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黒づくめの工作員など映像の中だけ。だいたいは一般人と区別がつかないのが普通

過去最大数の誤字脱字をかましてしまいました。ご指摘大変ありがとうございます。


世の中に出ている作品には諸事情で内容の一部が変わってしまうということがままあります。ドラマなどだと演じている俳優が鬼籍に入られるなどはしかたないことです。それでも過去の映像を観れば生き生きとした姿を見ることができて、まるでまだまだ現役でおられるような救われた気分になりますね。休日に懐かしい映像を観て、そんな事を思ってしまいました。

 面会は思ったよりあっさり終わって城の一角にある風呂に来ている。立花様はやはりお忙しいようだ。

 聞いた事への塩味回答をダイジェストで抜粋すると


 1.ポイントの件は国のために使ったならおk。残った分で寄こせや。

 2.おもしれーからオブジェはしばらく残しとけ、と御前のご指示があったで。ヨロ。

 3.オメーの直の上司は我。マジ危なっかしいから他に預けられん。

 4.あ、今後ポイント引き渡しの後で改めて入手したら明日扱いな。一日に何度も来んな。


 こんな感じだった。もちろん例によって実際はもっと堅苦しく古風な話し方で、それはもうバッサバッサ切り捨てるように簡潔だし、こんなフレンドリーな物言いではない。むしろあの方がこんな喋り方しだしたら逆に恐い。

 もし現実になったとしたらそれは首を気付かないうちに切り落とされていて、それを理解すら出来ない首が地面に転がる刹那に見た、脳の錯覚だろう。


 何気に立花様にお渡しする前にポイントを確認したら意外に実績解除が続いていて、そこそこ纏まったポイントが得られていた。


<実績解除 食い倒れ 1000ポイント>


<実績解除 現実爆発しゅろ 3000ポイント>


<実績解除 なこ廻り捕物帳 3000ポイント>


<実績解除 奸計ヲ暴きゅ 3000ポイント>


 ここまでが今日の騒動中に確認したもの。諸々差し引いて残5873ポイント。次がその後に解除されたもので


<実績解除 STREET PERFORMER 1000ポイント>


<実績解除 町にょらんどまあく 1000ポイント>


 これでプラス2000で残7873ポイント。


 よって7割は5511.1ポイント、3割は2361.9。小数点の端数はこちらの取り分なので5511ポイントを渡し、残2362ポイントか。メンドクサイ、メンドクサイよ。電卓が欲しい。ソロバンも使い方だけは知っているからそっちでもいい。


 大漁で嬉しい限りなのだが、実績でひとつだけ理解できないものがある。タイミング的にとばり殿と一緒に買い食いしていたあたりと思われるのだが、これは現実=リア充でいいのだろうか。知らぬ間にタダ甘の仲良しカップルでも目撃していたか? 


 透明化できるクリーチャー系とかならまだいいが、見てもイチャイチャと認識できない人外の求愛行動とかだったら嫌だなぁ。うっかり理解してしまったら正気でなくなりそうだ。




 白猫城の敷地には大小複数の風呂がある。ほとんどは薪の節約のため決まった時間に入浴する必要があるが、例外としてふたつある大きい風呂『()の湯』『()の湯』だけは交互に沸かして洗ってのローテーション式になっていて、いつでもどちらかには入浴できるらしい。日勤でも夜勤でも安心だ。


 だがしかし、非常に残念ながら屏風覗きに解放されているのは奥まった離れにポツンとある小さなひとつだけ。他の風呂は利用できないので沸かした風呂に入りたければ時間を守る必要がある。夏場はまだいいけど冬は時間厳守で入らないとぬるま湯で風邪を引いてしまうだろう。


 申し訳程度に視界を遮る柵の向こうからは白く揺らめく湯気が薄っすらと漏れている。ちょっと遅い時間になってしまったが、まだまだお湯は温かいようだ。むしろ今の時期は多少ぬるいくらいでちょうどいい、この時間で正解かもしれない。


