厨二登場回
「──さあ往くぞお前ら!!終焉の都、ラグナロクへ!」
「ラグナロクへ往くのだ!」
「おぉお、ゆくのだラグナロクにー」
三度、似たセリフが高らかに叫ばれる。
「終焉の狼煙をあげるのだぁっ!」
「……うんちょっとくどくないであろうか……」「あげるのだー」
現代日本の教室で、まだST中の他クラスに乱入した男女三人。この三名が在籍するクラスは早めに終わったのだ。チャイムまで待てという制止の声を振り切って来た。特徴のない男子に変な口調の青年とフシギ系の合法ロリが続く。
「我、ハルトは終焉の扉を開く者!」
図書室の鍵を掲げながら言った。
「ひらけゴマー」ロリの口上に男女はひそひそ言葉を交わす。ちょ、それ違う……グダグダであるな……ちがうー……カンペがあるようだ。
「……まあいいとして、んっん゛……終焉の風が吹いている……いい頃合い……いや、案配だ。」
「ちゃくちゃくとしゅーえんにちかづいているー」
「終焉の扉への水先案内人よ。我らと共に来るがよい!」
「おい厨二やめろ……!終焉ってどんだけ言いたいんだよ一辺倒だな……!」バリエーションに乏しい!と、主人公はメンタルに深刻なダメージを受けながらもハルトを足蹴した。
『ゲシッ』と。それは容赦なく、『ゲシッ』と。
「……ぅ、……フ、フフッ……そんな軟弱な蹴りはきかにゅ……」
噛んだ。
「……んん゛っ。……ふふんっ。そんな構えで脅そうとも、我らは臆さぬっ!」涙目になりながら主人公と距離をとった。
主人公は、耳を塞ぎ瞑目した状態で怒鳴っている。頬はうっすら赤い。
「おぉお。貌まっかー。こーいうのを〝きょーかんせいしゅーち〟ってゆーんだっけ~?」
「〝共感性羞恥〟であるぞ。残念ながら、この場合では当て嵌まらないのである。何事もケースバイケースなのである。というか覚えたばかりの言葉を使いたいだけであろう」
「うゆー」
「……きくにも見るにも耐えんアホウどもめ……っ!わざわざクラスを跨いで来るな……っ!むしろ帰れ!……帰らんならせめてチャイム待てっ……」罵倒にキレがない。声もかすれている。最後ちょっと負けている。その手の黒歴史はないはずなのだが……。
「まあまあ、いいだろべつに。」「いいだろー」と無個性男子とニセロリは流すが「……風邪気味ではないであろうか?大丈夫か?」と気遣うように青年は眉尻を下げる。
〝エントロピーの法則〟が適用されているようだ。普段が比較的変人だから、反動により普通の反応が倍々でまともに思える。いわゆるギャップ。
「あ゛ー……?」
「ほら、頭回らないようであるし、感情の振れ幅が大きいし、喉の調子がよくないようである。我輩らが行動をとる前より顔が赤かったであるし、いつもはこのていどで取り乱さないであろう?」
「……いや、花粉症か、もしくは猫アレルギーだ。暖冬だったから今の季節はもう汗ばむくらいだし、夏バテとか、可能性あるか……」制服の夏服への移行期間はまだ先で、学ランの上着が暑苦しい。
「猫アレルギーとは?」
「アレルギーとはー……異物への過剰な免疫反応によって起こる障害のことだ。不具合だな」
「いやそうでなく、猫を近くにおいたのか?」
「……その電波ロリのせいだ。」
「さっきネコとたわむれた」「だから帰って欲しい。」
撃てば響くようなやりとりだ。
「なるほど。」と青年は大きくウンウンと首肯する。
「……あと最近猫が家に通うようになってだな、家にはあげてないだが妹が猫可愛がりする。猫を抱いた後そのまま家に入ってくるし玄関先に毛が舞ってるし…………今度炭まく。」早口でまくし立てた。目が据わっている。
「……仕方がない!ならば今日のところはひいてやろう!往くぞ者共!」「おぉお」「大事をとるがいいであろう」「ハッハー!顧問には言っとく」と言い残して、変人厨二病トリオは去っていった。
彼らと主人公は同じ部活に所属している。読書部だ。




