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元皇太子達との遭遇

「イヴァン……これから、どうしますか?」


 迷宮の通路を進む中、隣を歩くナディアがおずおずと尋ねる。


「……もちろん、迷宮の最下層を目指します。なので、まずは下の階層へと降りる階段へと向かいましょう」

「はい」


 僕達は口数も少なく、その階段を目指した。

 皇太子をはじめ他の子息令嬢も殺して食糧を奪っておきたいところだけど、今はそんな気分じゃない。


 すると。


「……今度は私が」


 ヘルハウンド数体とスライムが二体、僕達の前に立ちはだかるのを見て、ナディアが一歩前に出る。


 そして。


「来なさい。【マルバス】」


 そう告げると、ナディアの前に光り輝く魔法陣が浮かび上がり、一体の獅子の姿をした召喚獣が飛び出してきた。


「「「「「ッ!?」」」」」


 それを見たヘルハウンドが一瞬(おのの)くが、すぐに召喚獣を取り囲む。

 スライムはその動きの遅さから、ゆっくりと近づいてきた。


 だけど。


「グオオオオオオオッッッ!」


 咆哮と共に、召喚獣は次々とヘルハウンドを鋭く強大な爪と牙で屠っていった。


「ふふ……いい子ね」

「グルル……」


 全ての魔物を倒した召喚獣は、笑顔のナディアに撫でられながら、気持ちよさそうに目を細めると、役目を終えてこの場から消え去った。


 それにしても、やはりナディアの使役する召喚獣はすさまじい。

 今回召喚した【マルバス】も上級召喚獣に位置しており、ヘルハウンドやスライムでは相手にならない。


 でも、それでもこの迷宮においては、上級召喚獣さえ序盤から中盤までの階層程度の実力でしかないのだから。


「イヴァン、見ていただけましたか?」

「ええ……やはり、君は強いです」


 少しおどけた表情のナディアに、僕は素直に賞賛の言葉を送った。


「……だから、イヴァンも一人で抱え込まないでくださいね」

「はい……」


 本当に、君は強い。

 君だって、こんなところに堕とされてつらいはずなのに。


 何より、僕は夢の中で何度も経験しているけど、ナディアは初めてなんだ。

 それでもなお、この僕を気遣ってばかりで……。


 うん……やっぱり僕は、ナディアを世界中の誰よりも大好きだ。

 この迷宮から彼女を救い出したその時、僕はこの想いを告げよう。


 そう心に誓い、僕達は再び歩を進めた。


 ◇


「【ホローポイント】」


 僕は土属性魔法によって生成した弾丸を火属性魔法によって高速で射出し、目の前のリザードマンの眉間に当たった瞬間、その後頭部が爆ぜた。


「行きなさい。【ボティス】」


 ナディアが召喚した大量の蛇の召喚獣が一斉にもう一体のリザードマンへと群がり、貪るように食い尽くしていく。


 終わってみれば、ナディアが対応したリザードマンのほうは骨と身にまとっていた武器と防具だけを残すのみだった。


「ふふ……みんな、ありがとうございます」


 ナディアが優しくそう告げると、大量の蛇の魔物はお辞儀をしてこの場から消えた。

 だ、だけど、リザードマンの無残な姿を見ると、【ボティス】という召喚獣と対峙した相手には、同情しかないな……。


「さあ、行きましょう」

「は、はい」


 嬉しそうに進むナディアに、僕は慌ててついていく。

 だ、だけど、このままだとナディアと離ればなれになってしまう危険があるな……た、ただでさえ広くて深い迷宮だし、その……ちゃんとはぐれないようにしないと。


 ということで。


「そ、その、ナディア!」

「? どうしましたか?」


 緊張しながら声をかけると、彼女は不思議そうな表情を浮かべて尋ねる。


「は、はい! 迷宮で迷ってはぐれてしまうといけませんし、ま、まだ元皇太子や取り巻き達が、ドナトのように襲い掛かってくる可能性があります!」

「は、はあ……」

「で、ですからその、ここからは……」

「あ……」


 僕は彼女のその細くて白い指を僕の指で交差させ、しっかりと握りしめた。

 こうすれば、そう簡単に離れたりすることはないから。


「た、確かにイヴァンの言うとおり、ですね……これなら、私とあなたが離ればなれになることもありません……」

「ええ……」


 頬を赤く染め、蕩けるような表情で僕の顔を(のぞ)き込むナディア。

 そんな彼女に、僕の心がときめかないはずがない。


「では、まいりましょう」

「ふふ……はい」


 僕とナディアが手を繋ぎ、肩を寄せ合いながら迷宮の中を歩く。


 その時。


「! イ、イヴァン! ナディア!」


 後ろから、慌てて僕達の名を呼ぶ声。

 ああー……ここで遭遇するなんて、夢の中と少しずれているな(・・・・・・)

 とはいえ、これくらいは誤差の範囲内だし、迷宮攻略に影響はない。


 そんなことを考えながら、僕は眉根を寄せて振り返る。


 そこには。


「君達も無事だったんだな!」


 元皇太子エミリオ=デ=アストリアと、最低女のアリア=モレノ、そして財務大臣であるトーレス侯爵の令嬢、“リリアナ=トーレス”の三人がいた。

お読みいただき、ありがとうございました!


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