10話 「異形の悪物」
「Zzz」
「なんじゃ、寝ただけか...まったく人騒がせなやつじゃな」
しっかしこんな急に眠るのか…
琴に布団を引いてもらってそこに移動させるか…
~数日後~
「2人ともー!ご飯できたぞー!」
今日の朝ご飯は茶漬けだ。安くてうまい。最高だ。
にしても3日ほど寝ていたのに全然体に支障がない…
「お米に…水?緑色だけど…」
「ん?あぁそれはお茶っていう液体っていうか、水?だぞ」
うーん、琴はお茶を知らないのか…?それとも忘れているのか…
「隣ー!ワシのはまだか!?」
「あぁ、ちょっと待ってて、冷ますから」
「頼んだぞ!」
クロネの分はしっかり冷ましてやらないとやけどしてしまう。
「はい、クロネ。茶漬けだよ」
「おぉ!これが茶漬けか!うまそうだなぁ!」
「それじゃあ俺も食べるか」
正直俺は食に興味がある。特に昔の食文化は面白い。
元々、この場所には"日本人"という民族がいたらしい。
だが今、俺たちは"地球"という世界にいる、"地球人"というくくりになっている。
そこからさまざまな地域に分けて、呼び方を変えている。日本人というくくりはない。
「ごちそうさま、食べ終わったら食器はキッチンに、俺は部屋にいるよ」
俺たちはそこのジャニアルという人間に分けられている。
だが最近はその分け方が曖昧化してきている気がする。きっと悪物の出現による避難が原因だろう。
基本的には避難は出ないが、稀に出現する異形の悪物がでたときは話が別だ。
「異形の悪物が出るのは稀だが、普通の人や物に対する被害はとても大きい…」
故に避難が必要だ。
そしてその避難が積み重なっていって、さまざまな人間が混ざってしまう。
「しっかしこの世界、うまくできてんのかできたないのかわからないな」
そろそろ琴たちも食べ終わったかな。
「隣!緊急だ!早くリビングに来い!」
突然頭に送られたクロネの言葉と同時に琴が勢いよくドアを開けた。
息が切れている。
「早く…来てっ…」
何故か慌ただしくしている。いったい何があったんだ。
「どうした!クロネ…」
そう言おうとしたとき、だんだんと声が小さくなるのと比例して、目も見開いていった。
「カ、カレンさん…?なんで…」
特にカレンさんに何かしたわけでもないが、特に嫌な予感がした。
「隣、座れ」
俺は少し戸惑いながらリビングにある椅子に座った。カレンさんは立ったままだ。
「時間がない、簡潔に言う。悪物が出た。しかも異形だ。」
異形…さっき考えていたものだ。異形の悪物にもよるが、一般人に見えるものや、形状が異なる場合があるらしい。
「しかもだ、悪物の目的がわからん。ほとんどは人間を殺すためだったりするが、今回は違う」
しかも今回の悪物はかなり骨が折れるようだ…休ませてくれ…
「そ、それでなんで俺たちの家に来たんですか…?」
「実は悪物がこっちに向かってきてるんだ。」
「そ、それは本当なのか!?」
クロネが声を上げた。無理もないだろう。
「ここら一帯でまともに戦えるのはクロネくらいだ。緊急で俺も参加する。」
「お、俺たちにできることはありませんか!?」
正直自分でもないだろうとは思ってる。だけどただ何もしないのも嫌だ。
「隣、ありがとな。それじゃあ少し難しい血を出してくれんか?」
クロネがそう言った。俺は一瞬戸惑ったが俺は肯いてキッチンのナイフで指から血を出そうとした。
「わ、私は!?私は遠距離から支援できる!」
少し必死に琴もそう言葉を発した。
「それじゃあそうしてもらおうか。」
そう言った瞬間、カレンさんの次元の能力で出現させた武器庫からスナイパーライフルのようなものを出した。
「コード780617、リフィルを一時的に使用権を移転する。そしてその使用権を琴に移転する。」
《音声認識…確認完了。コード認識…完了。使用権が一時的に移転されます。》
部屋に機械的とも生物的とも言えない声が響く。そしてその銃は形状を変えながら琴の腕に移った。
「その銃には名前がある。リフィルだ。」
「リフィル…これは…?」
「詳しい説明はあとだ。それで俺たちを援護してくれ。」
琴が小さく頷いた。
「っ。クロネ…これくらいの血でいい?」
「あぁ。充分だ。失礼するぞ」
「え?う、う…」
俺が「うん」と言おうとしたときだ。クロネの舌が俺の指に触れた。もちろん姿は猫だ。
「はっ!?えっちょっ!」
(わかるぞ隣…俺もやられたぞ…これは経験だ…こらえるんだ隣…)
なんかカレンさんが腕を組んで頷いているけどマジでわからない。状況もだし。
「すまんな隣。だが助かった。んじゃ行くか、2人とも」
「う、うん…」
琴はぽかーんと開いた口の意識を取り戻してそう答えた。
クロネが歩き出すと同時に頭の上に人の心臓ができた。
「えぇ!?」
そこから急に俺が出てきた。多分俺だ。俺って言うか俺の姿だ。
「んじゃ行ってくるな隣。頑張れよ。」
そう言いながらクロネ俺の姿でウインクをした。なんだアイツ。
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さてと…これが隣の体か。ワシの人間の姿よりも軽いな。
それよりも問題なのは隣だ。何があったらこんな禍々しい記憶が出てくる?
