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「塗り壁」  作者: first
6/7

ヌリカベ―後編―③

 




                      ○




どくん、どくんどくん



 心臓の高鳴り、見たい映画が始まるかのような期待感


 どくんどくんどくん


 「いけ、いけいけ、家から・・・出ろ」



 4日間開かなかった扉が開き、彼女・・・井上宮が外へ出る。


 その姿はコートを着込んでおり、どこかに出かける様子だ。


 この時を待っていた、待ちに待った瞬間、心臓が高鳴らないはずが無い。


 井上宮は鍵をかけた扉を何度も確認したあと、わき目も振らずコンビニのある大通り方向へと歩いていった。


 

 井上宮が視界から消える・・・・・チャンスだ・・・だが、そのチャンスのタイムリミットが一時間か、10分か

 それ以下なのか・・・・・井上宮の目的が分からない以上はなんとも言えないが、とにかく井上宮がいなくなったその瞬間こそが

 俺が求めていたチャンスなのだ、これを逃せばいつまたこのチャンスが訪れるか分からない。


 だから・・・


 俺はすぐに家の門をくぐり、頑丈な鍵のかかった玄関の扉に・・・・よらず、家の隣にある車庫に向かった。


 井上宮は家の扉から何者かが侵入する事を恐れ、何度も鍵を確認していたが、はっきり言って無意味なのだ

 開かない扉はただの壁にすぎない・・・・だったらこの家に存在する全ての壁のうち、もっとも弱い部分

 ・・・・・・・すなわちガラスの「窓」の部分を壊して入ってやればいい。


 だから俺は日用大工用品が多くあると考えられる車庫に向い、硬い扉と言う壁を壊す事は出来なくても、もろい

 ガラスを壊せるだけの鈍器を探しに来た。


 そう、わざわざ扉から入ってやる必要などどこにも無いのだ。

 なぜなら、俺はとにかくこの壁に囲まれた家の中に入りさえすればよいのだから。


 車庫の中に入る・・・車庫には鍵はかけられていなかった。

 車庫の中には車が一台あり、その後ろに多くの大工用品が積まれており、その中で一際目につく大きな両口の

 鉄のハンマー、柄が長く設けられた「それ」は周りを圧倒する存在感でそこに存在していた。


 「これでいいか・・・・・」


 実のところ窓を壊すだけなので、そんなにたいそうな物は必要なかったのだが、俺はそれを手に取り

 その家でもっとももろい壁である窓ガラスの前に立つ。


 「ふん」


 勢い良く鉄の塊を振り下ろす。

 綺麗に弧を描いた鉄の塊は透明なガラスに当たり


 ジャラジャラン


 透明なガラスを二度と戻らない欠片にまで粉砕した。


 鍵の周りのガラスを綺麗に壊し鍵を開ける・・・・・・・・・中に入ると同時にこれ以上使わないだろうハンマーを

 壁によりかけて、そのまま土足で家の中に上がりこんだ。


 お邪魔します・・・・・・・・・・・・・・は言わない

 今の俺はお客じゃない、ただの侵入者だ、もしこれで何も手がかりが無ければただの不法侵入者・・・犯罪者の仲間入りだ。


 だが・・・・・まず「何日も手がかりが無い」なんてことはありえないだろうが。

 そう、たとえどんなに一階を探して何も無かったとしても、確実に・・・・確実に二階に井上宮が隠したかった「何か」

 が存在するのだから。



俺は階段に走る、最後の「あの日」以来訪れていない祐人の部屋に一歩ずつ足を進める。


 祐人の部屋は和也さんとの共同の部屋だった。


 階段を一段上がる。


 大きな窓は外の明るい光を部屋中に取り入れていた。


 階段を数段上がる。


 家具や、いくつかのおもちゃ、学習机、ゲーム・・・・・楽しかった思い出の部屋。


 階段を二段段飛ばしで上がっていく・・・・上に上がる足取りが速くなる。


 楽しかった・・・・あの


 最後の段を越え・・・・・・彼ら兄弟の部屋がある廊下へとやってきた。


 「?!」


 部屋に何かある、俺はそう思っていた、部屋の中を見ればこの家に隠されていた歪さが全て表に出ると・・・・


 だが・・・・実際は・・・・・部屋の中を見るまでも無く・・・・・・その歪はあふれ出すように現れていた。



 そう、廊下の真ん中にあまりにも、あまりにも歪でアットホームな一軒屋には場違いな、頑丈な鉄の扉が

 廊下の真ん中に二つはめ込まれていたからだ。


 

 思い出す記憶とはかけ離れる風景


 温かみの無い鉄の扉。



 その扉には外からのみ開くようになった監視窓がついており・・・・・・俺は、奥の・・・廊下の奥の扉についた

 監視窓をまず初めに開き観察してみた。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 言葉が出ない・・・・・・・・・・・その代わり様は、息を呑むほどのものである。

 

 大きな窓は壁に埋められ、全ての面が雑にコンクリートと鉄板で埋め尽くされている。


 特に驚くべき事は大きな一つの部屋だったものが、ちょうど部屋の中心で別れるように大きな壁が作られ

 区切られてしまっていた事だ。



 しかし、その部屋に誰もいない・・・・いや、もしかしたら誰かいたのかもしれないが、今はいないだけかもしれない

 どちらにしろ、ここまで殺風景な部屋で人の存在を感知するのは不可能だ。

 

 

 すぐにもう一つの扉・・・・階段に近い扉に目を当てる。


 そこには・・・・・そこには・・・・・・・・・・・・懐かしい友人


 殺風景の壁の中・・・彼一人が壁に寄り添い存在していた


 一刻も早く助け出さなければいけない

 

 そう思い、

 

 「祐人、大丈・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 


 そういいかけて、言葉を止めた。


 

 




  

 


 「それはお互い様だろ・・・・・・・・・たしかにそれも面白いけど・・・」



 



    

 誰かと・・・・・・・・・・・・・・・・話している?


 


 初めは独り言かと思った・・・・・・だが違う

 よく聞き、よく見れば、その姿は明らかに「何か」と会話しているようで


 だが・・・・「誰」と話している?


 祐人は部屋を二分する壁に向かってなにやら楽しそうに話している、その内容は小さな声過ぎて

 聞き取れない、だが確実に



 ―――  「何か」と話している ――――


 

 「・・・・・・・・壁に向かって話している、壁の向こうに誰かいるのか・・・・?」


 いるはず無い・・・・それは先程俺が監視窓から隣の部屋を見た時に確認したではないか。


 じゃあ、何と話している?何と?


