表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

金魚

 うちには金魚が三匹いる。素人判断ではあるが、ワキンの雄が二匹、雌が一匹だろうか。あまり癒やしをもたらすでもなく、偉そうな態度で泳ぎ回る大事なペット達である。


 もともとは二匹だけであった。弟が保育園の納涼祭の金魚すくいでもらってきた。捨てるわけにもいかないし、ペットもいなかったので、当然飼うことになった。名前は、色が濃い方がキン、色が薄い方がギンと名付けられた。ともに雄だ。弟の金魚であったが、なぜかわたしだけが見分けられ、餌をやっていたのはわたしだった。だが、ペットを買う予定はなかったし、用意した水槽も小さかったし、これ以上は買えないというふうに弟には繰り返し告げた。


 しかし幼い子どもというのは祭りで金魚すくいをやりたがるもの。翌年、病院の納涼祭の金魚すくいで一匹もらってきた。名前はなんだったか忘れてしまったが、もらってきてすぐに死んでしまった。というのも、その頃にはキンとギンはたくさんご飯を食べ、元気に泳ぎ回り、大きくなっていた。その、なんというか、先輩のイビリみたいなやつだろうか、ご飯を横取りするのだ。その後何度か金魚は貰われてきたが小さいものはすぐに死んでしまうのだった。


 一度だけ、老害の二匹ともに病気になってしまった。ヒレがボロボロになってしまったのだ。悠々自適の二匹暮らしだったのに、なぜかそうなってしまった。水質が良くなかったのだろうか、いつの間にか治って、ぐるぐるぐるぐると水槽の中をスピードレースのように泳ぎまわっていたのには驚いた。原因も治った要因も全く未だにわからない。野郎のふたり暮らしには耐えきれないということだったのだろうか。


 最初の二匹が貰われてきてから四年ほど、いろいろあって金魚は三匹になっていた。キン、ギン、マダラ、雄二匹、雌一匹の冒頭の三匹である。一度だけサカリの時期でも知らないうちにあったのか、産卵をした。うまく管理しきれず、ひとつも孵らなかったが、なかなか感動的な出来事だった。その頃には金魚に興味があるのはわたしだけで、弟はもう金魚の管理から手を引いていたが。


 そのマダラも、最近は調子が悪い。片目が完全に見えないようだ、黒目が白濁して、虹彩にも出血が見られる、ヒレもボロボロになって、痛々しい。なぜかいちばん長生きして、餌をせびるときに尾ビレで水面を叩くという横柄な技を習得した老害二匹よりも、この、体のまだら模様も失われ、痛々しい姿を晒しながら懸命に生きている可憐な女性のほうが可愛いのは当たり前だ。今朝見たらもう片方の目も瞳孔が開ききっている。もう両目ともにうまく見えてないのかもしれない。それもこれも老害ジジイどものせいだろう。可哀想に、もっと早く隔離してあげればよかった。もう長くないのかもしれない。餌の食べも微妙になってきた。魚の診断はできないし、魚の医者になろうとは思えないのでどうにもできないが、彼女の穏やかな老後を願って、静かに見守りたいと思う。


 老害ジジイどもはいまやギンブナといっても過言ではないくらいデカい。デブジジイと呼んでいる。ほんとうに偉そうなので早く死んだりしないかなと思っているのだが、死なれたら死なれたでまた寂しいのだ。いまも意地汚く水槽の底石を口に含んでは勢いよく吐き出し、含んでは吐き出し、餌の催促をしている。


 それにしても、金魚よりも位が低い、わたしの家庭内カーストとは、いったい。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