まぁそれはそれとして、今は目の前の敵を倒さないとな。
『Hver ertu?』
『Hvar er ég?』
っ。なんじゃこの声は。何を言ってるかもわからん。隣はこれを聞いてたのか?
「カレン、作戦はどうする。」
「今回の相手は影を使って移動や攻撃をしてくると見た。俺が次元で奪い取る。」
「それでワシらも別次元に行くと」
「あぁ。あとはアドリブ、臨機応変で行くぞ。いいか琴?」
「は、はい!」
琴に関しては少し心配じゃが…やるしかないだろう。
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「次元、転移。」
「よし、これでここら一帯は別次元に移動させた。多分悪物も入ってるだろう。」
「ありがとな、カレン。」
よし、うまくいったな。だが問題はこれからだ。
「んじゃ俺たちも行くか。」
「あぁ」
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…ここがカレンさんの仮想空間…なんだかぐにゃぐにゃしてる…
「おっしゃかかってこい!どっから来る!?」
"ドンッ"
「っ!カレンさん!!」
「あ?どうし…」
そのときだ。
「次元!黒壁!!」
間一髪でカレンさんが次元の能力で防いだ。黒壁の先にいるのは"影"だ。
「な、なんだよこいつッ!?」
「この悪物…まさか影を使ってくるんか…?」
となるとかなり厄介じゃ…どう戦っていくか…
『Ég er ekki þú Ég hata þig.』
なんじゃ!?またあの声か!?しかも聞いたあと頭が痛くなる…
……仕方ない…
「カレン、血を分けろ。」
「…かまわないが、俺の血だと俺にはなれないぞ…?」
「…早く血をよこすんじゃ」
カレンの血は血ではない。だからカレンにはなれない。そんなことは知っている。
「…おらよ、早く飲め。いつ敵が出てくるかわからないんだ。」
カレンの血はまずい、正直言って。だが、これだとワシのやりたいことが存分にできる。
「ふぅ…んじゃやるか。」
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また…また姿が変わった…初めて見る人間だ…
「琴!ぼさっとするな!お前は後ろに下がって出てきたところをこの弾で撃て!」
「カレンはワシと一緒にたたくぞ!」
「おう!」
す、すごい…慣れた動き…た、確か相手は影を使って移動するんだよね…?
今太陽は後ろにある…できる限り太陽を後ろに…そうすればこっちにきても対処できる…!
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よし、琴は大丈夫そうだな。んじゃあとは…
「カレン、いいな?もしかしたらワシは…」
「あーあーんなもん分かってるよ、とにかく今できることをやるだけだ。しかもちょうど出てきた。」
「琴が撃った瞬間に始めるんだぞ?分かっているよな?」
「あぁ、もちろんじゃ」
バンッ!
琴が撃った。琴が今撃った弾はいわゆる閃光弾のようなものだ。
悪物の体が影が媒体となっているなら一番効果があるのはこれだろうと読んだ。
まぁこういう類の悪物は正直例がないから手あたり次第って感じだ。
「さぁ!やるぞ!!」
そろそろ小説にも手を付けないとなと思い、書きました。長い。
以上。