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妖幻ファイターザムシードⅠ 凡人ヒーローと天才美少女の物語  作者: 上田 走真
第21話・鬼の討伐(vs酒呑童子?・虎熊・金熊)
102/106

21-4・アカシックアタック~巨人の求めた物~大嶽丸

-富運寺-


 EXザムシードを掴んでいたはずの、巨人の両手が弾け飛び、中から妖刀オニキリを掲げたEXザムシードが出現をする!

 無我夢中で応戦したが、何故、助かったのか解らない。ただ、闇に掴まれた瞬間に、ベルトから‘紅葉との精神邂逅’の時と同じ光が広がり、EXザムシードを護ってくれた。安堵したガルダが、EXザムシードに駆け寄る。


「どういうことだ?・・・今のは新しいザムシードの性能?」

「解んね!・・・でも、多分、紅葉の・・・」


 闇に蝕まれる燕真を救った紅葉の強大な霊力は、ザムシードの潜在能力のリミッターカットをしていた。そして、闇に対する防御力を上げていた。

 闇の巨人が、優先的にEXザムシードを取り込もうとした理由は、怪物が、EXザムシードの中にある紅葉の霊力を欲しているからだ。


 背中に大穴を空けられ(ガルダ脱出時)、両腕を吹っ飛ばされた(ザムシード脱出時)闇の巨人が大きく仰け反る!背中の穴が塞がり、失った頭部と両手が再生をしていく!


「キリが無いな!せっかくぶっ壊した場所が直ってく!」

「そうでもないさ!どこを叩けば良いのかは解ったからな!!」

「どういうことだ!?」

「奴の中に取り込まれた時に見付けたんだ!!依り代の場所をな!!」


 ガルダが闇巨人の胸を指さし、その位置に「狙うべき酒呑童子のメダルが密集している」と示す。メダルを直接攻撃できれば、闇の塊は集合を維持できなくなって分散消滅する。しかし、妖砲イシビヤの一撃で喪失させたダメージを考えると、厚い胸板を貫くには、それ以上の攻撃=最強の一撃が必要になる。


「銀塊の念貯蔵量を考えると一発が限界・・・失敗も不発も許されない!

 俺が空で準備をしている間、奴の注意を引き続けられるか?」

「それしか無いんだろ!?・・・だったら、やるっきゃない!」

「頼むぞ!」

「了解!!」


 再び散開するEXザムシードとガルダ!ガルダは闇の巨人の死角に廻ってから空に飛び、EXザムシードは妖刀オニキリを携えて闇の巨人に突進をする!EXザムシードと融合している霊力を欲する闇の巨人は、EXザムシードのみを狙う!


 逃げすぎて町に出さないように、近付きすぎて捕まらないように、闇の巨人との間合いをはかりながら動き回るEXザムシード!妖刀オニキリによる攻撃は、闇巨人に一定のダメージは与えるが、決定打にはならない!・・・しかし、それで充分だ!


 上空では、霊力の隠った銀塊を使い切ってエネルギーを回復させたガルダが、Yウォッチから白メダルを抜いて、胸部の窪みに装填をする!開いていた翼が光り輝きながら今まで以上に大きく広がり、風を帯びる!数枚の護符を取り出し、空中に敷いて指で空に印を切り、邪気祓いの上乗せをする!


「おぉぉぉぉっっっっ!!!行くぞぉぉぉっっっ!!!!

 アカシックッッッ!!アタッッッッーーーーークッッッッッ!!!」


 輝く鳥と化したガルダが、流星のように光の尾を伸ばしながら闇の巨人に突撃をする!



-YOUKAIミュージアム-


「・・・綺麗」

「あれは・・・ガルダの‘迦楼羅変化’やな!」


 紅葉は、粉木の結界に護られながら、眩い流星を眺めていた。



-富運寺-


「おぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!」


 流星化して一直線に突進をしてくるガルダ!それまでEXザムシードばかりを追っていた闇の巨人が「この一撃を喰らってはマズイ」と判断して、両掌を重ねて前に突き出し、流星に対して防御の姿勢になる!


 アカシックアタックと、闇の巨人の防御が激突!ガルダの突進力が、闇の巨人の腕を押し戻す!そして、出力を全開にさせた浄化力が、闇巨人の‘右肘から先’を吹っ飛ばした!しかし、突進力が鈍ってしまい、右手の後ろに添えられていた左手を押し切ることができない!


「おぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!」

「オォォォォォォォォォォォォッッッッッッッン!!!」


 ガルダの突進が徐々に押し戻される!

 闇が厚すぎる。このままでは拙い。何とか左手の防御を破壊しても、肝心の闇巨人の胸板を貫くパワーが無くなる。もはや、エネルギーのストックを持たないガルダは、この一撃で全てを決めなければ成らないのに、渾身攻撃が目標に届かない。 「ここまでか?」「枯れた才能の限界か?」との思いが、ガルダの脳裏を過ぎる。


「うおぉぉぉっっっっ!!狗塚ぁぁぁっっ!!!

