庶民の人生とはお国の問題の隙間程度の話なのか?
短期間にひどい誤字脱字の連続。いつもご指摘ありがとうございます。
最近は読んでくれている方を編集扱いしているようで心苦しくなっています。こんな状態で二本も投稿するのは勇み足でした…でも、削除するのも無責任かなと悩んでいます。
投稿前に気を付ければいいだけの話なんですがね、これまでを鑑みるに無理っぽいです。
聞いておくれよ松ちゃん、なんか偉い方々に意見言ったら通っちゃったよ。半分ヤケクソで捻り出した案だったのに。これって失敗したら屏風覗きの責任問題になるのでしょうか。反対してくださいよお偉方。
おもしろい、じゃないでしょ牛坊主様。
ではそのように、じゃないでしょう立花様。
戦よりいいよねえ、じゃないよ彌彦様。おまえはなんか言え側近の黒鬼。
生ぬるいのう、とまで言うなら反対してろくろちゃん。
交渉の一手に加えるくらいなら賛成です、とか濁さないでみるく様。
楽しくなってきたねえ、とかおもしろがらないで手長様。
虫拳で天国地獄大地獄遊びをしていた足長様だけが癒しとか、どんな空間だチクショウ。
ただし足長様。指定した物や人の名前でセーフ、アウトが決まるこの遊びで指を増やして天国にして、くすぐり地獄と大地獄を回避するのは反則です。
それはそれとして松は何も答えてくれない。柵の向こうから顔を出して屏風覗きの頭にブフー、ブフー、と鼻息を吹きかけてくるだけだ。ちょっとフルーツ臭い鼻水出てないかい松ちゃん?
あれから妖怪会議を放逐された偽妖怪は頭が色々煮詰まって、ストレス軽減に良いらしいホースセラピーを実践するため松のいる厩舎に来ている。
お年玉目当ての子供のように現金な松は、屏風覗きが持っている酒保さんのところで買ってきた桃を対価に話を黙って聞いてくれている。体感3分くらいで次を寄こせと催促される仕様は観光名所の望遠鏡や、場末の旅館に転がっている小汚いマッサージ機のようだ。
持ってきた白桃だけでは9分しか相手をしてくれない。一応馬の世話をしているガチケモのおサルに3個食べさせても平気か聞いてOKを貰っている。動物の食事制限や食用に向く食べ物は素人が判断してはいけない分野です。かわいいからと無闇に与えてはいけません。
ただ飼育している馬は飼葉偏重で食わせているような食生活になりがちで、栄養素不足で蹄割れを起こしたりするので多様な食材を食べさせることが重要だ。舗装されていない土の道ならまだしも、白猫城近辺の石畳で固められた地面を走らせるには蹄鉄無しの松ちゃんは不安がある。
海外なら蹄鉄の出番なのだが松はそもそも付喪神だし、蹄鉄はハッキリ嫌がるらしく装着は無理そうだと言われている。
元より古来から日本の馬は、布や竹などの素材で作ったかんじきみたいな道具を履かせて簡易的な補強はしても蹄鉄はあまりしなかったんだそうな。
そうして最後のおみやげ効果が終わったようで、松はこちらにバルンッと一息吹きかけるとサービスタイム終了といった感じにそっぽを向いてしまった。うちの馬は主人への塩対応が板についてきていて悲しい。次はりんごでも持ってこよう。
傷心のままに厩舎に背を向けると首が引っ張られる。松に髪の毛を甘噛みされてしまった。動物に背を向けてはいけないの理論は、まさか草食動物にも該当するのだろうか?
微妙に残っている桃の果汁と馬のよだれでケモフローラルな香りをさせつつも、とりあえず気持ちは上向いた気がした。ありがとう松ちゃん。
忙しいときはクソ忙しく、暇なときは眠気を感じるほど暇になるのは大抵のお仕事あるある。暇なときにこそ過剰な仕事時期に来る負担を分割して、全体で適度な塩梅になってほしい思うのは誰でも思うあるあるだろう。
そして屏風覗きはこの暇な期間に突入したらしい。下界にはまだ行けないし、城下で無駄に出したキューブは撤去済み。とはいえ昨日今日でまた友人の下に顔を出しに行くのも恥ずかしい。
守衛の仕事中に迷惑だろうし、いい年してどんなさびしんぼだと思われてしまう。屏風覗きは守衛の子しかかまってくれる子がいないとか噂されたら恥ずかしくて悶えそう。
現代人はこういうときこそスマホっぽいものいじりだろう。世の人よ暇潰しと言うなかれ、これが屏風覗きの命綱で商売道具なのだ。
早速確認してみた項目のうち、つらつらと並んだ例の翻訳のおかしい実績欄に奇妙な実績が解除されていることに気が付いた。
<実績解除 名つけは『命』付け -5000ポイント>
マイナス? 疲れた頭で暗算は面倒なので土に枝を使って計算すると、翻訳違いじゃなく本当に5000ポイント引かれていると分かった。
ポイントが減る実績もあるのか。これはちょっと予想外。今後はいきなりデカいマイナスを食らう可能性を考えないとマズいかもしれない。
そしてもし、ポイントが足りなかったらどうなっていたのだろう。
<実績解除 円形脱毛SHOW!! 2000ポイント>
深刻な気分になったところでこの仕打ち。煽られている、これ絶対実績さんに煽られてるぞ。好きでハゲたわけじゃないのに『SHOW!!』なんて楽しげに表示しやがってっ!!