 籠に置かれているてぬぐいを引っ掴み、代わりに洗濯物を入れると白猫城初のお風呂とご対面。昨夜は潰れた二人の介抱もあり、自身も睡魔に抗えず入浴する前に寝てしまった。


 屏風覗きは指定されたひとつの風呂しか使えないので、しかたなくとばり殿に案内された井戸で朝に行水をして誤魔化したのだ。夏でも井戸水はとても冷たかったです。


 大きさは一般家庭にある風呂釜のちょい大き目くらいで庶民には十分な容積の風呂釜。これってアレか、かの有名な五右衛門風呂か。下には火を焚くための釜土があって、炊事に使う釜をそのまま大きくした感じだ。


 ただ五右衛門風呂ならサイズは現実のものより明らかに大きい。むしろ普通の風呂より作るのも入浴するのも大変だろコレ。好事家のお遊びで作ったのか? 金持ちの金の使い方は分からん。


 それにしてもおっかないな、入浴方法を知らなかったら大火傷するところだ。この辺の認識、当然の常識として知っていると思い込む考えは注意したほうがいいだろう。幽世の常識と現代人の常識には齟齬(そご)があると思って、何事も一呼吸置いたがいい。


 五右衛門風呂の入浴法は二通り。ひとつは釜の蓋を裏返して底に沈め、高熱の底面に足が触れないよう守る方法。もうひとつは下駄を履いたまま入浴する方法がある。   


 どちらも絶対安全とは言い切れないので、なるべく動かないよう、横面にも触れないよう入るのがうっかり火傷しないコツらしい。和式の便器座りでもしろってかい。


 釜を跨ぐための踏み台に下駄が置かれているので、この風呂は後者推奨のようだ。ヤンキー座り入浴確定である。癒しの空間からは程遠いが、構造上ゆっくり入るものでもないからしかたない。


 しかし困った、妙にかわいい下駄が小さ過ぎて履けない。これは昔の人基準のフリーサイズだろう。といって外から履いてきた下駄はさすがに使いたくないぞ。蓋は蓋で見当たらないし。


 仕方ない、今日のところはかけ湯だけして体を洗おう。人と妖怪()はこういった齟齬(そご)を繰り返して分かりあっていくのだ。


 取っ手の付いた桶を手に湯船を覗いた瞬間、うおッ、と思わず仰け反ってしまう。


「きたっ」「遅かったねい、湯がぬるくなってしまったよ」


 揺らめく透明なお湯からザバリと浮上してきたのは青と赤、金と銀。昨日ぶりの手長足長様だった。




「なかなか良い住まいだねい」


 ぼんやりした灯篭の灯りに照らされた赤い肌の手長様は、用意された座布団の上で足を投げ出した格好で座っている。この方は足が動かないのでどうしてもこんな形の座り方になるようだ。できれば座椅子やひじ掛けがあった方が楽だろう。あって困る物でもないし、ひとつくらい購入リストに加えておこうか。


「まえ」


 こちらの番か。火のない囲炉裏に敷かれた灰に『×』を書いて『○』を挟み『×』に変える。要するに手書きでオセロの真似事をして青い肌の足長様と遊んでいる。書いては消してと面倒だが、道具らしい道具も無いからしかたない。


 日本の昔ながらの簡単な室内遊戯というと、だいたい何かしらの遊具がいるものばかりしか思い浮かばなかったため、棒切れ一本で盤面も描けて簡単かつ、コマも二通り分かればいい簡素な記号で表せるオセロは悪くないチョイスだろう。


 幽世には囲碁と将棋はかなり前からあるようで、先ほど入った立花様の私室には使い込まれた立派な碁盤が何気なく置かれていた。


 ああいった代物で馴染みがあるのはアプリ画面の向こう側か、せいぜい玩具程度のボードゲームくらいしかないので部屋のインテリアとしても妙に魅力的に映ってしまう。


 だって背景が純日本建築なんだもの、そりゃもう似合う似合う。日用品じゃないのに欲しくなったくらいだ。


 囲碁どころか五目並べしかできないけどね、将棋はとある大作ゲーム内のミニゲームとしてあったので、実績解除のためにしつこくやっていたから駒の動かし方くらいは分かる。


 それにしても来客があって初めて思い至る物の無さ。自炊用品よりもっと細々した生活用品を揃えるべきだった。湯のみとかの食器も1人分しかないのでお茶も碌に出せない。


 そのお茶も淹れる以前に火を(おこ)すことからして難渋した。まず暗い中で火打石を探してウロウロし、足長様に見つけてもらった後は時代劇の見様見真似でカチカチやって一向に火が付かず、手長様のアドバイスを受けて火おこし用の木屑入れを見つけて種火を作って、汗だくになりながらどうにかこうにか灯篭に灯りを灯せたというグダグダぶり。


