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ゲームスタート⑥
普通に考えると、広い魔王城をひとりで掃除するだけでも1日では足りない。周辺の草むしりだったかなの単独業務だった。せめて着替えれば、という魔王の助言もどこ吹く風。いつもビシッと決めたまま。草むしり位は手伝えるよと言った時も、仕事が増えますのでとズバッと断られた。魔王といえどちょっと傷ついた。華の使う道具ほうきにちりとり、雑巾、モップ、はたきくらいのもの。原始的にも程がある。というか非効率的ではないか。自分の手で直接きれいにしないと気が済まない性格なのだろうか。大なり小なり魔法を唱えていないと説明がつかないレベルであるが、驚くべきことにいつ何時すれ違っても衣服には埃一つついていない。無論、廊下にも。窓に指紋も、鏡に曇りも、銀食器が輝きを失うこともなかった。だから廊下に煙草の灰が落ちていたと指摘された時、魔王は心の底からしまったと、すまないと思った。けれどもそれを表現する術を知らず、結局いつも通りの展開になってしまった。こういう時に暗黒魔法はくその役にも立たないと痛感するのだった。