 

 背中に冷や汗がたれる


 俺はそれを確認したくてもう一度、となりの部屋の監視窓におそるおそる手をかける


 




 ガチャ








 赤い部屋







 ところどころに赤黒い塊がこびりついている。







 光の入らない部屋のはずなのになぜか部屋の中心だけがぼんやりと明るくなっており

 その中心に・・・・・・・・・・・・その中心に顔の削られた少女が・・・・・・・・・・・











 





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いるはずも無く、ただ、先程と同じ灰色の壁が一面を

 覆っていた。


 


 

 殺風景な誰もいない部屋、そこを区切る一枚の壁に向かって祐人は誰かと会話をしていた。

 まるでこの誰もいない部屋に「誰かがいるかのように」


   

 そう・・・・・・・・・・・人には見えない、何か・・・・この部屋に住み着くこの世ならぬ存在と話しているような・・・・


 

 そう感じた瞬間、その誰もいない部屋が恐ろしく歪に、恐ろしく見え


 ガシャン

 

 監視窓を閉めた。



 どくんどくん


 さっきとは違った意味で心臓が高鳴る


 もうあの部屋は見たくない・・・・・・・・・もしみればその時は本当に


 ――― 「いるはずの無い祐人が会話していた何か」に出会ってしまうかもしれない ――


 そう感じてしまったからだ。


 俺はもうその監視窓に目をくれない様にし、


 今度はもう一度祐人のいた部屋の扉の監視窓に目をつける。



 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 祐人は壁に寄りかかって入るものの、先ほどのように会話しているようには見えない、

 ただむすっとし、その場に呆然としているように見えた。


 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 気のせいだったのか?

 祐人が誰かと話しているように見えたのは俺の錯覚?


 わからない・・・・


 祐人は本当に誰かとはなしていたのか? 

 

 でも、話していたとすると・・・・・・誰と?


 隣には誰もいない、だが・・・・誰かがそこにいるように話していた・・・・・・・・・・・


 二階にたどり着いてからまるで魔界に入り込んだような歪なフインキに飲まれている。


 この世ならぬ世界・・・・生きている間はたどり着くことのできない、あちら側の世界に迷い込んでしまったかのような

 感覚。


 「っと、こんな事を考えている暇は無い」


 そう、奇妙なフインキに飲まれて忘れていたが、俺には時間が無かったのだ。

 いつ井上宮が帰ってくるか分からない、だから一分一秒が大切だ。



 俺はあわてて扉の中の祐人に語りかける


 ガンガン 


 「祐人、大丈夫か?俺だ、順二だ、助けに来たぞ」

 


 監視窓の中の祐人は一度こちらを見たが、動こうとしない。

 

 「おい、聞こえてるだろう、返事をしろよ、祐人!!・・・くそっ」



 返事をしない、それどころか俺すらも見なくなった、何だって言うんだ・・・・・


 だが、仕方が無いのかもしれない、何日も監禁させられ逃げる意思すらもなくなってしまったのだろう

 だったら、引っ張り出してでもこの家の外に出してやる。


 扉を見る・・・・あまりにも頑丈そうな鍵穴、簡単には壊れなさそうな丈夫な壁


 周りを見る・・・・この扉をこじ開けれそうなものは無い


 ちくしょう・・・・・どうすりゃいいんだ・・・・・・・・・・・・くそがぁぁ


 俺はだめもとで扉のノブを回し・・・・


 がちゃ


 「え?」


 開いた?


 何で開いた?初めから「鍵」なんてかかっていなかった?

 いや、冷静になれ、そんなはず無い、鍵がかかっていなければ監禁にはならない・・・

 だったらこれは鍵のかけ忘れか・・・・?そんな馬鹿な事あるはずが無い

 

 だって、井上宮は家の扉に鍵をかける時、あんなにも確認をしていたじゃないか・・・


 考えても答えは出ない、だったら、この偶然を幸運と思わなきゃそんだ。


 

 「祐人、さあ逃げるぞ!!」




 






                  ●

 

 (ねえ、実は本当のことを言うともうこの世界は終わっているの・・・・・・・・・・・・・・残されたのはこの部屋のみ、

  ・・・・・・・・・・・・・この部屋にいるあなたと、その隣にいる壁の中の私だけ・・・・・)




 壁の中の少女はさも楽しい会話をするように俺に話しかける。

 


 (あの日・・・・あの悪魔の研究は完成していたの・・・・そして空間が歪んで・・・・・・私達のこの部屋の世界を

  残して全て終わってしまった。)


  

  

 「そうか・・・・やっぱし・・・そうだったのか」



 俺は彼女の話に乗って深刻そうに答えた。



 (ごめんなさい・・・・ごめんなさい、本当は伝えたかった・・・だけど・・・もう元の世界に戻れない

  と言う事実を伝えるのは・・この扉を出ても「何も無い」と言う事を伝えるのはあまりにも酷だったの。)



 「そうか・・・だから君は俺をこの部屋に閉じ込め、出させないようにしたんだね、俺が傷つくの避けようとして・・」



 (ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・ぷ)


 

 「もう泣かないで、大丈夫、たとえ世界がこの部屋だけになろうとも、俺は君がいれば何もいらない、このヌリカベの世界

  さえあれば、俺はどこよりもしあわせにいきていけるのさぁーーー」




  くさい・・・・くさすぎる台詞が俺の口から、バーゲンセール開店時のおばさん方の勢いのように飛び出す。


  まあ・・・・・・・最後の方は棒読みだったのだが




 (くくく・・・・・・・・・・・もう・・・・・・・・・だめ・・・・・・・・・ぷはははは)


 壁の中の少女は、それこそ腹を抱えて笑うように高い声で笑う。


 「おいおい、ひどいな、俺は君の冗談につきあってやったんだぞ」


 (それでも、くさすぎるわ、そしてあなた大根役者すぎるわよ、何が「おれはどこよりもしあわせにいきていけるのさぁー」よ、

  今おもいだしても笑えるわ)



 「それはお互い様だろ、君だって「ごめんなさい、ごめんなさい、ぷ」ってその時点でふきだして、演技になってないじゃないか

  たしかにそれも面白いけど、屁をこいたみたいで」



 (ひどいわー、女の子はおならなんて出さないのよ)


 「はいはい、そうですか、それはわるうございました」


 (わかればよろしい)



 楽しい、この世界は楽しい

 おれは先ほどの彼女の冗談がホントであっても別にかまわないと思っている

 なぜなら、世界が終わってしまい、おれ達だけしか残らなければおれ達の幸せな時間を邪魔する者

 もいなくなるのだから・・・・そう、今、俺たちを見ている目のような奴も



 (ねえ・・・気づいてた?)



 「・・・・・・・・・・・・・・・うん」


 さっきから、監視窓に俺達を見る存在がいた

 いつもならそんな事心配する必要が無い

 なぜならいつも俺たちをあの窓から見る目はおれ達を守りさえしても邪魔する事など無いのだから



 だが・・・・今の目はいつもの目と違った

 


 もう一度、監視窓が開く


 おれは黙ってそれに気づかないふりをする。


 そしてすぐに窓がしまる・・・・やはり・・・・あれはいつもの目と違う・・・・・

 誰だ?

