ためるな、危険㉙
翌朝、不気味さと恐怖心から早目に目が覚めた魔王。目的や目的地すら教えてもらえなかったから、寝ても覚めても不安しかなかった。魔王の朝にしては珍しく時間を持て余したので、ゆっくりと身支度を整えることができた。ちょっとした気まぐれで整髪料までつける始末。着るものはスーツしかないので如何ともしがたいが、髪をかき上げた感じはいつもより若々しく見えた。それでも時間は余ってしまい、7時に城門集合という約束だったが、30分も前に部屋を出てしまった。遅れるよりはずっといい。心にゆとりがある。特に指示された持ち物もなく、煙草だけを胸ポケットに入れて城門へ向かった。華を待ちながらのんびり一服するのも悪くない。
「おはようございます。」
華はやはり待つ側だった。結局は待たせるのが魔王。魔王が城門を開けると、当たり前のように華が待機していた。華の挨拶にびくっと反応する魔王。
「おはよう・・・早いですね。まだ30分前なのに―」
声と表情は平静を装っていたが、心の臓はバクバクである。おかげで煙草を吸いたいソワソワは幸か不幸か霧散した。
「それで華さん、今日はどちらへ?」
「そうですね。ピクル砂丘にしましょうか。あそこなら広々としていますし、動物もいないでしょう。」
「えっと・・・あそこは砂丘ではなくて砂漠・・・・・・そりゃ広いとは思いますけれど、広すぎませんか?」
「さぁ、出発しましょう。往きは歩きで行きますよ。のんびりしていると日が暮れてしまいます。」
御存知ですか、魔王様。砂漠にかかる虹はとても美しいのです。1度見たら忘れない、忘れられない景色になるはずです。