幸いリリ様からたぶん毛根は無事っぽいのでおそらく生えるでしょうとは言われている。明日に希望を託す優しい言葉が三つほど含まれいるが、精一杯生きる者の未来は光り輝いているものだ。
言ってて不穏になってきたからやめよう。他の髪で隠れる場所だし最悪でもハゲ全開にはならないのだし。頼むぞホント。
プラスマイナス合計した残ポイントは4902ポイント。ここしばらく実績頼みで踏破ポイント無し、さらに赤連中と南の騒動の後始末で使いまくっていたことを考えるとよく溜まったほうだろう。むしろ5000を下回っている時にマイナス実績がこなくてよかった。
ざっと考えて自動防御に二日分と、キューブが90発といった計算か。多いのやら少ないのやら。
こうして考えると幽世での生活は本当にチート頼みだ。ポイントもそうだがスマホっぽいものを取り上げられたら命が一日持たないかもしれない。これまで以上に管理は厳重にしたほうがいだろう。
赤ノ国との戦争は個人にはどうにもならないのでしょうがないにしても、屏風覗き個人の立ち回り下手のせいで南に敵が出来てしまったのは失敗としか言いようがないからな。
すぐ感情的になって何かあるたびに撃発いていたんじゃ、ポイントがいくらあっても足りやしない。
夜鳥ちゃんはチート込みで屏風を強いと評価しているようだが、あいにくスマホっぽいものを取り上げられたらコメツキバッタのように土下座でもするしかないヘタレが本性である。
勢いで海千山千連中と話の場を設けることになってしまったけれど、南の文字通りの魑魅魍魎を相手にどこまで突っ張れるやら。今からお腹痛い気分だ、ストレスは髪に良くないのに。
「お帰りなさいませ」
よだれで臭くなった頭を洗って離れに戻ると襷掛けして働く秋雨氏が出迎えてくれた。幽世のケモは自制しているのかあまり尻尾を動かさない妖怪が多い印象のなか、彼女は積極的に動かすタイプらしい。人サイズなこともあって尻尾がブンブンするたびほこりが立っている。
なんというか、間違いなく良い子なんだけど微妙に残念なんだよなぁ。
今日は屏風覗き不在のうちにスペース白米星人も合体不全の式神も来ていないようでプルプル犬も無駄に振動しなくてすんでいるようだ。あんまり頻繁に震えているとヒビの入った胸骨もくっ付かないというもの、こういうときこそ休んでいてほしいのだが。
「大丈夫です。頂いた痛み止めのお陰でずいぶん楽になりました」
酒保の蜘蛛さん、秋雨氏曰く恩婆が調達してきた薬は確かなようだ。阿片とかじゃないよね? 劇的に効くというと麻薬関連がチラついてしまう。
実際、昔は効能は騒がれても副作用は隠されて出回っていた薬というのが少なくない。鎮痛効果や疲労回復に効くとして日本の麻薬の代名詞である覚せい剤が合法で売られていた時代もあったくらいだ。疲労がポンと飛ぶからヒ〇ポンとか言ってな。
当時有名な映画俳優が『麻薬打つのが趣味です』と記者の前で公言しているくらいである。
無知に付け込むのは悪党であり、それは個人に留まらない。子供の駄菓子に覚せい剤成分を混ぜ込んだ物や、薬そのものが駄菓子屋で子供の小遣い程度の値段で売られていた狂気の時代は確かにあったのだ。
過去の汚点を配慮という石を抱かせて時間の海に沈めたい勢力もいるだろうが、こういった事実も事実として残すべきだろうと思う。
そのお陰で国が平気と言っても絶対ではない、危ないことがあったと現代に伝わるのだから。
無知は付け込まれ悪人の食い物にされる。その悪党の初手を防げるだけでも被害はぐっと減るというもの。知ってて自分からやるようなアホは知らん。ただし、誰の迷惑にもならないよう山奥の打ち捨てられた廃村にでも行ってからやってほしい。そのまま村の因習で崇められている定番の怨霊にでも憑り殺されてしまえ。どうせ薬で現実か幻覚か区別がつかないだろう。
例によってあらぬ方向に気が散るのを抑え、しばらくお茶を片手に秋雨氏から西の町について教えてもらうことにする。
話題自体は何でもよかった。昨日酒保さんの店に寄った折り、腹に老婆の顔が張り付いたような模様の大蜘蛛から、少し秋雨氏の話し相手をしてほしいと頼まれていたからだ。
目の前で楽しそうに西で見た大道芸の話をする秋雨氏は、ちょっと前まで見回り組という治安部隊のような組織に属していた。それが国を裏切った妹ふたりの暴挙によって血縁として立場を追われ、こうして屏風覗きなんかの身の回りの世話をするハメになってしまっている。
今は籠の鳥。いや、檻に入れられた犬状態か。この子は犬の経立であり、犬という種族が狭い空間に閉じ込められるという事がどれだけ苦痛か、人の身である屏風覗きには本当の意味では理解できない。
今の彼女の世界はこの離れと、離れと城の間、そして理解者である蜘蛛の老婆の店だけ。
引きこもりを拗らせた人なら自宅とコンビニを往復する人生でも平気だろうが、彼女は社交的なスキルが必要な西の町を担当していたほどの明るい人物だ。環境の変化が劇的であったのは確実で、生活リズムはもちろん妖怪生設計もメチャクチャになってしまったことは間違いない。
せめて何か手柄のひとつも立てる機会があれば違うのだろうか。ボディランゲージで懸命に大道芸の凄さを伝えようとする少女に、屏風覗きがしてやれることはなんだろう。
結局、今日も話し相手くらいが精一杯。