 この家には俺の世話をする「アレ」しかいないはずだ、だが今のは確実に「アレ」の目線じゃなかった

 と言う事は



 (侵入者・・・・かしら、またあなたをここから連れ出そうって輩ね、忌々しい)


 そう、侵入者、この家に入り込み、おれ達の幸せな時間を邪魔しようと言う文字通りのお邪魔虫



 「祐人、大丈夫か?俺だ、順二だ、助けに来たぞ」 


  扉の外から聞こえる耳障りな声・・・・・・・・・ああうっとおしい

 


 (で、どうするの?まさか・・・・あいつについていってここから出ようなんて思ってないわよね?)


 当然思っているはずは無い、逆にこの世界を邪魔するものがいれば排除してやりたいぐらいだ


 だからと言って俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・人は殺さない、殺人者なんて肩書き真っ平ごめんだ。


 だから他の手段を考えなければならない、この侵入者が俺以外の何かによって「この世から消える」手段を


 「おい、聞こえてるだろう、返事をしろよ、祐人!!・・・くそっ」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 耳障りな声を完全に無視し、どうすればこのうるさい声が消え去ってくれるかを考える 


 


 やはり、アレか・・・・・偶然に全て任せるか




 「偶然」俺が助けるために手を突き出していて


 「偶然」侵入者が足をもつらせて


 「偶然」階段を頭から転げ落ちる


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺はそいつを助け出そうとするものの、助けだせない

 

 これなら俺は殺していないが、邪魔者は消える


 


 (どうやら決まったようね)


 



 俺は軽くうなずく、すぐに戻ってくるよと目で彼女がいる壁に挨拶し 


 「祐人、さあ逃げるぞ!!」

 


 おれはその侵入者についていった。



 

「時間が無い、井上宮が戻ってくる前に前にここから出るんだ」


 そういうと侵入者は勢いよく、廊下へと走り出す


 あの夢と同じような風景、まるでデジャブ・・・・・・

 だがこれは一回目だ、アレは夢


 しかし、これは現実だ、この現実で邪魔者が偶然消える。


 今回の俺はあの夢とは異なり、ただただ従順に侵入者の後についていく


 階段の入り口までは・・・・・だが




 「色々と話したい事はあるが、まずは井上宮を警察に突き出してからだ」



 なんだか聞いた事のあるような台詞・・・・だが、どうせ夢の事だ・・・気にするな




  


 俺と侵入者はくだり階段の前に差し掛かる。


 侵入者はすぐに降りようと下り階段の一歩目に足をかける



 そして俺は手を前に突き出す・・・・これは「足をもつれさせて転ぶだろう侵入者を助けるための手だ」

 決して、俺が侵入者を「突き飛ばした」わけじゃない





 そう、あの夢と同じように侵入者は頭から階段に落ち、転がり、首をあらぬ方向に曲げ廊下を赤色にそめる・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






 「えっ?」









  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はずだった。







  今回驚きの声を上げたのは俺のほうだ。


  


  なぜなら、たしかに侵入者は俺が「助けの手」を出した後「足をもつらせて」バランスを崩した


  そこまでは俺が予想したとおりだった、そしてうまく行けばその後俺は「足をもつらせた侵入者」の腕をとれず

  

  助ける事が出来ないはずだった・・・・・・・・・・・・・・だが、今回は





  なぜか、侵入者が俺の腕を「がっちしと」つかんでいる。




 どういう事だ、俺が突き出した「助けの手」を転ぶと同時に驚異的な反射神経で体をねじりつかみ返した?



 そんなばかな、俺はあくまで助けるふりを・・・いや、助けようとしたのだが、助けられなかった事を狙っていたのに



 本当に助けてしまった?


 いや、そんな事よりも、こんな急な階段でバランスを崩した男一人につかまれたら・・・・・・・・・俺まで・・・・ 

  


  

   

 俺まで、階段に向かって転がり落ちて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 


 

                     ○

 



 ガタガタガタガタガタ




ガタン





 「いてえ」



 気づけば俺は祐人と共に階段の二段目と三段目の間に仰向けに寝転んでいた。




 体をさする、打撲と擦り傷が目立つ以外、特に外傷は無い、


 「祐人・・・」



 「うう・・・・・」



 祐人は肘を打ったのか、その場にうずくまっているが、彼も大きな傷も見当たらない。



 何が起こった?



 階段を下りようとした俺はいきなり何者かに押された・・・・様な気がする、と言うのも

 あまりに急いでいたため、何が原因で転んだのかいまいち分からない


 だが、たまたま俺はその時、祐人の様子を見ようとして振り返ったのだがそれが良かったのかもしれない


 転びそうになった俺を祐人は手を伸ばし助けようとしてくれた、俺はその手に咄嗟につかまったわけだ。


 何たる「偶然」


 もしも祐人の手を取らなければあの角度で転べば確実に頭から落ち、首の骨を折っていただろう。


 祐人が差し出した手があったから、俺はバランスを崩しながらも肩から滑り降りるように階段を雪崩落ちるだけですんだのだ。



 「祐人に命を救われたわけか」



 九死に一生とはまさしくこの事だ。



 すぐに立ち上がろうとする。


 その刹那、俺は背後に嫌な気配を感じた。


 


 なぜそんなものを感じる事ができたのかは分からない 

   

  

 だが、なぜか感じたのだ俺が見る風景の中に何か「歪なもの」が


 

 咄嗟に振り返らず前に飛び出す、その瞬間俺の後頭部すれすれを玄関に合った花瓶がかする。


 ガシャン



 飛び散った破片が勢いよく足元に広がる。


 「くっ」



 振り返るとコートを着た魔女がそこに立っていた。


 黒いコートと頭まですっぽりとかぶるフードはおとぎ話に出てくる魔女そのもの

 まあ、持っているものがスタンガンと言うのが実物のそれとは異なるわけだが・・・



 「そんなものまで持っていたとは・・・・・・」


 巻き散ったガラス片の上を土足でこの家に入ってきた俺は難なく動く・・・・・が、それは俺だけの優位ではなく

 井上宮も帰ってきて早々異変に気付いたのか自分の家だっていうのに靴をはいている。



 「っと」


 そんな事を考えている暇は無い、俺に対して一歩踏み込んできた井上宮は右手に持ったスタンガンで俺の下腹部を狙って

 突き出してきた。




 甘い・・・・不意をついたつもりだが、当然この状況は読んでいた


 


 左手の甲で冷静に相手の手首をはじく


 だが、これで終わらせない、今目の前にいるこの障害を取り除かなければ前には進めない


 だから 

 


 残った右手を相手のみぞおちにすべる様に吸い込ませる。




 ドン



 「いっ・・・・・」


 

 綺麗な顔が苦痛に歪む



 まだだ



 右足でスタンガンを持った手に蹴りをかます


 「いたっ」



 こんどははっきりと痛みを叫び、同時にスタンガンが玄関方向に空を舞う



 「そこまでだ、井上宮・・・・アンタの負けだよ」



 「・・・・・・・・・・・くっ」


 みぞおちを抱えながら俺をにらむ・・・・・その形相はまるで鬼だ。


  

