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大ダンジョン時代クロニクル  作者: てんたくろー
第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─

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ソフィアの疑念

 エリス・モリガナ、ラウラ・ホルン、妹尾万三郎を乗せて走るトマス・ベリンガムの車の前方を、もう1台の車が走る。

 こちらは運転するのはシモーネ・エミール。ソフィア・チェーホワとレベッカ・ウェインを乗せての走行で、こちらも特に問題なくストックホルムへの道程を進んでいた。

 

「能力者解放戦線メンバーも、残すところわずかだけれど……やはり懸念は首魁とその腹心のようね。ヴァールからのメモ書きにも記されているわ」

「オーヴァ・ビヨンドにイルベスタ・カーヴァーンですね」

「ええ。元を辿ればあの二人から解放戦線は始まったみたいだから。活動家の青年カーヴァーンが、市井の占い師ビヨンドを担ぎ上げたのが今回のこの騒動のきっかけよ」

 

 ストックホルムを目指すにあたり、ヴァールから切り替わり表出したソフィアが、表裏一体の相棒が記したメモ帳と捜査資料を眺めながら言った。シモーネの隣、助手席でのことだ。

 後部座席はレベッカが半ば以上を占領している。縦にも横にも大きな巨体が、狭苦しそうに車内にて身動ぎしながらも耳を傾けている。

 

 第二次モンスターハザードの起こり──その発端、すべての始まりはどこかと問われれば、首魁オーヴァと腹心イルベスタの出会いがそうと言えるのだろう。

 10年ほど前。フィンランドで占い師としてカルト的人気を博していた彼女に、当時には能力者の権利拡張を訴える活動家だったイルベスタが接近したことは、すでに捜査のなかで判明していた。


 そしてオーヴァを祭り上げて信者を募り、その特異な能力をもって能力者こそ真なる人類であるとする"真人類優生思想"を前面に出したグループをも創り上げたということさえも。

 畢竟、それこそが後の能力者解放戦線だったのだ。能力者大戦および第一次モンスターハザードが終結して間もない頃にはもう、次なる悪意の芽は撒かれていたのである。

 

「ビヨンドという女のデータは、フィンランドの全探組はもちろんWSOにもなかった。イルベスタも同様ね……完全にモグリの能力者として二人は潜伏し、そして時を待っていた」

「あー、そこなんですけどソフィアさん。ヴァールさんはオーヴァって女のスキルに、ずいぶん思うところがあるように見えましたぜ。イルベスタもそうでしたが、なんでも未来を見るとか未来予知とかなんとかって。なあシモーネ」

「そう、ですね……なんかブツブツ言ってたのは見ました。その、何を言ってるかまでは理解ができなかったですけど」

「…………そう」

 

 コインの表と裏のような関係であるがゆえ、直接意思疎通が取れない相方ヴァールの様子を聞かされ、ふむとソフィアは考え込んだ。

 オーヴァ・ビヨンドの力──未来予知に何かある。ヴァールが何やら反応していたと言うなら、間違いなく通常では考えられない何かの秘密があるのだろう。

 

 ことステータスに関して、今あるこの現世においてヴァール以上に詳しいモノはいない。それは推測であり断定であり、信頼や信用でなく真実、事実だ。

 それを誰よりもよく知るソフィアだからこそ、彼女もヴァールに倣いオーヴァの未来予知に疑念を抱いたのだ。あの子が違和感を覚えたならば、そこには必ず何かある、と。

 

「メモには何も記されてはいない。だったらあの子はまだ、私と共有すべきとは思っていないか、共有すべきか迷っているのでしょう。未来予知……話を聞くだにすさまじい能力だけれど」

「どんくらいの精度やら範囲やらの未来によりますが、ことによっちゃ無敵に近いかもしれません。あとカーヴァーンの野郎もなんだか、未来を見通すような動きを度々してやがりますねえ」

「レベッカさんの動きに、わけわかんないタイミングでカウンターを合わせて来たりしてきましたしね、前。まるで最初から分かってなければあんな動き、取れっこないってみんなして話してたり」

「イルベスタ・カーヴァーンのメインスキルは《念動力》だけど……それで未来予知めいた真似なんてできるものなのかしら? 物を動かす力を応用したのかしら、エリスちゃんみたいに」

 

 一方でオーヴァの腹心イルベスタの力も大概、謎だ。それこそ未来でも予知しているかのように動き振る舞いカウンターを入れてきた過去の経験に、何度か煮え湯を飲まされたレベッカやシモーネが苦い顔を浮かべる。

 スキル《念動力》の可能性……できることの幅が、ソフィア達の予想以上に幅広いというのは、他ならぬ仲間のエリスを見ていれば分かるものだ。


 だとするとイルベスタもまた、エリス並に理解不能な理屈で《念動力》を駆使し、未来に手を伸ばしているのかもしれないだろう。

 揃って先読みしてくる敵二人。そのあまりの厄介さに、ソフィアは難しい顔でため息混じりに語る。

 

「ことの仔細はやはり、二人を倒して捕らえ、能力者解放戦線を壊滅させてからじっくり聞くことが一番の早道。ヴァールもそのつもりのようだし、やっぱり早く決戦に赴いて決着をつけるべきということかしらね」

「でしょうなァ……だからこそこれからストックホルム行ってラウエンっつうカーンさんの弟子と合流して、満を持してノールノルゲにまで行くんでさぁ」

「なんだかんだ半年くらい経ったこの事件ですけど、終りが見えてきたのは間違いないってことですね……!!」

 

 至る結論は示し合わせたように表裏、同じだ。すなわち考察していても仕方なし、直接オーヴァとイルベスタを打倒し能力者解放戦線を壊滅させる。

 そうして平和を取り戻した世界にて、改めて彼らの背後関係を洗うのだ。そのなかできっと、すべての謎も詳らかとなるだろう。

 

 夜明けとともにストックホルムへと走る2台の車。

 その行く先にはまた新しい戦いが待ち受けているのを、彼女らは知る由もなかった。

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― 新着の感想 ―
本編主人公(かつてのソフィアさんも?)がいたらシステムさんからお気持ち表明ポエムが届きそうな場面……
2026/01/30 18:47 こ◯平でーす
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