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大ダンジョン時代クロニクル  作者: てんたくろー
第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─

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対談

 エリスやラウラが妹尾、トマスと連れ立ってトレレボリの全探組施設を訪ねている頃。すでにヴァール、レベッカ、シモーネの三人はWSO支部施設を訪れていた。

 支部長のマーベルという女性と面会してスウェーデンの現状をヒアリング。その上で現地スタッフとソフィア子飼いのエージェント部隊との連携を緊密にするよう、打ち合わせをしていたのだ。

 

「フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア──統括理事が能力者解放戦線を追う形で巡った国々でのスタンピード鎮圧がおそらく影響しているのでしょう。この国でもスタンピードの発生は減少傾向にあり、解放戦線の構成員を捕らえることも多くなってきました」

「幹部にあたるメンバーがこちらにかかりきりだったからな。加えてこの数ヶ月、リトアニアを中心にずいぶんとスタンピードを潰して回ったこともある。能力者解放戦線とて否応なく弱体化するということか」

「聞こえてくるニュースなんかも最近じゃずいぶん、平穏な空気を取り戻せてきてる感じですからねえ。それが私らの戦いの成果ってんなら、そいつぁ嬉しいことじゃねえですかい」

 

 説明を受けてヴァールとレベッカが見解を述べる、ここはWSOトレレボリ支部の支部長室。ソファにヴァールが座り、その後ろにレベッカとシモーネが立っている。

 そして向かいにて対するのが支部長マーベルだ。まだ30代前半という若さで役職付きにまでなった才女が、しかし統括理事を前に緊張した面持ちで話している。

 

 北欧全土で巻き起こっていた、異常な数のスタンピードも概ね現在では落ち着きつつある。特にフィンランドとバルト三国は完全に途絶えた状況で、つまりはヴァールやエリス達パーティの活躍の結果が如実に現れているものと言えるだろう。

 

 まさしく英雄的な功績だ。これには後ろに立つレベッカもまんざらでない顔をしているし、シモーネなどは無表情にも笑みを噛み殺し損ねている、得意げな様子。

 そんな彼女らは次いで、未だスタンピードの起きているスウェーデンについての話をも聞いた。

 

「我が国、スウェーデンで未だ起きているスタンピードですが……先程言った減少傾向というのと同時に、現地探査者達の奮闘の甲斐もあり被害は最小限に留められています。ここ数ヶ月では特に、強烈な外部協力者もいますので」

「シェン・ラウエンだな。君は、彼とは接触を?」

「半月前にこの近辺で発生したスタンピードへの対応中に一度だけ。生真面目な武人と言った印象を受けましたが、同時にその……ずいぶんと自分やその一族、そして武術について喧伝する御仁だったと記憶しています」

「あぁ……」

 

 どこか躊躇いがちに、どう言えば良いのか言葉に迷いながらも例の助っ人、シェン・ラウエンについて語るマーベルにヴァールは、彼女にしては珍しく遠い目をして小さく呻いた。

 自分や一族、何より星界拳について広く世間に知らしめんとするその態度と言動は、彼女の旧き戦友であり弟子とも言えるシェン・カーンにも見られた特徴だ。

 

 そもそもカーンがソフィアやヴァールとともに能力者大戦および第一次モンスターハザードを戦った理由からして、世界にシェン・カーンならびにシェン一族、そして星界拳の名を轟かせたいという顕示欲、名誉欲に他ならない。

 カーン個人の特性でなくもしや、血脈単位で共通する性質なのか? と内心で静かに戸惑うヴァールの背後で、レベッカもまた吹き出して笑っていた。

 

「ぶははははは! さすがカーンさんだかシェンだか、相変わらずの馬鹿みてぇな目立ちたがりっぷりだぜ! そのラウエンとかいうあんちゃん、マジにカーンさんの後継者なんだなあ……!!」

「ず、ずいぶん自慢屋なんですね、その人」

「ううむ……カーンからしてそうした気質は露骨だったが、まさかラウエンまでもとは。ちなみに今、彼がストックホルムにて活動中というのは知っているが連絡の手筈はできているか?」

「無論です。先方にはすでに今日このタイミング、統括理事との電話でのコンタクトを取れるように準備してもらうよう要請しており彼もまた快諾してくれました。こちらを」

 

 そう言ってマーベルが差し出したのは電話だ。すでにラウエンは準備済みらしくあとはヴァールが電話をかけるだけとのこと。

 WSOスウェーデン本部──ストックホルム施設は本部長室への直通電話。その受話器を手に取り、ヴァールはうなずいた。

 

 10年前にはお互い、それぞれの道を行くこととなったシェン・カーン。その弟子であり後継者たる男と、今から話をするのだ。そしてゆくゆくは合流し、ともに巨悪を打ち倒すべく肩を並べて戦うことになる。

 かつてのカーンとそうしたようにだ。そこに数奇な縁をほのかに感じつつも、彼女は問題なく受話器を耳元へとつけた。淡々と、しかし明朗な声で呼びかける。

 

「聞こえるか? こちらはWSOトレレボリ支部施設から連絡している。ワタシはWSO統括理事ソフィア・チェーホワ。聞こえているか? シェン・ラウエン」

『──無論のこと、聞こえております統括理事。我らが始祖シェン・カーンと盟約を結ばれし、偉大なる"永遠の探査者少女"』

 

 返事はすぐに来た。若い、男の声だ。

 覇気に溢れ、精力に満ちた力強い声色のそれが、シェン・ラウエン。

 シェン・カーンの後継としてソフィア・チェーホワの力となるべく単身北欧にまでやって来た、助っ人だった。

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― 新着の感想 ―
強烈な外部協力者……気持ちは分かるが強烈なのを強調しなくても…… 若くて優秀なマーベルさん。統括理事の座も狙えたかもしれないけど生まれるのが早すぎた……?
2026/01/24 11:06 こ◯平でーす
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