 「アンタが隠していたもの・・・すなわち監禁された祐人は俺が救い出した

  もうアンタの罪は紛れも無い確かな事実だ、おとなしく警察に・・・・」

 

 


 その顔は確かに鬼だった・・・・・そうその瞬間までは


 俺に憎しみを抱き、絶対にここから通さないとする門番、ヌリカベ

 

 目は血走り、口は歪んでいる、子供が見れば泣き叫ぶほどの形相

 なまはげもびっくりなその表情


 俺が勝利宣言をした後もその強気の姿勢は変わっていない


 そんな、悪魔のような顔が・・みるみると青ざめていく、その時間わずかコンマ数秒


 赤から青に変わる・・・・血の気が引いていくのが完全に見て取れる。


 

 「祐君・・・・・・・・・・・・・・・だめ・・・・・・・・・もう、やめて」


 絶対無敵な鬼から今にも崩れ落ちそうなか弱い女性に戻った井上宮はなぜか、そう一言述べた



 「なにを言って」



 グサ



  グサ?そんな効果音聞いた事が無い


 

  いや、ギュシュ?とにかく具体的にはそんなに大きな音じゃない

 

  だけどその音は確実に聞こえた・・・・いや感じたといった方が正しいのか??



  それが刺さったのは俺の背中わき腹


  井上宮は目の前にいる、彼女が俺に何かしたわけじゃなさそうだ・・・・じゃあ・・・誰が



  ゆっくりと振り向く



  俺のわき腹には大きなとがった花瓶の破片が突き刺されていた。


  だがそれだけじゃない、赤く染まったその破片につながるように、赤く染まった肌色の物体、

  それを目でたどると、助けたはずのあいつの顔



  「・・・・・・・・・・・・・・・・・」



  何もいえない・・・・普通だったら「なぜ?」とか、「どうして?」とか疑問が浮かぶのだが

  俺はそれを言えなかった・・・・・逆にそれが疑問で仕方が無い


 

  あいつの顔を見る・・・・・・よだれはたれ、目は三日月のように曲がって笑っている。

  ひどい、どうしたらこんな人外のような表情を作れるのか。



  だが、その表情を見た時、驚きは無かった、なぜなら俺は見ていたからだ

 

  「ああ、そうか」


  どうして俺は疑問に思わなかったのか分かった。

  どうして俺はその表情を見た時驚かなかったのかが分かった。

  どうして井上宮の気配にきずいたのかが分かった。


  そう、俺は見ていたのだ、その歪に


  階段を落ち、俺の背中に井上宮がいる事にきずいたあいつの歪んだ喜びの表情を


  そう、今見た表情と同じ狂気の顔


  痛がっているはずのあいつがなぜか、体を丸めた隙間から俺の後ろを見て歪に微笑む、

  そんな歪み。


  それに気づいたから俺は背後の危険に気づけたのだ、何かおかしいと

  

  そう、それが俺が見た風景の「歪なもの」だったわけだ。



  だから、その表情を今見てもおどろかなかった

  だから、さされた時に疑問を持たなかった。


  なぜなら、初め「歪なもの」を見た時に両方とも感じていたからだ

    


  「そうだろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・祐人」




                ◎






  


  時計の針が反時計回りに回っている。


  めまぐるしい回転


  幾度長針と短針が交じったか分からない程の年月


  やがて針は最初の時にいたる。




  「おぎゃー、おぎゃー」


  その泣き声は生命の始まりであり、私が姉になった事の証明でもあった。


 

  長い間一人ぼっちだった私に初めて弟が出来き、私にとって大切な家族が一人増えた。


  私は姉として弟を守らないといけないという責任感を感じた。


  そして数年後、この家族は五人になる。


  とうぜん分裂したわけじゃない、さらに新しい家族である弟が生まれたのだ。


  そして私が守るべき愛すべき人は二人になった。


  私の責任はより重たいものとなった。


  だがこの重みは愛すべき者が増えたと言う幸せの重み

  なぜならこの「責任」は長年私が欲したものだったから。    






  優越がつけられない、大切な存在


  その二人を守り愛すると言う責任  




  

  姉として、歳の離れた二人の弟の世話をするのは苦ではなかった、逆に私にとっての生きがいに感じられる

  程だった、悪い事をしたら叱り、良い事をしたら褒める、その愛情は二人のどちらかに偏ることなく、

  私は均等に与えていたつもりだった・・・・・・・・・・いや、実際は二人が生まれて今の今まで均等に接してきた

  つもりだ、だが、愛情を与える方はそうでも、受け取る方は均等とは思っていなかったのだろう、だからこんな事になって

  しまったのだ、こんな・・・事に・・・・・・


  



 




  ―――  全ては私の責任だ、誰の責任でもない私の責任、そう悪いのは全て私なのだ  ―――




  一番初めは、あの日、あの雨の日に祐君に傘を届けれなかった事にある。

  

  些細なすれ違い・・・

  だが、例えそれが単なる偶然だとしても、傘を届けれなかったのは私の責任なのだ、

  


  もしあの時私が、もっと時間を掛けて祐君を探していれば

  もしあの時私が、もう一度祐君を迎えに行けば



  風邪で倒れた祐君の横で自分の行動を後悔した

  

  寝ずに祐君の看病をし、何度も何度もうなされる祐君に謝った

  

  だが・・・それで祐君の負った心の傷がいえることは無く・・・・



  この日を境にして、祐君は自らを「兄の和君」と比較するようになる。


  おそらくは、あの雨の日に私が傘を持っていけなかった事が、祐君にとって

  自分より兄の方を優先していると、とらえてしまったのだろう


  

  自らを兄と比べ、そして劣っていると思い込むようになってしまった。


  でも、いや確かに兄の和君は天才肌でどんな事に対しても柔軟にこなす人間だったが、

  だからと言って私や両親は和君ばかりを見ようなんて事していなかった。

  

  さらに言えば、私も家族の誰もが「祐君を劣っている」なんて思ってはいなかったのだ。

  

  和君も祐君も私にとっては同じぐらい大切な兄弟であり家族である、どちらか一方を選ぶ事なんて出来ない。

  

  

  そう、この劣っている、比較されている・・・と言う祐君のコンプレックスは祐君だけが持ち感じる思い込みなのだ

  



  ・・・・この愛情の受け取り方の違い、思い込みは時と共に、また祐君の成長と共にさらに溝として広がっていき

  やがて自らのからに篭もり、私達の事すらを見なくなってしまう。


   

    

  そう、そんな事があったからだろうか、逆に言えば確かに偏っていたのだろう、私はあの事があって祐君ばかりに

  気をとられていた・・・・・・だから、和君の身の回りに起こっている異変にきずけなかったのだ。


  

  和君に迫るストーカーの影

  狂った少女の愛情

  夢と現実が区別できなくなった精神異常者の犯行



  