 実際にやるとなるとホント大変だったわ、火花程度じゃ全然つかないんだもの。


 そしていざお茶でも淹れようと思ったら器がひとつしかないと来たもんだ。なまじ急須があったから油断した。旅館みたいにふたつみっつくらいはあると勝手に思い込んでいたのが悪い。


 ちなみにお茶っ葉は急須を収めてあったミニチュア箪笥みたいな箱の引き出しに入っていて『?』となった。よく考えたら幽世の時代、文化背景的に考えてそりゃアルミ缶とかに入っているわけがない。


「住むのは今日が初めてだろう? 手長も足長も知っているからお構いなく」


 なにせ昨日の夜も来たからねい、などと聞き流せない事を仰る手長様。たしかに昨日から寝泊まり出来るよう準備されていたとは聞いている。しかし、連日で来られるとは何の用があると言うのだろう。言付けでもしてくれればこちらから窺ったのに。


「まえ」


 あ、角取られた。足長様は思ったよりロジカルな発想で隙が無い。ただ、オセロは四隅を取るのが有用なだけで絶対ではない。最後に枚数が多くなる、パスせずに済む打ち回しが大事なのですよ。


「なに、お詫びで呼びつけるのも違うと思ったのさ。ついでに昨日も昨日で風呂を借りたしねい。まったくの無駄足にはなってないよ」


 ああそうか。寝泊まりだけじゃなく風呂も沸かしてあったわけか。それで誰も使わなかったら本当に無駄になっていた。これはむしろ感謝すべきだろう。薪だって只じゃないし、水汲みだって重労働なのだから。


「それに昨日と違ってお詫び以外も兼ねているしねい」


 どうやら嘔吐で着物を汚したことをだいぶ気に病んでいらしたようだ。嘔吐の原因は屏風覗きの使った『木戸』のせいなのでむしろこっちが恐縮する。


 手長様と足長様だからまだ気持ち悪い程度で済んだが、普通の妖怪では脳がやられてしまうかもしれないというデンジャーな代物だ。吐かれたくらいで腹を立てる気はない。

 その着物が借り物だったのでそちらに謝る事を思うと、ちょっと気が重いが。


「まあそのお詫びも兼ねてということで、手長と足長の耳に入ったある話をその耳に流してあげよう」


 手長様が切り出してきたのは、とある国々を回る的屋の話。

 世の中の生業には一か所に留まらず時期を見据えて儲かる土地へと移動する仕事がある。力士の巡業や旅芸人一座などは良い例だ。長く居ても客足が先細りするだけなので、ある程度営業したら他所へ行き一定期間を空ける。


 時期というならこういうものもある、『祭りの屋台』だ。国ごと、地域ごとの祭りを回遊魚のように転々としていく商いで、時期があっていれば大荷物を持っていても不自然ではなく、祭りという浮ついた行事中は警備の目も届き難いだろうね、なんていう話だ。


 例えば、例えばだが監獄に脱走道具や武器を持ち込むために小さなパーツに分解して持ち込む、なんてトリックと同様に『先に商売道具に偽装した呪術道具を少しづつ持って、数人バラバラに入国』『後から来た者に呪いを彫り込む』なんてことが出来たとしたら。


「手柄になるといいねい」「まえ」


 今からまた立花様にお目通りを願ったら叶うだろうか。それとオセロは僅差で勝った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 有名な俳優、声優さんたちの訃報が続いていますね。 これも時の流れなんですかね……。 >知らぬ間にタダ甘の仲良しカップルでも目撃していたか?  おのれ…!(ギリ)
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