仲良くケンカしな♪
誤字脱字のご指摘、いつもありがとうございます (;Д;)
北〇の拳を実写ドラマとして扱う漫画を見たのですが、ア〇バの異世界転生物と同じくリ〇の性格がキツくて笑う。そっちのほうがキャラ立ちしやすいんでしょうかね
面倒な事になった。
妖怪にとっては恩も義理も大事だが、もうひとつ通さねばならないものがある。
それは面子。プライド、誇り、矜持だ。
大天狗黒曜によって操られた浦衛門が料亭を放火し、屏風覗きたちを襲ったあの日。駆けつけてきたとばり殿によって彼女は打ち倒された。
それ自体はむしろ感謝すべきことである。もしあのまま浦衛門が暴れ続けたら、たとえ操られたせいだとしても山ン本一家すべての者が白ノ国にいられなくなっただろう。
火消しの棟梁が放火したというだけでも大問題なのに、術の被害者の中には白玉御前のご母堂であるろくろちゃんまでいたのだ。これは絶対にお咎め無しとはいかない。
それでも彼女が大きな責めを負わずに済んだのは、ろくろちゃん自身が無頼として不覚を取ったことを自らの失敗として扱い、浦衛門を責めなかった事や、何より軽傷であったことが大きい。
もし酷い怪我を負ったり、最悪の結末として死んでしまったとしたら。たとえこの姉が戦いの常として責めずとも、御前や立花様が許さなかったと思う。
加えて様々な妖怪たちからの擁護もあった。操られたという事情を鑑み、浦衛門や山ン本組に同情してくれた者たちが多かったのだ。
そしてもうひとつ。事件後に周囲に好感を持たせた彼女の行動がある。
ジタバタと言い訳せずに自ら出頭し牢に入ったことだ。あの潔さが日本妖怪たちの感性に、謝罪の琴線に触れた面があると思う。
頭を低くし真摯に反省しているのならと、同情心が強くなった面があるだろう。
だが――――
「聞き捨てならんな、山ン本の」
まるで初めて会った頃のような仏頂面になったとばり殿が、袴の折り目を気にするフリをして目を合わせない浦衛門に向き直る。
「これっ! 何を言い出すんじゃ浦の字! 守衛様に向かって」
泡を食うという言葉がピッタリの狼狽ぶりで、タヌキの設樂氏が浦衛門の袴をグイグイと引っ張る。もし彼の体格がクマほどもあったなら、シニョン頭を掴んで下げさせているところだろうか。
「あんときゃ確かにこっちがやられやした。けど、真っ向からなら守衛の姐さんにも負けやしません。そう言ってるだけです」
――――罪は罪としてそれはそれ。反省も贖罪もあずかり知らぬところで浦衛門は納得がいっていなかったのか。
問題は戦った相手との決着とその結果。浦衛門は侠で食っているひとりとして、とばり殿に倒された事に思った以上にわだかまりが残っていたようだ。
あの決着を根拠に世間の見立てる強さの評判は、とばり>浦衛門。これがとにもかくにも不本意だと、山ン本家三代目のお頭は言う。
「その口が今も聞けるのは私が殺さなかったからだ」
対して、守衛隊長であるとばり殿とて武を看板にした役目を持つ役妖怪。酒の席でのお世事合戦の中とかならまだしも、こんな凍った空気の中で『そうですね』なんて謙虚に言えるわけがない。
挑発したのが浦衛門なら買ったのはとばり殿。ふたりの間で放電現象でも起きているかのようなピリピリした気配が立ち込めていく。
なおそんなふたりの間に挟まれている松はとても迷惑そうだ。普通の馬のように騒ぎこそしないが、黒く大きい瞳で『おい、なんとかしろ』とこちらに訴えている。
そういや浦衛門は前にもこんなことあったな。あのときは矢盾が相手だったか。やはり同じヤの字がつくご職業でも役妖怪とは相性が悪いのかもしれない。近親憎悪?