  そして・・・・・・・・・・・・・・井上和也の・・・・・・・・・死




  和君の遺体は・・・・・・・・・・とても・・・・・・・


  思い出したくない、大切な弟があんな姿になってしまった姿など

  棺の中で唯一首から上のみが車に轢かれて「ぐしゃぐしゃ」になってしまったあんな姿など・・・・ 





  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






   そして私は大切な人を失った。



  ――― そう、和君を死なしてしまったのは私の責任なのだ、和君と祐君二人に気を配れず、和君を

      ないがしろにしつつあった私の責任 ―――



 私が悪いのだ、私がもっとしっかりしていれば、和君を守ることができたかもしれないのに・・・・





  そして私は壊れた。


  大切な人を失った悲しみと、自分への後悔、自らの責任の重さに耐え切れず私は数日間仕事を休み

  自らの部屋で泣き伏せった。



  周りの多くの人は私の責任じゃないという、だが実際は私の責任なのだ。

  

  

  それなのに、それなのに・・・・私の責任じゃないと言う、仕事の上司も、母も父も叔父も叔母も友人も


  「宮が悪いわけじゃない、責任を感じる必要は無いよ」


  と


  だが、責任を感じる必要は無いと言われるほど、私の心は大きく引き裂かれた

  それは例えるなら自分の行ってしまった罪を他の誰かに被せてしまったかのようなそんな苦しみ

  そして、責任を放棄すると共に大切な何かを失ってしまったかのような虚感、不安。

  


  とにかく、色々と複雑な感情が混ざり合い、この責任を捨てろと言われる事そのものが私自身への

  心の負担になってしまった事は確かである。


      

  そんな無責任な言葉の中で一人だけ周りとは真逆な言葉をかけてくれた人がいた



  それは名前は××××××という×××のカウンセラーだ

  彼?彼女?との知り合ったきっかけは私を心配してくれた上司の紹介である

  顔は××で、性別は××

    


  ・・・・・・・・・・・・なぜだろう、そのカウンセラーの事を思い出そうとすればするほど、

  彼?彼女?に関する情報が抜け落ちている事に気づく

  

  


  

  ××は言った。



  「君はもっと自分を責めるべきなのだ」



  「弟に傷を与えたのも、失ったのも全ては君の責任、この惨事は全て自分の責任だ・・と

   そして、この責任から逃げようとしてはいけない背負うべきだ、そうもっと多くのものも、もっと些細な事も」



   ××は私を責める、悪いのは私なのだと

  

  

  「そうすれば、もしも君がもっと責任を持って考え行動していれば、君の弟を失うなんて事なかっただろう

   なぜなら、全ての起こりうる事が自らの責任と考えれば大抵のミスはなくなるからな」


   その通りだ

  


   すなわち私の責任感が足りなかったから、和君の事に対して思慮が足りなくなり失ってしまった。

   責任感がたりないから、和君の些細な日常の変化に気づけないと言うミスをした。

   そして和君をたすけられなかった、だから、私はもっと責任を負うべきだったし、それを負えなかった私の責任だ。

  

   そうカウンセラーは述べていた。


   

  「今後君は今まで以上にこれまでに起こった事、そしてこれから起こることに対して責任を持ち

    これを負って生きなければならない、もしも責任を負う事を怠れば、また大切な人を失うだろう」


  だから




  もし、もう一人の大切な人を失いたくないのなら、もっと周りの全てに神経を配り、

  これから起こるすべての物事が自分の責任と思い込み行動しろ・・・と





  そうすれば、これから起こること全てに、最も良い対処が出来き、大切な人を失うなんて事二度とないだろう・・・と


 


 ――――――――       ジジジジジ           ―――――

                  

  

  スベテノセキニンヲ


  ミズカラ二セオエ


  オマエノタイセツナソンザイガオコススベテノコトモ

  

  オマエガオコススベテノコトモ


  タイセツナモノヲウシナイタクナイナラバ・・・・・  


  繰り返しリピートがかかる

 

  リピート

 

  リピート


  その言葉だけが無限に頭の中に繰り返す


  リピート

 

  リピート


  記憶が錯綜する


  その言葉を思い出そうとするとその時が朝だか夜だったか分からなくなる


  そのカウンセラーの顔が綺麗に切り取られている、切り取られた顔の中で私の顔が歪んで写る

  まるで顔の中に鏡があって、その鏡を通して私を見ているような・・・・



  

  私が笑っている、でも目が頬についてる?


  口がおでこについている?あれ?何だろナ二これ?地面が天井で天井がそらで・・・  

  

  私が棺おけに入っている、それを私が見てる?あ、私顔ぐしゃぐしゃ、和君と一緒?

   

  祐君がべちゃべちゃにぬれて泣いている?雨?いや、涙で?

  

     


              ―――  プツン  ―――    





  そう、そのカウンセラーは私の心に大きな杭を突き刺して私の前から消えた。


  

  その杭が私に突き刺さってから、私は全ての物事が私自身の責任にあると考え行動するようになった

  それは同時に、ただ部屋で泣き突っ伏していては、今後起こりうる責任を負う事が出来ないという事であり

  私を通常の日常生活へと復帰させる原動力にもなった。




  



  だが、そんな日常生活長くは続かなかった。






  その日の朝は家に戻る予定ではなかった。


  

  それは単なる偶然、たまたま私のミスで予約した飛行機のチケットの配達先を自宅にしてしまった為

  一度家によらなくてはならなくなっただけの話

 

  だが、私にとって偶然と言う言葉はいつも悪い意味で私自身に襲ってくる。

 

 


  薄暗闇の空、皆がまだ眠りについている早朝


 

  家に戻った私は台所で


  変わり果てた父だったモノと母だったモノを見つける事となる。


 


  電気はつけっぱなしであった。


  晩酌をの途中だったのだろう、グラスの中は氷が溶けて液体がなみなみになっている。


  そしてその氷を壊す道具であるアイスピックが父の額に歪に突き刺さっていた。



  母は・・・と言うと、まるでハチに刺されたかの様な顔

  そのはれぼったい顔は何度も殴られ、その結果死に至ったものだと分かる。


 

  数秒頭が真っ白になる



  

  だが、悲しみもこの犯行を行った犯人への憎しみも浮かばない


  どうしてだろう・・・大切な人が殺されたのになぜだか涙の一つも出ない


  どうしてだろう・・・気がつけば私は両親だったモノを誰にも気づかれない様に細かく切り刻み処理を始めている

 

  どうしてだろう・・・飛行場に送り届けるはずだった少女を私は手に持っていたビール瓶で殴り鍵のかかる部屋に閉じ込めている



  なんで・・・私はこんな事をしたんだろう・・・・・




  そんな事わかりきっている



  この犯人をかばう為だ、この犯人が行った事全てを私の責任とする為だ。


  なぜならこの犯人は私にとって大切な人だから

 