 ケツを蹴飛ばされたくなかったら、

 シッカリと足を閉じて踏ん張ってろぉぉっ!!」

「・・・・なにっ!!?」


 流星の尾が伸びる真下の地面!EXザムシードが突っ走っている!


「もう、これしか思い付かねー!」


 必殺技のオーラを纏ったガルダならば、直撃で蹴り殺すのではなく、自分のオーラをぶつけて後押しできるはず!


「根拠は無ーけどなっ!」


 EXザムシードが空高く跳び上がり、蹴りの体勢を整える!呪術を使えるガルダを押し込まなければならない条件下では、力業以外の手段など思い付かなかった!


「エクソシズムキィィーーーッック!!!」


 両足を揃え、全身を硬直させるガルダ!こんな雑な合体技など、経験したことが無い!


「定石もなにも有った物では無い!発想が乱暴すぎるっ!」


 だがそれでも、このまま押し戻されて失敗するよりは、試す価値があるように思える!


 EXザムシードのEXエクソシズムキックが、ガルダの足の裏目掛けて叩き込まれた!

 凄まじい推進力を得たガルダのアカシックアタックが、闇巨人の左手を破壊!推進力を果たしたEXザムシード諸共に光の矢と化して、巨大怪物の胸に突き刺さった!


「依り代・・・あそこか!!」


 EXザムシードとガルダの眼に、『酒』メダル5つを覆った闇の球体が見える!


「あれがコアだ!」


 闇の中枢に到達したガルダは、EXエクソシズムキックの衝撃で痺れる全身と、飛びそうな意識を奮い立たせる!普段ならば、「ある程度回復するまで体を休める」ほどのダメージだが、今だけは、体が動く限りは次の一手を打たなければ成らない!


「うおぉぉぉぉぉぉっっっっっっっ!!・・・オーーーーンッッ・浄化っ!!」


 闇巨人の中にある依り代目掛けて、用意しておいた護符を放ち、更に残された霊力を、思いの丈と共に叩き込むガルダ!闇のコアは、ガルダの除霊術を受けて粉々に砕け散った!


 その直後、闇巨人の背中から、闇巨人を貫通したガルダとEXザムシードが飛び出す!

 最期の一撃に全てを使い切ったガルダにも、奥義の連続使用をしたザムシードにも、もはや変身体を維持するエネルギーは残されていなかった。怪物から飛び出すと同時に変身が解除され、生身の燕真と雅仁は、地面に向かって真っ逆さまに墜落をする。


「ヤバイ・・・アレを壊すことだけに集中しすぎて、

 倒した後のことまで考えていなかった」

「佐波木・・・余計な心配は無用らしい。」

「・・・ん?」


 次の瞬間には、燕真と雅仁の体は、飛行する異獣サマナーアデスの両腕の中にあった。


「バカもんども!墜落死する気かいな!?

 ・・・少しくらいは、先のことも考えときいや!!

 特に狗塚・・・オマンは、もうちっと計画的なハズやろ!

 燕真の無計画ぶりが伝染しとるで!!」

「ありがとうございます、粉木さん。」

「粉木ジジィ!!無計画ってなんだよ!!?臨機応変と言え!」

「誰が子泣き爺やねん!」


 マントを広げて、地面にゆっくりと着地するアデス。3人は、依り代を失い、もはや集合体を維持できなくなった闇の塊を見上げる。


「ごくろうやったな。」

「・・・終わったな」

「あぁ、これで終わりだ。依り代を失ったコイツには、何もできません。」


 雅仁は、「宿敵の討伐成功」の喜びを噛み締めながら、それは自分1人では為し得なかったと感じていた。出会った当初「未熟者」と見下した男の機転や加勢がなければ、勝利は掴めなかった。以前、粉木が「未熟者だが土壇場では腹が据わる」と評していたことを思い出す。


「確かに・・・凡人に変わりは無いが・・・

 未熟ゆえの意地というものもあるんだな」

「何だ、オマエ?今、スゲー馬鹿にしただろ?」


 雅仁を睨み付ける燕真。しかし雅仁は、燕真に向けて手を差し出している。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「褒めているつもりだ。」

「・・・フン!偉そうに!」


 恥ずかしそうに手を伸ばす燕真。満足そうな笑みを浮かべる粉木の目の前で、燕真と雅仁の手が結ばれる。


「そういや、燕真・・・

 空からチラッと見えたんじゃが・・・また、彼岸カバー割りおったんかい?」

「今回は俺じゃない!狗塚がOBOROの操作をミスったんだ!」

「全て佐波木の責任だ!!佐波木がバイクを蹴飛ばしたんだ!!

 どう考えても、あの状況で、あの攻撃は、必要無かったはずだ!!」

「うわっ!それ言う!?

