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変人

 今更ながら140字小説に手を出した。なんか本当はこんなことをしている場合じゃなくて、書けていない小説もあるし、生活も中途半端で、根本的にやるべきことがまったく手付かずな状態なのに、こんなことをしている。なぜ始めたのかはよくわからない。興味があった。


 始めてみるとなかなか奥が深く、字数制限と毎回闘っている。削るべき無駄な文章、より短く表現できる言い回し、会話表現、独白体……。ちょっと久々にまともな思考回路で文章の話ができている感じがする、たぶん気のせいだと思う。


 そこで気付いたのだが、コンスタントに同じクオリティを保って文章を書き続けられる人というのはだいたい変な人だ。これは掌編小説書きにだけ言えることではないが、そう思った。鉛筆の削りカスを食べたりシャンプーを飲んだりティッシュを食べるような人の思考回路は独特で、文章を書かせてみるとなかなか斬新なものが上がってくる。わたしの周りの人だけかもしれないが、そういう変な人はよくわからないものが見えていることが多い。そのよくわからないものがきっと文章センスをわけてくれるのだ。


 創作を続けるには変な人であるべきだとは以前から思っていたが、それを大事にすると重篤な社会不適合者と見なされる。自分の嗜好品だからと言って白昼堂々ティッシュを食べたり鉛筆の削りカスを食べるような人が社会に出てうまくやれるはずがない。それ以前に、世間一般では、小説を書いていると言うだけで軽く引かれる、これは何度か経験しているから断言できる。変な人だと思われる。それはきっと、太宰治や芥川龍之介のような文豪が変な人として有名になってしまったから、文字書き=やばい人の等式が出来上がってしまったんだろうと思う。そこまで知らなくても、又吉直樹さんとか、羽田圭介さんとか、近頃クローズアップされる作家を見て、第一印象として「普通の人だ」と思う人はなかなかいない気がする。仕方ない、よく知らない人々のことは所属するグループの代表格で判断してしまうものだ。


 ツイッターでも、文字書きというと、酒を片手に暗い部屋で、テーブルランプの灯りだけを頼りに、ブルーライトのダメージを受けながら、クマの酷い顔で、カタカタ書いてるイメージがあるのかな、と思わざるをえない。間違ってない。もっとも自分は酒を飲みながら書いたことはない。酔っていなければ書けないものもあるだろうけれど。少なくとも、コーヒーを片手に、いい姿勢で、原稿用紙に万年筆で、みたいな光の小説家はほぼいないだろう、自分のようなアマチュア、趣味文字書きはだいたい前者の闇タイプ、病みとも言える。もうその執筆スタイルが変なのだろうか。


 また小説を書く人には、他人にまったく興味がない人と、ネタになるからなんでも聞きたいタイプの人がいる。わたしは前者寄りだ。だからこの文章もほぼ推測の域を超えない。文末にはすべて"知らんけど"を補足して読んで欲しい。


 わたしのようなタイプは、自分の人生、知識、経験すべてを切り売りする。小説に昇華できるか否かで相手を顧みないこともある、少なくともわたしは。自分よければすべて良し、というより、相手になにか求めるより自分で考えるほうが早いと信じている、少なくともわたしは。


 後者のタイプは、いろいろなことを表現したい、知識欲と表現欲に取り憑かれている、いい意味でのペンの奴隷、とわたしは思っている。書きたい気持ちがあるから、いろいろなことを知りたい、自分が経験するのもいいし、誰かに取材するのでもいい、書きたい、書きたい!という印象を受ける。アクティブな文字書きだ。


 もちろん両者ともに、資料、裏付けのための基盤としての知識経験は必要不可欠だ。イメージとしては前者は私小説やハイファンタジー、後者は純文学やノンフィクションという作風の違いがあるように感じる、知らんけど。どちらにせよ普通に変な人であることに変わりはない。


 まあ平凡でなければ書けないものもある。純粋な、心を打つような鋭い切り口の文章は、わたしたちのような微妙に染まってしまった変な人では書けない。どちらが優れているとも思わないが、クリエイターって変人でなんぼって感じがするなあと思って書き出した独り言なので本気にしないでほしい。


 お察しのとおりわたしは鉛筆の削りカスもティッシュもシャンプーも口にするが、そこまで変な人ではないので安心して欲しいし、この世でいちばん美味しい嗜好品はミルキーに決まっている、異論は受け付ける。



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