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食糧共有の意図

「……何か御用ですか?」


 僕達の前に現れたリリアナ令嬢に対し、僕は素っ気なく声をかけた。


「……お願いします、私をあなた達の仲間に加えていただけませんでしょうか」


 泣きそうな表情で、リリアナ令嬢が深々と頭を下げた。

 普段は常に理知的で、冷静で、決して感情を露わにすることもなく、己を律することができる彼女が。


「あの二人はどうしたんですか? 先程まで一緒だったじゃないですか」

「……あの後口論になり、エミリオ殿下とは(たもと)を分かちました……お願いします! こんなところで私一人だけでは、すぐに魔物達に殺されてしまいます! いえ! それだけではありません! このままでは、他の子息達にも……!」


 リリアナ令嬢が僕の足に縋りつき、必死で懇願する。

 さて、どうしようか。


 ハッキリ言ってしまえば、彼女を加えたところで何のメリットもない。

 いや、むしろデメリットだけだ。


 でも。


「……分かりました」

「っ! ほ、本当ですか!」

「はい。ただし、迷宮を攻略する上で、僕の指示には必ず(・・)従ってください。それが条件です」

「わ、分かりました! ありがとうございます!」


 今まで一度も見たことがないような満面の笑顔を見せ、リリアナ令嬢が何度も頭を下げながら感謝の言葉を告げた。


 一方で。


「…………………………」


 僕の決定が不服なのか、ナディアは眉根を寄せながら僕とリリアナ令嬢を交互に眺めていた。


「そ、それで、私もお二人の仲間に加えていただきましたので、せっかくですから今後必要なものについては、一元的に管理いたしませんか?」

「? それはどういうことですか?」


 リリアナ令嬢の言葉の意味が分からず、僕は思わず聞き返す。


「はい。例えば食糧や水は、それぞれで消費量が異なったりしますので、ばらつきが出てしまいます。ですが、それらをまとめて管理してしまえば、三人分の残りの水や食料を把握しやすくなりますので」

「ああ、そういうことですか」


 意味を理解した僕は、ポン、と手を叩いた。


「それはいい考えです。では、僕のほうで管理いたしますので、あなたの水と食糧をいただけますか?」

「はい、こちらになります」


 僕は簡単には受け入れないだろうと思いつつそう告げると、彼女はいとも簡単に僕に差し出した。


「……意外でした。こんなにあっさりと僕に食糧を渡すなんて……」

「フフ……イヴァン様に信頼していただくためには、私も全てを見せませんと……」


 そう言って微笑むリリアナ令嬢は手を伸ばし、僕の胸にそっと触れた。


「リリアナ様、そのような行為はおやめください」

「フフ、分かりました」


 ナディアに咎められ、リリアナ令嬢が手を引っ込める。

 でも、その表情はどこかナディアを揶揄(からか)っているようにも見えた。


 ◇


「……迷宮の中だと、今が昼間なのか、それとも夜なのか、それすらも分からないですね」


 おそらく、リリアナ令嬢が加わってから五時間は経過したとは思うけど、それが何時なのかが分からない。

 夢の中でも、正確な時間が分からずにどのタイミングで休憩をするか、苦労したなあ……。


「イヴァン様、そろそろ休憩して食事を摂ったほうがいいかと」

「そうだね。まだ時間がかかりそうだし、そうしよう」


 僕達は床に座ると、荷物から食糧と水筒を取り出す。

 なお、ここまでの探索では意外にもリリアナ令嬢が活躍した。


 聞いたところによると、彼女は過去に父親であるトーレス侯爵の政敵が放った連中に誘拐されたことがあるらしく、それから自衛のために護身術と魔法を学んだとのこと。

 その甲斐もあり、今では氷属性魔法に関してはかなりの使い手になり、ここまでの魔物との戦闘でもかなりの活躍を見せた。


 おそらく、迷宮の中盤に差しかかる手前まで踏破できるだけの実力があるだろう。

 これは、あの学院トップクラスの剣術の腕前を持つドナトよりも強いと僕は評価している。


「え、ええと……ナディア?」

「なんですか?」


 僕の腕にしがみつくナディアに、僕はおずおずと声をかけるけど、彼女は不機嫌そうに冷たく聞き返してきた。


「そ、そのー……この状態ですと、上手く食糧を分配できないんですが……」

「でしたら、左手で分配すればいいのでは?」


 ……どうやら、ナディアは折れるつもりがないらしい。

 そして、時折リリアナ令嬢に対し、舌を出して挑発したりしている。


 僕は、彼女がこんなに嫉妬してくれているのが、たまらなく嬉しい。

 やっぱり、リリアナ令嬢を加えて正解だった。


 とはいえ、それも今日限り(・・・・)で見納めなんだけど、ね。


「では食糧をお分けしますね。ああ……そうそう、やはり自分の食糧を自分で食べたいでしょうから、それぞれの食糧は僕のほうで綺麗に分けてありますので安心してください」

「っ!?」


 僕がそう告げた瞬間、リリアナ令嬢がただでさえ変化に乏しい表情を引きつらせた。

お読みいただき、ありがとうございました!


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