  そして、こんな事になってしまった・・・いや追い込んでしまったのは、彼の状態を理解できなかった私の責任だから。



  悪いのは私なのだこの犯人ではない、

 

   ―― この洗面所に脱ぎ捨てられた「返り血を浴びた制服」を着ていた犯人の責任じゃない ――


      

  だから、私は全ての責任をかぶる

  ここで起きた事、これから起きる事を全て私の責任にして



  ―――――         祐君を・・・・守る     ――――


  悪いのは私であって祐君ではない


  祐君を犯罪者になんてさせない

  私が祐君の代わりに全ての責任を背負い犯罪者になる。

  全ての罪を背負う

  


  その為に


  

  祐君を監禁する事に決めた。



  なぜなら、祐君を自由に生活させていたら、いつ、どんなきっかけで祐君の行った事がばれてしまうかわからない

  だから、完全に犯人が私に特定されるその時までは祐君を周りの目から隠し、私だけが目の届く場所においておかなければならない

  

  

  そして、祐君を監禁する事によって、祐君を被害者に思わせる必要がある


  それは私が狂った犯人であり祐君はそれに振り回された哀れな被害者と思わせておけば祐君に疑いの目がかかる事は無いからだ。



  


  私はすぐに行動にかかった、部屋に鍵をつけ、極力頑丈かつ、人の手では出られないぐらいの強度の部屋を作った。

  

  そして部屋を二分割した。


  一つは祐君の部屋、もう一つは・・・・・



  彼女には悪い事をしたと思っている。

  なぜなら彼女は今回の事にまったく関係ない、本当の意味でただ巻き込まれただけなのだ


  だから・・・私がこの事件の犯人と特定されるまでの間彼女にはここにいる事にしてもらう

  それに、この事件で私を犯人だと思い込む第三者はどちらにしろ必要なのだ。

  彼女にはその役をになってもらう。


  このヌリカベの部屋を抜け出した後、私、井上宮が犯人だと公言してもらう。


  そのためには彼女には生きてここを出てもらわなければならなかった。

  絶対に殺してしまってはいけない存在だった。

 

  なのに・・・・彼女は日に日に衰えていった

  

  何も無い塗り壁の部屋の中、いつ出れるか分からない圧迫の中、精神的に参ってしまったのか、

  彼女は食事もまともにとらなくなり、扉の外から見るだけでは生きているかどうか分からないぐらいの状態になってしまった。


  

  そして・・・その日彼女は、食事をひっくり返しながら部屋の真ん中に突っ伏していた。


  冷や汗がひたひたと垂れる、


  殺してしまったと思った。

  

  何の関係も無い少女を、私が・・・・死なすつもりなんてなかったのに・・・・・


  あわてて扉の鍵を開けて中にはいり、少女の下へと近寄る・・・・・うつ伏せになっている少女を仰向けにし

  ひざの上に乗せ、頬をたたく


  パンパン

  

  名前を呼ぶ、反応は無い

  名前を呼ぶ、ピクリとも動かない


  どうするべきか分からなくなり頭の中が真っ白になる。


  その瞬間、少女は突然目を見開き



  ガツン



  その手に持っていた陶器の丼で私のコネカミを一度だけ殴打した。

  虚ろな意識の中少女は私の懐をまさぐり、鍵束を取り出すと自分のポケットに入れこの部屋を出ていった・・

  ・・・様な気がする。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そのとき何分・何時間眠っていたかは分からない


  

  

  目を覚ますと開放感でいっぱいだった。


  彼女は死んでいなかった、全ては演技

  彼女自らがこの壁の世界を抜け出そうとして、私を部屋の外から中へおびき出そうとして行った「病んでいる人」の演技だったわけだ

  

  「だまされた」


  彼女はその為に食事を抜き、この世界から抜け出すために体を張って演じたのだ。

  うん、彼女はもしかしたら歌手だけじゃなくてこの先、女優としても、やっていけるかもしれない

  十代であの演技はなかなかの物だ、マネージャーとしてうれしいぞ


  この数週間一度も見せる事のなかった笑顔が私の中からあふれ出す。


  数分間その部屋の中でごろんとしていた。

  

  全ては終わったのだ、予定とは少し異なったが彼女は自らの手でここから出て行った

  「私を犯人だと思ったまま」そして、おそらくは祐君も救い出して言ったに違いない

  これで、全ての責任は私にかけられる。


  そう・・・・これでやっと終わるのだ。



  私は殴られた頭を抑えながらゆっくりと廊下に出る。


  

  廊下には私から奪ったいくつもの部屋の鍵が散乱していた。


  とにかく急いでいたのだろう、祐君の部屋の鍵も開けっ放しになっている


  「よかった」



  これで本当に終わった、後はすぐに警察がこの家に来る、それで終わり



  最後に下でお茶でも飲もうそう思って、私は階段を・・・・・



  降りる事はできなかった。





  階下には見るも無残な少女の姿

  もはや歌えないだろうその姿

  

  

  今度こそ一目で「死んでいる」と分かる状況


 

  私はひざから崩れ落ちる


  殴られたコネカミではなく流れ落ちる涙を抑えるため顔を抑える。


  

  急いでいて足をもつらせたのか、滑らせたのか、何があったのかは分からない


  だが、さっきとは違う意味で・・・・・終わってしまった。


  

  彼女は生きる証拠だった、父と母を片付けている瞬間を見ていたし、私を完全に犯人だと

  思い込んでいた。


  だから、彼女を使って私が犯人として全ての責任を負う事ができた


  しかし・・・その生きる証拠はいない、これでは祐君を守ることは出来ない

  確たる証拠が死んでしまった今、このまま祐君が解放されたとしても警察がきちんとした捜査を

  行えば長くない時間で犯人が祐君だとばれてしまうだろう。



  ・・・・・・・・・・・・・・・祐君  


  

  ふと、冷静さを取り戻す



  「祐君?」


  祐君は・・・どこに行った?

  涙を拭き一階に下りる、彼女の遺体を廊下に寄せてすぐに玄関を見る

  靴はそのまま何もなかったかのようにおいてある。

  裸足で出て行った?

  だが、玄関の扉は鍵がかかったままだ   

   

  私は一階をくまなく探す、だが祐君の姿は見つからない





  「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」





  唐突に二階から叫び声が聞こえて、私はあわてて二階へと掛け戻った


  声の聞こえた場所は、二階の祐君の部屋・・・・・ゆっくりと監視窓を開く


  

  祐君は部屋の中にいた


  何が起こって彼女が死んでしまったかはわからない

  だが、彼女が死んだ後、祐君はまたすぐ部屋へと戻ってきたのだ。


  そして、なぜかコンコンと隣の部屋に向かってノックをしている。


  私はその行動の意味がわからず、呆然とする


  だがすぐに「隣にいるはずの人物」に連絡を取ろうとしているのだと気づく


  



  隣の部屋に移り考える




  そうなると、彼女と祐君は私の知らないところで連絡を取り合っていた・・・?


