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4話 スケルトン討伐に水着で挑んでいる件(女僧侶視点)


ーー

 翌日。


 3人は、とある湿地に向けて歩いていた。本日の任務は、スケルトン退治だ。スケルトン、いわゆる動く骸骨。

「よーし、今日は頑張るわよ」

 女僧侶はそう言って張り切っている。


 今回は、女僧侶の発案により、スケルトン退治に決まったのだった。

 実は昨日、上機嫌だったところにあまりに可愛い洋服があったので、つい買い過ぎてしまったのだ。最近は稼ぎも良かったので、ちょっと良い宿舎へ引っ越したり、頻繁にケーキを買ったり、生活レベルを上げていたのだ。そして昨日の買い物……。

 女僧侶の財布はかなり寂しくなっていた。ちょっと気合を入れて稼ぎたかったのだ。実は女僧侶は、スケルトンの相手は少し自信があった。スケルトンは回復魔法をかけると、脆く崩れ去っていくのだ。仲間がいざとなった際のための最低限の魔力だけを残しつつ、それ以外は全て敵を溶かす為に使う予定だった。


 スケルトンはゴブリンよりは強いが、個体同士で協力して攻撃してくることはほとんどない為、そこまで難易度が高いわけじゃないから、と女剣士が遊び人に説明し、安心させてあげていた。

 

 また、スケルトンは何体倒してもお金は貰えない。ただし、何体かに一体、一定の割合で体のどこかに宝石を身に付けたスケルトンがいて、その宝石がそこそこ高く売れるのだ。その割合がその時々によって違い、20体倒しても1個も手に入らない時もあれば、10体倒せば1、2個手に入る時もあり、運次第である。お金を稼ぎたい時に人気の、ギャンブル性の高い任務だ。そんなことも、女剣士は遊び人に丁寧に説明してあげている。


「この辺り……かな」

 しばらく歩いたのち、女剣士は地図を見ながら目の前の湿地帯を見る。

「かなり広い……ですね。ここにスケルトンが……」

 遊び人がそう言って辺りを見渡す。


 女僧侶も、この湿地へは何度もきているが、スケルトンの発生地帯はかなり広く、スケルトンを探すのもそこそこ大変なのだ。スケルトンが見つかるかどうかも、その時次第だったりする。


「よし、たくさん稼げるように、祈っておこうかしら」

 女僧侶はそう言って、手を合わせた。僧侶の自分がこんなことに祈っていいのだろうか、という考えは置いておくことにする。

「じゃ、じゃあ私も」

 遊び人もそう言うと、手を合わせる。


 すると、いきなり目の前にスケルトンが2体現れた。

 背の高さは小柄な女僧侶と同じくらい。それぞれ剣を持っているが、かなり錆び付いて頼りなりなさろうな剣だ。盾も持っていない。

「ついてるね、早速行こうか」

 女剣士がそう言うと、「よおしっ」と、女僧侶が珍しく女剣士より前に出て先陣を切った。女剣士も剣を鞘から抜き、女僧侶の後を追う。

「わ、私も行かないと」遊び人も、慌てて服を脱ぎ出した。



「えいっ」女僧侶はスタッフでスケルトンAの剣を打つと、スケルトンの手から剣が落ちる。握力があまりないスケルトンにはこの手がかなり有効なのを女僧侶は知っていた。「ウウゥ」と唸りながら、スケルトンは剣を拾おうともせず、素手のまま女僧侶に向かっていく。「や、とっ」と女僧侶はスケルトンの素手による攻撃をスタッフで軽く捌きながら、呪文の詠唱を始める。


 スケルトンBはスケルトンAを助けようとする素振りすらみせない。「せえいっ」女剣士はスケルトンBに斬りかかる。1対1が2組出来た形になった。女剣士がスケルトンAに切りかからなかったのは、女僧侶への信頼の証だろうか。


「せえっ」女僧侶が、スケルトンAの攻撃をかわしながら回復呪文を放つ。するとスケルトンAは動きが止まり、体に亀裂が入る。水着姿の遊び人はすかさずスケルトンAの後ろに回り込み、まだ原型を保っているスケルトンの目を両手でふさいで「だーれだ」と言ってはにかんだ。その声とともに、スケルトンAの体はガラガラと崩れ去る。遊び人は服の下に水着を着ていたようだ。


「せえやっ」女剣士の袈裟斬りが炸裂。スケルトンBの体が2つに両断されると、「コンナコトデ、ワタシハシナナイ」と、遊び人が声色を変え、喋り出す。「ナンツッテ」と言いながら遊び人が独特のポーズを披露し、戦闘が終了する。