思わず口を挟みそうになったとき、ひとりでに右手が動いてスコーンスコーンとふたりの頭に傘が結構な勢いで落とされた。
「小物同士が町中で半端な殺気を出すなや。すごくみっともないで」
やるならグチャグチャ言っとらんと手を出さんかい。
それは傘の姿で屏風覗きの体を操った、この中で一番偉いろくろちゃんの言葉だった。止める気が微塵もねえ。
こうして寒空を見上げる冬の河原の一角で、急遽開催されることになった『ドキッ、とばりと浦衛門の真剣勝負』。
司会は『毎日に平穏を』の屏風覗きと、審判に『とりあえず殴ってから考えろ』でお馴染みのろくろちゃん。コメンテーターとして『かぼちゃは味噌汁の具』のお栄さんをお迎えしております。マスコットの松ちゃんもよろしく。
皆様、本日は最後までどうかよろしく。
「おう。よろしゅうたのんますって、なんでやねん」
頭を傘で殴った。表現違いではない。ろくろちゃんによって体が操られるせいで、自分で自分の頭に突っ込んでしまうのだ。
ビニール傘など目ではない重さを誇る番傘、それも鉄の芯が入った一撃は重たい。軽く置かれる程度に叩かれても首までズシンとくる。パイルドライバーでも食らった気分だ。
いや、さすがにあんな殺人技はかけられたことはないけれど。
屏風覗きがこれまでの生涯で食らったうち一番危ないと感じた技は、素人の力任せによるブレーンバスターがマックスである。
あれは真剣に危ない。ただ頭や首より高角度から叩きつけられた足が一番痛かった記憶。ブレーンバスターを足で踏ん張って返す技なんて、鍛えてないと絶対に無理だ。あと背中というか肺が衝撃浸透で痛かったです。
その辺から拾ってきた板切れを机にしてそれっぽく司会者席を作ってみたのだけど、ろくろちゃんにはこんな粗末な席はお気に召さないようだ。
「いやいやいや、そうじゃなくて。おふざけが過ぎる言う話や」
ふざけてないとやってられないのだからしょうがない。間違っても試合じゃなく死合のほうに傾かないよう、見ている側が積極的にふざけ散らさなければ。
それにすでにおふざけの効果は出ている。さっきまでピリピリしていた選手ふたりとも、屏風覗きを見て『なんだこいつ』という顔で白けているのだから。できればそのまま勝負なしにしてほしいところ。
「馬鹿を言うな。売られた喧嘩は買わねばならん」
「売ったつもりはねえんだが、白黒つけさせてくれるなら願ったりだ」
とばり殿の言い分も分かるのだが――――まずは浦衛門の思惑通りといったところ。
国の守りである守衛との対決など白の城下ではとても出来ない。
そもそも浦衛門が変に挑発なんてしようものなら、近くにいる山ン本の若い衆が必死に止めに来るだろう。
後は時間稼ぎさえ出来れば鬼胡桃や組長補佐の白樺さん、あるいは元組長にして浦衛門の祖父である辰氏が飛んでくるのだから。
だが、ここ黄の国に彼らはいない。
この場で戦いを止められる可能性があるのはまず強さと権力だ。となれば座長の設樂氏、後は先輩役者のお栄さんくらいである。
「ひとり抜けてへんか? なあ?」
ベシベシとリズム良く叩かないで頂きたい。そもそもあなたが止めれば一番丸く収まったというのに。むしろGOサインを出したのはどういう考えからなのか、こっちが聞きたいくらいだ。
「わだかまり残してヘラヘラしとるよりええやろが。うちはそういうの一番嫌いや」
だからって武器・術どっちもありで勝負すればいいってのは問題しかない。いくら寸止めとはいえ、戦えば怪我どころか死ぬ可能性だってある。
「禁じ手ばかりやと戦っても勝ち負けの納得がいかんやろ。特に浦衛門のほうはのぉ」
スポーツならルールの規格統一がある。だが格闘技に代表されるような『勝ちに辿り着く』のに無数の手段がある業界では、禁じ手の設定が難しい。
組技主体の格闘技が組み付き禁止では、どうしたって実力を出せるとは言い難いのだから。
そしてこれが武器や飛び道具まで使う同士となったらもうカオスだ。公平に戦うためのルールなどまず作れない。いっそ有利不利を飲み込む事こそ実戦。とでも思って戦うしかないだろう。
――――ということで殺しだけは無し。審判の判定に文句なし。これを守って戦うことを最低限として勝負を認めます。
なおふたりが大怪我を負った場合、言い出しっぺのろくろちゃんが責任を持って御前に治療をお願いしてください。お叱りも受けてください。
「待った、そこは兄やんの出番――――」
それではみなさんお待ちかね。妖怪ファイト、レディゴォーゥ!
<実績解除 プロレス司会者 1000ポイント>