  

  だが、鍵が開いているところから見ると、祐君も一度は部屋の外に出て彼女が死ぬところを確認しているはず

  なのになぜ、いないはずの彼女に連絡をとろうとしている?


  

  わからない、わからないが少し警戒しながらコンコンコンとノックを返してみた。  


  数秒もしないうちに返事が聞こえる



  「おそかったね」



 

  元気な祐君の声が聞こえる。

  こんな声何年ぶりだろう、私にはかけなかった声


  

  この声からも彼女と親しい関係にまでなっていたことが予想でき

  同時に確実に祐君は今はいない隣にいるはずの少女に話しかけていることがわかった。 




 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい、ちょっと警戒してたの)

 


  私はとりあえず、さっき感じていたことそのままをつたえる。


  どうするべきか、祐君が何を考えて死んでいる彼女に話しかけているのかは分からない、

  だが、それに対応する私は、彼女を演じるべきかそれとも、彼女が死んでいるということを

  きちんと伝えるべきか・・・・


   



 「話があるんだ・・・・・真剣な話」


 唐突に振られた話、まずはこの話を聞いてから結論を出す事にする。 



 (何・・・・・・・・・・・・・?)



 「この前言ってた、脱出の話なんだけど・・・・・・・・もうやめないか、ここから出る事を」



 ・・・・・・・・・・・・・どうやら、彼女が私に行った演技の話、すなわち脱出の話をやめる様に説得しているようだ

 だが・・・なぜ今?彼女はもう計画を実行に移したはずなのに・・・・




 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)


 わからない、祐君が何を考えているか分からない

 だけど、一つ気になった、監禁されていてここから出たいはずなのになぜ「ここから出る計画をやめよう」なんて言うのか」


 (どうして?)


 疑問がそのまま言葉になる




 「おれ、さっき夢を見たんだ、キミが脱出しようとして、俺を救い出すんだけど・・・・キミが階段でつまずいて、

  ・・・・・・・・・・・・死んでしまうんだ」






 (・・・・・・・・・・・・・・)


 

 今の言葉で全てにつじつまが行った


 彼女はここから出た後、祐君を救い階段の前にまで行き、そして階段を下りきれなかった。


 それに加えて祐君が先程述べた「脱出はやめよう」の言葉

  

 死んでいるはずの彼女に対する今も生きているような言動


 

 これは一つの答えへと導く


 私は彼女と同じく祐君がこの部屋を出たいとばかり思っていた。

 だが、実際はそうではなく、祐君は彼女との会話の中でこの壁の世界で幸せを見つけたのだ

 だから、その世界が壊れる事を恐れた、だから脱出したくないと思い、階段を下りようとする彼女を

 何らかの手段すなわち「死」と言う手段で阻止した。


 そして、これは矛盾でもある


 なんせ、彼女と幸せな時間を過ごしたいと言う願いのはずが、その世界を守るために彼女を死に追いやってしまったのだから

 

  

 だから、だから・・・・・祐君は自らの矛盾を解決するために「彼女が死んだという事」をなかった事にした。


 夢の中の出来事として記憶をすり替え、自ら記憶をウソで塗りつぶしたのだ。  


 そして祐君の中では彼女が死んだことは夢の事でなかったことにされている

 だから、死んだことを知っていながら壁に向かって再度話しかけたのだ。 



 全て理解した、その上で・・・・私はどうするべきか・・・・

 もはや、全てが公になった時全てを私の責任とするのは不可能となっている、

 誰かに見つかり警察が来れば祐君が犯人とされてしまうのは時間の問題だ


 どうすれば祐君が守れるか・・・・・

 どうすれば全ての責任を私に負わせれるか


 答えは簡単だった・・・・・公になった場合全ての責任を私が得るのが不可能ならば

 このまま全てを隠してしまえばいい


 数時間前までは、祐君や彼女がここから出る事を頭に入れて考えていた

 だが、彼女が死に、祐君もここから出たくないと考えているだったら

 ここで一生を過ごせばいい。


 全てを隠し祐君と私だけでこの塗り壁の世界で生きるのだ。


 そんな時だった壁の中から思いがけない告白を聞いたのは


 「その時、俺気がついたんだ、失って初めて気がついた・・・・・・・・・・・・俺、キミがいないと生きていけない

  キミの事が好きだ」







 (えっ・・・・・・・・・・・・・・・・)


 

 

 驚きのあまり、声が漏れる

 まさか、このタイミングで告白されるとは思わなかった・・・・もちろん、姉である私ではなく、今となっては

 どうあがいても伝えられない、階下に横たわっている人物にだが。



 だが・・・・・これではっきりした、祐君の願いはこの世界を守りたいと言う事なのだ・・・なら




 「だから俺はキミを失いたくない、そして・・たぶん、これは予知夢のようなものなんだと思う、もしもここから出てしまえば

  きっと、おそらく、夢と同じ悲劇が起こってしまうかもしれない、おれはもう二度とキミを失う事はいやなんだ、だから」

 

 「だから、俺と一緒にこのまま、ずっとここにいよう」 


 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、  

 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・) 

  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめ・・・かな?」





  (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめ・・・じゃないよ) 



  なら、祐君をこの世界に引き止めておくため私はもうこの世にいない彼女を演じ続けよう


  


 「本当!?・・・・・・・・・・・本当にいいのかい?!、一生、一生出れないんだよ、それでも

   俺と・・・一緒にいてくれるのかい?」



 

  祐君の欲しい言葉をつたえ




 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん)




  祐君の幸せな世界を維持し続ける




 「ありがとう、ありがとう、ありがとう」


 

  永遠に・・・・最後のその時まで祐君をこの場所に縛り付けておくための鎖になろう

  


 (私も・・・・・私もうれしかった、私もずっと一緒にいたい)


  

  例えそれが偽りだったとしても 

 


 「これからはずっと一緒だ、一緒に誰の邪魔も入らない「塗り固められた壁」の世界の中で生きていこう」



 

  全ては私の責任なのだから、そのウソも、犯罪も全て

  


 


 (うん、永遠に一緒だよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




  祐君のかわりに私が背負っていこう

                   



      「祐くん」



  あなたの幸せの為に・・・・・・・・



  そして、祐君がここにいる限り、祐君の犯罪が表に出る事は無い


  祐君がここにいる限り、全ての責任が私が負う事が出来る。











  そう、このまま隠し切ればいいだけの話・・・・ここが終末、これ以上もう何かが起こることは無い


  一定の時間に祐君と話をして祐君の壁の世界を構築する・・・それを永遠に続けるだけ。




  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう思い込んだのがいけなかった

  


  数日後、祐君の友人と名乗る人物が何人か訪れる。


  

  数週間前と違い、もはや祐君を監禁している事をばれるわけには行かなかった


  だから極力当たり障りの無い会話をし、その場をやり過ごそうとしたのだが・・・・

  そのうちの一人はどうやら気づいてしまったようで、執拗に二階のことを聞いてきた。


  最終的には追い返したつもりだったのだが・・・・・・・・その少女は傘を忘れたと言い

  再度訪れた。


  当然、二階に上がらないように注意して少女を見張っていたのだが


 