 女僧侶と女剣士は、早速崩れたスケルトンの体を探り始める。

「……うそ、あった!」

 女僧侶が驚いて言った。崩れた残骸の中から、宝石を発見したのだ。

「こっちもだ、あったぞ」

 女剣士も声を上げる。

「ワタシハ、フクヲキルトシヨウ」

 遊び人は、その変なテンションのまま服を着出した。


「……こんなことってある? 信じられない。来てすぐに戦ったスケルトン2体の両方から宝石が見つかるなんて」女僧侶が言った。

 女僧侶は今までスケルトン退治を何度もこなしているが、1日を通して1つ宝石が見つかればいい方だった。2つ見つかれば、かなり良い成果と言えた。今までの最高記録でも、1日4個、しかもその時は他のパーティーと協力して、合計五十数体ものスケルトンを倒してようやく4個の宝石が見つかったのだ。今日は、2体倒しただけで、いきなり2個の宝石が得られるなんて。


「みんなの日ごろの行いが良いんじゃないか? ははっ」女剣士はそう言って笑った。

「幸先いいわね、今日はこの調子でどんどん行きましょう」

 女僧侶は上機嫌で新しいスケルトンを探し始めた。


 その後も、次々とスケルトンが見つかり、1体、また1体と順調に倒していった。最初に2個の宝石が見つかってから、その後4体倒しても何も出てこなかったが、5体目を倒したところで、また1つ宝石が見つかった。その後3体倒したところで、また1つ宝石が見つかった。合計10体から、4個の宝石が見つかったことになる。


 そして、今度はまた新しくスケルトン2体と抗戦中である。


 スケルトンAはすでに武器を失っていて、素手で女僧侶を攻撃する。女僧侶はスタッフでそれを捌きながら呪文を唱え始める。これはスケルトン相手の女僧侶の必勝パターンだ。決まるのは時間の問題だろう。


 一方、スケルトンBは女剣士に斬りかかる。「くっ」女剣士は脇腹を浅く斬られてしまう。しかし、それと同時に、女剣士の剣は、スケルトンBの腹を突き刺していた。スケルトンBが倒れるとともに、「うっ……」と女剣士がうずくまる。斬られた傷が痛むようだ。「ウウウ」と、そんな女剣士に、遊び人がスケルトンのモノマネをして襲い掛かろうとする。許される冗談と許されない冗談の区別がついていないようだ。

 女僧侶が呪文を唱え、スケルトンAが崩れ去ると戦闘は終了する。


「待って、すぐに治すから」そう言って、女僧侶は女剣士に向けて回復魔法を唱え始める。その呪文の詠唱に合わせて、遊び人が服を脱ぎながら踊り出す。遊び人がまた水着姿になったところで女剣士の傷が回復する。

「ふう、助かった、ありがとう女僧侶」女剣士がそう言うと、2人で崩れたスケルトンを調べ始める。

「……またあった、今日は本当にすごいわね」

 女僧侶は崩れたスケルトンの体から宝石を見つけだし、喜んでいる。

「これで5個目か。まさかこんなことがあるとはな」

 女剣士は驚いた様子だが、やはり嬉しそうだ。


 このツキを逃すのは勿体無い。今日は、行けるところまで行きたい。そう思うのは山々なんだけど……。


「ねえ女僧侶。回復魔法、まだ使える?」女剣士は言った。


 やはり、女剣士は気付いてくれていた。今日は攻撃にも回復魔法を使っているので、もう魔法力が限界なのだ。ただ、あまりにツキがあったので、中断したくなくてつい言い出せなかったのだが……。


 女僧侶は、少し自分の未熟さを悔やんだ。冒険者として、僧侶として、そして人間として。僧侶は、パーティーの安全を第一に考えないといけないのに、よりお金を稼ぐことを優先するなんて。それと同時に、女剣士がそうやって声をかけてくれることが嬉しくもあった。でも、いつも甘えていたらいけない。

「ううん、今のでもう使えなくなっちゃった。もっと早く言えなくてごめんなさい」女僧侶は素直に白状した。


「そっか。じゃあ今日はこのくらいで帰ろうか。ははっ、今日はすごい稼げたね。帰ったらお祝いでもしようか」

 女剣士は明るくそう言って、地図を見始める。


 女僧侶は反省しながらも、なんだかんだ宝石が5個も手に入ったのだ、という喜びが大きく、つい顔がにやけてしまう。


 遊び人も服を着て、帰る準備をし出したその時だ。

「ねえ、何あれ」

 僧侶が指さした先に、ものすごく大きいスケルトンが1体。少し距離があり、向こうはこちらにはまだ気付いていないようだ。

 普通のスケルトンの3倍はあるだろうか。そして、普通のスケルトンについている宝石は小さい小石ほどの大きさで、よく探さないと分からないほどなのに、あのスケルトンは遠目に見るだけでわかるようなとても大きな宝石のついた指輪をはめている。あんな大きな宝石初めて見た。

 その宝石を見て、女僧侶は思わずごくりと唾を飲み込む。


「……どうする、やる?」女僧侶はスタッフを握り、女剣士の方を見た。



「わたしなら、まだやれます。……緊張してきました、あんな強そうなモンスター、初めてです」

 遊び人は真剣な面持ちでそう言って、バッグからパンティを取り出すと、頭に被った。それが戦闘態勢なのだろうか。



 ……おかしいな、うちは女剣士に話しかけたはずなのに。

次話、3日以内に投稿します。

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