浮かべる。




-翌日・粉木邸-


「・・・とゆ~わけでね。

 千切れた5千円札みたいヤツのせいで、ご飯に行けなかったの。」

「災難だったのう。」

「ぅん、最悪だったよぉ~。」

「・・・千切れた5千円札?」


 台所で食卓を囲み、紅葉が食パンを囓りながら愚痴る。燕真は、紅葉の言い分が、スカウトされた自慢なのか、純粋な愚痴なのかよく解らず、しばらくは黙ったまま聞いていたが、やがて口を挟んだ。


「オマエさぁ・・・インスタとかXやってる?」

「やってるよ、なんで?」

「ちょっと見せてみろ。」


 慣れた手つきでタップをして、言われた通りの画面を開いて渡した。燕真は画面をスクロールして確認をする。Xで使ってる名前は、紅葉なりに捻って【め~ぷる】。さすがに本名を載せるほど愚かではなかった。


「あっ!このボブカットの子、見たことあるな。」

「アミだよ。」

「こっちにスリムな子は?」

「その子はユーカ。」

「こんなオシャレな子も友達にいるんだ?」

「ミキだね。」

「へぇ~~~~~~~。楽しそうだな。

 ・・・って、そ~じゃね~だろ!

 オマエだけじゃなくて、友達まで顔丸出しじゃね~か!!」


 ハンドルネーム以外が全て赤点。制服姿で友達とカラオケに行った画像や、映えるデザートの後でポーズを聞けてる画像等々、全くの無修正で素顔を晒している。これでは、顔で興味を持たれて、制服で身元がバレる。


「せめて、修正しすぎて原型が解らなくなるくらい盛れや。」

「友達しか見ないからダイジョブと思ってぇ~。」

「オマエの場合は友達の定義がいい加減というか、

 どうせ、ただの知り合いまで友達扱いしてんだろ?」

「・・・ぅん。」

「ツーショットを撮影した連中がアップしたオマエの画像をTV関係者が見て、

 相互登録からオマエのアカウントに辿り着いて、身元がバレたんじゃね~のか?」

「よくワカンナイ。」

「俺は、前々から、安易なツーショット撮影が気に入らなかったんだよ!」

「アレェ?燕真、もしかして妬いてるの?」

「チゲーよ!オマエが迂闊すぎるって言ってんだ!

 これ以上ややこしくなる前に、全部修正しろ!

 今すぐだぞ!店が始まるまで、ずっとやっとけ!」


 紅葉が言った「妬いてる?」はチョット正解。でも、紅葉が調子に乗りそうなので認めない。


「ん~~~~~~~・・・・ワカッタぁ~~~。」


 燕真は、朝食で使った食器を洗い、紅葉は台所の食卓に座ったまま、スマホを弄る。


「よし、終わった!」

「えっ?もう??」


 紅葉がスマホを弄り始めてから10分程度。燕真はまだ食器洗いを終わっていない。アップされていた人物画像全ての修正を終えるなんて不可能だ。燕真は、開店の時間まで、紅葉にアドバイスをしながら修正を手伝おうと思っていたので、少し驚いてしまう。適当にチョットだけ修正して、終わったつもりになってるのか?


「本当か?見せてみろよ!」

「え?見せんのムリっ!」

「なんでだよ!?」

「修正すんのメンドイから、アカウント、全部、落としちゃった。」

「はぁぁっ!?」


 ネット上で綴った思い出を、容赦無く全部消しちゃった?そこまでしなくても良いんだろうけど、「修正が面倒臭い」って理由で、極端に徹底するのが、如何にも紅葉らしい。注意をした燕真の方が、申し訳ない気持ちになってしまった。

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