 せっかく助けてやったのに、少しも恩を感じていないのか!?」

「良く言う!俺ごと轢こうとしたり、蹴り殺そうとしたのは何処のどいつだ!!」

「うわっ!うわっ!もしかしてオマエ、俺の格好良い活躍に嫉妬してんのか!?」

「凡人が無駄に格好を付けようとするから、こんな無様なことになるんだ!!」


「なんやオマン等・・・ようやっと解り合えたと思ったのに気のせいか?」


 巨人は、全身の闇を蒸発させながら力無く両膝を落とし、最後の力を振り絞るかのようにして、肘から下の無くなった腕を南南西の方角に伸ばす。

 粉木と雅仁は、妖気を失いつつある闇の塊が、漠然と新たなる妖気を求めていると解釈した。しかし、依り代を失った闇の塊に、新たなる妖気を得る手段は無い。


「オォォォォォォォォッッッッッッッン!!!

 ・・・見付ケタゾ・・・其処ニ有ッタカ・・・我ガ・・・タ・・・・・」


 離れた所から状況を見守る紅葉は、その聞き取りにくい不気味が言葉が、まるで、自分に語りかけているように思えた。

 それは、闇巨人の最期の咆吼だった。粉木や雅仁の想定した通り、闇は巨人の形を留められなくなり、空気中に融けて完全に消滅をする。




-文架大橋西詰め-


 ビルの屋上で、身長2mほどの漆黒の鬼と、和服を着た女妖怪が、巨大闇塊の終焉を冷ややかな視線で見詰めていた。


「無様だな!!」

「オヌシらしくない顛末ね。」


 女妖怪が足元に視線を移すと、そこには長髪の青鬼=茨城童子が倒れていた。声を掛けられて目覚める。


「ヌゥゥ!大嶽丸と天逆毎!御館様の政敵が、何故、此処に!?」


 鬼神・大嶽丸と、鬼神軍参謀の天逆毎。彼等は、地獄界において、酒呑童子と覇権を争った敵対関係にある。


「敵視をする前に、オヌシを救出した礼くらいは言って欲しいわね。」

「なに!?」


 茨城童子は、闇の巨人に吸収される寸前に大嶽丸達に救出されたのだ。


「オマエの主・酒呑童子は、俺にとっては、憎むべき宿敵ではなく好敵手。

 切磋琢磨できる強敵の復活を祝いに来たら、ただの汚物が暴れ回っている有り様。

 さすがに、驚いたぞ。」

「・・・くっ!」

「呼応した鬼族は、汚物に食われ、オマエを残して全滅。

 ・・・何とも御粗末ではないか?」

「全てが順調だったはず・・・

 何故、この様な事に成ったのか・・・皆目見当も・・・」

「足りぬのだよ、最も肝心な物が!!」

「い、一体何が?」

「魂だ!いくら欠片が集まっても、それを動かす肝心の中核が無いから、

 あのような知性の欠片も無い汚物に成り下がったのだ!

 オマエや、他の鬼共を喰らったのも、

 足りない魂と近しい存在だったからであろうな!」

「そんな・・・バカな?」


 力無く俯く茨城童子。


「我が好敵手・酒呑童子の魂は既に別の何か転生をしてしまった・・・

 ゆえに、此度の呼び掛けに応じなかった・・・そんなところであろうな。

 酒呑が解体をされてから、17年もの歳月が流れておるのだ。

 何があってもおかしくなかろう。

 この度は、その可能性を想定できなかったオマエのミスだ。」

「・・・チィィ」

「まぁ良い。オマエのような有能な鬼を失うのは惜しいゆえに助けた。

 報復を望むならば、我が参加に加われ。兵ならば、いくらでも貸してやるぞ。」

「こ、断る!貴様の手は借りぬ!

 例え、この身1つになっても、私は、我が主の為に働く!

 御館様が別の者に転生をしているなら、それを潰して御館様の魂を取り戻す!」

「そうか。それも悪くはあるまい。オマエの奮闘・・・楽しませてもらおう。」

「・・・フン!」


 茨城童子は姿を闇に変えて飛び上がり、空の彼方に去って行く。

 直後に一陣の風が吹き、砂埃が舞い上がり、大嶽丸と天逆毎は音も無くその場から姿を消した。




-YOUKAIミュージアム-


 闇の巨人が蠢く間、紅葉には、その場に引かれそうになる恐怖感があった。だが、今はもう、妙な干渉力はない。疲れ果てているが、気持ちは落ち着いている。

 戦場の方向を見て、英雄達の帰還を待ち焦がれる紅葉。やがて、誇らしげな表情の燕真が、ホンダVFR1200Fに乗って帰ってくる。


「おかえりっ!燕真っ!」


 満面の笑顔で大きく手を振り、駆け寄っていく紅葉。粉木は、ホンダ・VFR1200Fのタンデムで大手を振る。雅仁はヤマハ・MT-10に跨がったまま、紅葉に向けてサムズアップを返す。

 そして燕真は、少し面倒臭そうにして、額の前で2本指をピッと立てる。優しいクセに、優しさを表現するのが下手な、いつもの燕真だ。紅葉はそれで良かった。


 黒くて厚い雲に覆われていた文架市の空には、いつの間にか、澄み渡った夜空が広がっている。それは、鬼の野望が阻止され、この都市が日常を取り戻したことを意味していた。


ほぼ半分終了しました。

粉木勘平の外伝を挟んで【妖幻ファイターザムシードⅡ】になります。

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