第4話 持ち上げすぎの家庭教師
最後にもう一人、家庭教師の男性だ。
勉強の時間になって、私の私室を訪ねたのだろう。
だけど、私がその部屋にいないと知って探しにきたようだ。
「お姫様、何かしたい事があるなら私に言うと良い。何か考えがあるのだろうが、勝手に出歩かれては困る」
こちらはなぜか事あるごとに私を持ち上げてくる。
私はただ息抜きに脱走したいだけなのに、彼の中では勝手に偉大なストーリーが出来上がっているようだ。
「必要なものがあればこちらで手配しよう。なに、遠慮はいらないさ。教え子の意をくんで動くのも家庭教師の仕事だ」
何かをする時は必ず斜め上の想像力で、勝手に手助けしてくれるから、思っても見ないような事に巻き込まれてしまう事が多い。
下町にお忍びで遊びに行くだけなのに、なぜか不正労働を強いている工場を調査することになった話があるし。
勝手に想像されるとコントロールができなくなるので、適当な用事を言いつけて退場してもらった。
以上、これが私の日常。
羨ましいって意見もあるけど、実際なってみるとそれほどいいものじゃないわよ。
恋なんて、本当に好きな人たった一人に好かれるのが一番。
まあ、それも難しいんだけど。
とにかく、多大な苦労をして男達を追い払った私は、最後に外壁にできた抜け穴を通って城の外に出ようとしたのだけど。
「わんわんっ、がうううっ。ばうっ!」
「おーい、ジョン! どこ行くんだ! って、姫様! また脱走されてるんですか!?」
「きゃんきゃん! へっへっへっ(ぺろぺろ)!」
見つかってしまった。
そうなのよこの体質、動物のオスにも有効なの。
たまにあるのよね、この罠が。
追いかけてくる犬が大声で鳴くので、騒ぎを聞きつけた人達が集まってくる。
今から静かに脱走する。
のは、難しそうだ。
はぁ、なんとかならないかしら。
この体質。