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第一階層の守護者、ザドキエル

「ナディア、本当によかったのですか?」


隣を歩くナディアに、僕はおずおずと声をかけた。

もちろん、どうするか判断を委ねたのは僕だし、彼女の決定に否やはない。


とはいえ、あれだけ屈辱を与えられた元凶でもある最低女を、本当にナディアは許せるのだろうか……。


「はい。それに、これ以上はただの弱い者いじめ(・・・・・・)になってしまいます。何より、今最も屈辱的なのは彼女ですから」

「そ、それはまあ……」


これから一週間(・・・)、少なくともあの最低女は一人で生き抜いていかなければならない。

夢の中で二人を無視して先へ進むことを選んだ時は、当然ながらセルヒオがいたおかげで守ってもらえたが、この現実ではそうはいかないから。


「ですが」

「?」

「……ふふ、彼女が耐えられるか(・・・・・・)は分かりませんが」


そう言って、ナディアがクスリ、と(わら)った。

そんな彼女の表情にどんな意味があるのかは分からないけど、僕はそれ以上尋ねずに、次の階層の階段がある先へと向かう。


そして、歩くこと二時間。


「ここは……?」

「おそらく、この先が迷宮の()でしょうね」


現れた巨大な鉄の扉の前で、僕は知らないふりをしてそう告げた。

でも、これこそが第二階層へと向かうための扉。


この向こうに、下の階層へと降りる階段と、ここ第一階層の守護者である“ザドキエル”が待ち構えている。


不思議なことに、ザドキエルはこれより下の階層にたどり着いている人間は大勢いるのに、夢では必ず出現していた。

そのことから察するに、このザドキエルをはじめとした守護者達は、一定時間が経過すれば、倒しても復活するのではないかということが考えられる。


まあ、今の僕達には大した脅威ではないけど。


「さあ、行きましょう」

「はい」


僕達は扉を開け、中へと入る。

そこには……全身を(つた)に覆われた、一人の美しい女性がいた。


でも、騙されてはいけない。

あの人間の様相をした者こそ、ここの守護者、ザドキエル。

そして、あれ(・・)は人間なんかじゃない。


「「っ!?」」


突然、ザドキエルがその目を開き、僕達を見据えた。

侵入者である、僕達を。


「っ! 来ます!」


僕はナディアの手を引いて抱き寄せると、横へと飛び退く。

すると、僕達がいた場所の床から、樹木の根のようなものが突き破って現れていた。


「あれは……」

「あのザドキエルの手足、ですね」


そう……僕達の目に映っているあの女の姿は、ザドキエルの本体じゃない。

あの姿で侵入者を油断させ、樹木の根によって捕食する、ただの魔物だ。


だけど。


「大丈夫、僕に任せてください」


そう言って、あのカリナ令嬢を焼き尽くした合成魔法、【ナパームボム】をサイズダウンして生成すると、僕は先程飛び出してきた樹木の根が作った穴へと放り込んだ。


すると。


「ギギ、ギ……ッ!?」


ザドキエルが、まるで悲鳴を上げるかのように鳴り、女の姿をした部分が少しずつせり出してくる。

その全てが露わになった、その姿は。


「こ、これは……?」

「はい。これこそがザドキエルの正体です」


おそらくだが、元々は樹木の魔物であるトレントが変異したものなんだろう。

天井すらも突き破り、見上げるほどの高さを誇るその姿は、まさに大木(・・)と言うほかなかった。


「さあ、あとは本体を倒せば終わりです! 【ヴィジラント】!」


僕はセルヒオを追尾した合成魔法、【ヴィジラント】を六基生成する。

ザドキエルには金属部分がないため、追尾機能は搭載していないけど、あれだけの巨体だからそもそも必要ない。


「行け!」


僕の合図と共に、六基の【ヴィジラント】は一斉にザドキエルへと襲い掛かる。

ザドキエルも、樹木の根の手足を駆使して打ち落とそうとするけど……残念だがそれは悪手だ。


「ッ!? ギギ……ッ!?」


叩き落とした瞬間、【ヴィジラント】は破裂し、樹木の手足を破壊するだけでなく、炎によってザドキエルの胴体へと燃え広がっていく。

とはいえ、樹木の魔物であるザドキエルは身動きができないため、ダメージを負うと分かっていても、【ヴィジラント】を打ち落とすしかない。


僕の攻撃を受け続け、ザドキエルが悲鳴を上げる。

その手足は焼け落ち、身体も焼き尽くしていく。


そして。


「ギ……」


とうとう、ザドキエルは沈黙(・・)した。


ふう……これで、守護者の討伐は終わり……っ!?

僕がナディアに振り返った、その時。


「…………………………」


床に膝をつくナディアが、鋭い視線を向けていた。


その先には。


「チッ……外したか」


つい数時間前まで、僕達が耳にしていた声。

そして、ナディアが見逃してやった女。


「大人しく死んでくれればよかったのに、ついてない」


――アリア=モレノだった。

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