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最後の守護者

「主殿、終わりましたぞ」


 そう言うと、【アスタロト】が胸に手を当て、恭しく一礼する。


「ありがとうございます……【アスタロト】」

「ホホ、ではこれにて」


 ニコリ、と笑顔を見せ、【アスタロト】がこの場から消えた。


「本当に……ナディアはすごいですね……結局はあの(・・)グレイマンに完勝するのですから……」

「っ!? イヴァン!」


 安堵してしまったからか、僕は【ハープーン】によって受けた傷により、膝から崩れ落ちそうになったところをナディアが慌てて抱き留めてくれた。


「あはは……すいません……」

「本当に、あなたは無茶をして……!」

「ですが、最悪の二人(・・・・・)を倒すことができました……あとは、この階層の守護者、“ミカエル”を倒すだけです……」


 そう……もう、僕達を遮る者はいない。

 これで、ナディアを救うことができるんだ……。


「とにかく! イヴァンの傷の手当が先ですから!」

「は、はい……」


 僕はその場で寝転ぶと、ナディアがなけなしの水で僕の身体を綺麗にしてくれている。


 ああ……心地いい……。


 そう思い、目を瞑ると……僕はそのまま、眠りについてしまった。


 ◇


「んう……」

「あ……目を覚ましましたか……?」


 目を開けると、心配そうな表情で(のぞ)き込むナディアの顔があった。

 ああ……ナディア……愛しいナディア……。


「あ……」

「ナディア……僕は絶対に、あなたを手放しませんから……絶対に、僕の(そば)から離したりしませんから……っ!」

「イヴァン……私もです。絶対に、あなたから離れたりしませんから……っ!」


 感極まった僕がナディアを強く抱きしめると、ナディアも同じように抱きしめ返してくれた。

 それにしても、この絶望の中であんな奇跡(・・・・・)が起こるなんて、思いもよらなかった。


 そのおかげで僕は、夢を見続けることができる……。


「ナディア……ナディア……」

「ん……ちゅ……ぷあ……イヴァン……イヴァン……!」


 僕は嬉しさから、ナディアをひとしきり求めた後、最後の準備を整える。

 もちろん、最下層へと向かうために。


「ナディア……さあ、行きましょう」

「はい!」


 僕はナディアと離れないように手をしっかりと繋ぎ、守護者のいる部屋へと最短距離で向かう。

 途中で出てくる魔物達も、今の僕達の前では路傍の石に等しかった。


 そして。


「とうとう……」

「ええ……」


 僕達は、守護者の部屋の扉の前に立つ。

 この中に、最後の守護者……ミカエルがいる。


「ナディア。ミカエルは、地上では使い手のいなくなった、光属性魔法を駆使してきます。しかも、その攻撃は強力……ですが」


 そう言うと、僕はナディアの瞳を見つめた。


「あの最悪の二人よりも、ミカエルは弱い」

「ふふ……でしたら、私達が負ける要素は何一つありませんね」

「そのとおりです。なので、すぐに終わらせてしまいましょう」

「はい!」


 満面の笑みを浮かべるナディアと共に、ゆっくりと扉を開ける。

 すると、部屋の中央の台座に、孔雀の羽を持つ甲冑を着た男が、祈りを捧げた状態で鎮座していた。


「ナディア……行きましょう! 【ハウザー】!」


 僕は土属性魔法を駆使し、堅牢な台座とそれに固定される円筒を生成すると、火属性魔法をその円筒に込めて射出した。


 轟音と共に着弾すると、ミカエルの瞳が見開く。

 そして、腰にある剣を抜き、僕達を敵と認めて台座から一気に襲い掛かってきた。


「来てください! 【ベルゼビュート】!」


 ナディアの召還に応じ、光の魔法陣から神級召喚獣の【ベルゼビュート】が現れる。

 何者よりも気高く、尊大に。


「主殿……あの男に着せられた汚名、ここで晴らさせてもらうわよ!」


 やはり、グレイマンに対して自身の攻撃が通用しなかったことが許せないのだろう。【ベルゼビュート】は、牙を剥き出しにしてミカエルに飛びかかった。


「ウフフ、食らいなさい」


【ベルゼビュート】が獰猛な笑みを浮かべ、ミカエルの頭上から鱗粉をまき散らす。

 それを無防備に浴びたミカエルの皮膚がただれ、色が紫色に変色していく。


「主殿の想い人、死にたくなければ鱗粉には気をつけるのね。人の身ならば、ほんの僅かでも即死よ」


 クスクスと(わら)いながら注意する【ベルゼビュート】。

 も、もちろん全力で避けるとも。


 そして僕は、長さ一・五メートルの細長い円筒を生成し、同じく圧縮して生成した弾丸を用意する。


「ナディア……一緒に……!」

「はい……! 【ベルゼビュート】!」

「分かったわ! 主殿!」


 僕達の意図を理解した【ベルゼビュート】が、一気に飛び退く。

 ミカエルはといえば、【ベルゼビュート】の鱗粉によって身動きもままならなくなっていた。


 そして。


「「【アルティマ・ラティオ】」」


 僕とナディアは声を揃えて唱えると、円筒から超高速で弾丸が射出された。


 ――タアン。


「ッ!?」


 発射音と同時にミカエルの額に穴が開き、後頭部が炸裂する。


「イヴァン! やりました!」


 どさり、と床に倒れて身動きしなくなったミカエルを見届け、ナディアが満面の笑みを浮かべて僕に抱きついた。


 もちろん、僕は。


「あはははは! やりましたよ! ナディア!」

「はい! イヴァン! イヴァン!」


 僕達は嬉しさのあまり、守護者の部屋をくるくると回りながら喜び合う。


「ウフフ……主殿、私はこれで失礼するわね」

「【ベルゼビュート】、ありがとうございます!」


 手をヒラヒラさせながら、【ベルゼビュート】は微笑みながらこの場から消えた。


「おっと、こうしてはいられません! 早く最下層に行って、“ティソーナ”を手に入れましょう!」

「はい!」


 僕達は守護者の部屋を抜け、いよいよ最下層へと繋がる階段を降りた。

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