  二階ばかりに気を取られたのがまずかった。


  トイレを貸してくれと言ったまま、少女は「あの部屋」を見つけてしまった




   ――――   父や母、彼女を押し込めた「あの部屋」 ――――  


 

  仕方がなく私は訪れた少女に前日買ったばかりのスタンガンを使って意識を失わせた後

  彼女も一緒に監禁する事に決めた。



  問題は多々あったが、一番の問題は監禁する場所だった。


  前の様に、祐君の部屋の隣を使う事は出来ない。

  なぜならもう既にあの場所は監禁する場所ではなく祐君の世界を維持し作り上げるための

  重要な場所となってしまったからだ。


  あの場所ではまだ「彼女」が生きているように会話しなければならない

  しかし、もしもそこに、この「少女」を入れてしまえば私が会話する事ができなくなる。

  それどころか、祐君が話しかけた後、何も知らない少女が会話に答えれば、当然、話しがかみ合わなくなり

  祐君の中で矛盾が生じる・・・・それだけは避けなければいけない。


  

  だが

   



  二階以外の場所を用意するにしても、その場所を用意するまでの間少女を監禁する場所を準備しなくてはならなかった


  そして候補は二つ、一つは一階の「あの部屋」

  さすがに、もう既に生きていない・・・・・処理の為に・・・・・となった部屋に彼女を数時間追いとくのは気の毒だ

  だから仕方がなく、数時間の間だけ、仮として祐君の隣の部屋に少女を一時的に監禁する事にした。


  確かに、心配事は尽きないが、今の時間はいつもどおりなら祐君は睡眠の時間である。


  まず、ノックされて少女に会話を行うなんて事は無いだろう。



  私は、意識を失ったままの少女を二階に運び隣の部屋に一時的に監禁し、一階にある自分の部屋を監禁用の部屋に

  しようと準備をしに行った。



  部屋の中の窓を封じ、極力道具を少なくする、鍵はあるが心もとない・・・どうにかする必要がある

  他には・・・・・・・・・・・・・・・



  「何で、何で今日のキミは俺を拒絶するんだぁあああああああああああああああ」

  

  

  走り出す、その声を聴いた瞬間に私がもっとも恐れていた事が起きた。


  なぜ祐君が起きている?


  いや、この時間にいつも寝ていると考えていたのがそもそもの間違い

  時計もなく、明かりも、電球一つで外の状況が分からない部屋で規則正しい生活など無理に決まっているのだから。


  

  二階に着いた頃にもう既に遅かった。


  

  祐君は見えない「何か」に話しかけており

  私達を見ようとはしていなかった。


   

  もっていた、布で少女の口を押さえてこれ以上祐君を刺激しないようにする。

  おそらくは、私が恐れていた通り祐君の中の世界と矛盾する会話をこの少女は行ったのだろう。


  だから祐君は自らを否定する世界をを嫌い、自らを肯定する私達には見えない「何か」とのみ会話するようになってしまっていた。

  


  しかし、少女は抵抗をやめない・・・・この大変な時に・・・

  布を丸めて少女の口の中に突っ込むそして一瞬手を離して 

 

(祐人、えっ?!、ちょっと何をするのよ、ヤメ、く、くるしい、はなして・・・・・・・・・・・い、いやぁ・・)


  スタンガンで気を失わせる

 


  「俺を・・・・・・許してくれるのか?」


 いまだに独り言をやめない・・・・いや、「何か」と話続けている祐君

 


  「祐君?祐君、大丈夫?」


 まるで、この世にいない「何か」

 人ならぬ「何か」

 この部屋にいたもう既に生きてはいない「何か」



    

  「祐君、祐君大丈夫、祐君?」



 このままではいけない・・・・これでは本当に祐君が壊れて・・・・・・

 あちら側に引き込まれてしまう。



 そう思い・・・私は祐君の肩を揺らしながらこちら側へと呼び戻す。


 行ってはダメ

 行ってはダメ

 行ってはダメ

 行っては・・・・・・・・・・・・・ダメ



 だが・・・・・・・・祐君は戻ってはこなかった


 きっかけは、あの少女による祐君の世界の拒絶だろう

 その会話の詳細は私には分からない・・・・・だが、少女をあの部屋に一時的にでも収容したのが間違いだった。

  


 その結果・・・・祐君の心は・・・・・あちら側に・・・・持って行かれてしまった。

 

 私の責任だ

 私の責任だ

 私の責任だ

 

 自らを責める、

 今までに無いほど自信を責める

 



 祐君が壊れてしまったのも

 あの時少女を部屋に入れてしまったのも

 あの部屋が見つけられてしまったのも

 疑問をもたれてしまったのも

 彼女を死なせてしまったのも

 両親を死なせてしまったのも

 和君をしなせてしまったのも



 全ては・・・・・・・・・・・私の責任だ

 

 




 だから、全ての罪は私が受ける責任も私が

 

 

 ごめんなさい

 

 私が少女をとなりに入れたばっかしに


 ごめんなさい


 私が彼女の代わりを演じたばっかりに


 ごめんなさい


 祐君や彼女を監禁したばっかりに

 

 ごめんなさい


 ごめんなさい


 ごめんなさい


 傘を持っていけなくて祐君を傷つけてしまって




 ごめんなさい・・・・・・・・

 

 何度も謝る

 

 謝って戻るなら何千回だろうと私は謝る


 だが・・・・・・・・・・・・・

 

  「暖かいよ、もう離れない、この世界は僕らだけの物だ」


 祐君は・・・・・・・・ 

 

  「祐君目を覚まして、祐君」






             ――  戻らない  ――


             ――  「あちら」に行ったまま ――


             ――  戻らない ――――

 


  「あんた、もしかして俺達の邪魔をするの?」


  それどころか、あちら側に足を踏み入れてしまった祐君は私すら

  邪魔者として認識してしまった。



  「祐君・・・私は・・・私は・・・・」


  何を言っても届かない

  


  私では祐君を戻せない

  あちら側に行った祐君をこの日常の世界には戻せない


  


  私では・・・・・・・・・・祐君が自分自身を守るために作った都合の良い世界とその唯一の住人である「彼女」が作る


  

  ――――   現実とあちら側をへだつヌリカベを・・・・・・・・・・・・・・・壊せない ―――




  グググググ


  祐君の指が私の首にめり込む 



  「あ、あ、あ、ゆ、ゆうく・・・ん」



  頭が真っ白になる、息が出来ない

  

  だけど、心の中で謝り続けた、ごめんなさい、ごめんなさい

  全ては私の責任です、どんな罪で設けますだから・・・・・・・・・・



  だから・・・・・・・・・・・・・誰か・・・・・・・・・・



  祐君の



  祐君の







         ――  ヌリカベを壊して  ―――














  



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