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ゲームスタート③
魔王城の周囲は巨大な山脈が城を包囲するように峙っていた。雲を貫いて外部からの浸食を拒む、魔王城を象徴する景観。険しく、絵に描いたような岩肌が見えた。そしてこの山脈なくして、現魔王が魔王として君臨することはできなかった。
魔王が表に出ると、空は相も変わらずの曇天。魔界にやってきてから太陽を拝んだことはなかった。常に厚い雲で覆われていて、日中でも薄暗いというのがやはり魔界らしかった。息を吐き、大きく吸って、
「ヘールーファーイーヤーッッッ!!」
大声で定番の炎属性攻撃魔法を唱えた。火球は掌に乗る程度の大きさで、右手・左手・右手・左手と交互に山脈目掛けて放り投げた。
5投目、最後の1球はやや大きめで、両手で頭上から放った。やがて山の麓に吸い込まれ、ドカーンと爆発した。城周辺まで揺れが伝わる程の威力。魔王のストレス解消法だった。こんなことができれば、そりゃ気持ちいいに決まっている。